見出し画像

生成AI元年にエンジニアとして生きる幸せ



データ分析


昨年2月にデータサイエンティストとして内定をいただき、5月に入社をしたのですが、社内事情もあり最初のプロジェクトにアサインされたのは8月になってからでした。研修が終わってから2ヶ月以上放置と、いきなり面食らったのですが、せっかくの時間なので、本を読んだり、資格の勉強をしたりしながら過ごしていたら、結果的にはそこそこ充実した日々となりました。

8月になってようやく分析っぽい仕事も回ってくるようになりましたが、これまでやっていた物理解析とはだいぶ異なりました。アカデミア当時はモンテカルロシミュレーションから始め、実験データを重ねて統計分析をやっていたわけですが、ビジネスでは、モンテカルロも何もそもそもまともにモデルできないようなケースが多いのが現実です。致し方ないところはあるものの、どうしても論点ドリブンになりがちで、そこにある真の物理現象を理解しようという営みとはズレていると感じました。ここだけの話、自分がビジネスの分析にあまり向いていないことがすぐにわかりました。「やれ」と言われればやりますが 🙂

生成AIってなんだ?

一方、社内では生成AIの話でかなり盛り上がっていました。生成AIを知り尽くしている人はまだ世界に誰もいないため、その可能性を想像するだけでも十分楽しめます。生成AIというとその賢さや業務での有用性が話題にのぼることが多いわけですが、私は生成AIの本質は

「テキスト、音声、画像、動画といった表現の自由化」

だと思うんです。これまでこれらのコンテンツは別のものとして扱われていました。そのため、例えば「動画から音声を拾ってそれをテキストに落とす」みたいな面倒な変換を複数のソフトウェア使ってやっていたわけです。しかし生成AIの登場でこれらは自由に変換できるようになりました。

元々「読む・書く・見る・聞く・話す」という人間の体の異なる器官による情報のインプット (読む、見る、聞く) とアウトプット(書く、話す)の手段だったはずですが、これら表現が完全に自由化されたというわけです!

批判を恐れずに言えば、これからの時代は耳が聞こえなくても目が見えればいいし、書けなくても話せればいいわけです。すごくないですか?なんだかワクワクしませんか?

加えてAIはもの凄い勢いで進化を続けています。一世代前のAIとは次元の違う優秀さで、我々の実現したいことを圧倒的な表現力で実現しちゃいます。事業だけでなく、研究や教育などあらゆる分野での新しい活用方法に対する我々の想像を激しく掻き立てます!

俺もやってみるか!

この分野では多くのスタートアップや大手IT事業社、コンサル各社が、しのぎを削って生成AIアプリの開発に取り組んでいます。そんな生成AIが世に浸透し始めた2023年、私にも生成AIアプリの開発に関わるチャンスが訪れました。やはり自ら開発に関わるのが一番学べます。この手のアプリ開発は未経験ではあったものの、ゼロから開発に携わることができたのは本当にラッキーでした。

生成AIアプリの開発ではLangChainというライブラリが広く使われています。LangChainはそれこそ日進月歩の勢いで毎日のようにバージョンがあがるため、1週間も離れると完全な浦島太郎状態になる怖さがありました。逆にいえば、私のような新参者でもキャッチアップしていけば最先端を走れるチャンスでした。毎朝、arXivやXなどで新しい論文や記事をチェックし、OpenAIやGoogleといったLLM開発の先進企業のサイトも確認する日々でした。

開発時は激しい競争による危機感と新しいことに挑戦するワクワクとを同時に感じることができます。クライアントからの厳しい要求と今の生成AIの技術でできることの限界との板挟みにあい、なかなかハードな日々です。しかしチームで議論を深めながらアプリをどんどん進化させていくことができるのは、とくかく楽しいの一言に尽きます!周りの熱量を感じながら最先端の開発に携われるというのは、スイスの国際研究所で新粒子が発見されたとき以来の興奮かもしれません。

仕事以外でもやっぱり生成AI

この一年は仕事以外でも暇さえあれば生成AIで色々楽しんでいました。音声ファイルから議事録を自動で作成するスクリプトを書いたり、AI同士が会話するアプリ作ったり、画像を取り込んでRAGを作ったり、独自のエージェントを開発したり、簡易な学習アプリ作ったりと、OpenAIが新しいAPIを公表するたびに色々とやりました。まだまだ遊び足りず、生活を便利にするためのアイデアは尽きません!

最後に

詳しくはまた次の記事で書きたいと思いますが、縁あって4月より再びアカデミアに戻ることになりました。短い期間ではありましたが、この一年データサイエンティストというよりはAIエンジニアとして働くことができて最高の一年になりました。この楽しい生活も終わりが近づいています。正直寂しいです。

アカデミアは意外に新しい企画や実験を考えたりする機会が多いのですが、要件定義、論点整理などが必要になってくることがあります。コンサル業務を通してコンサル的な思考方法やスライドの作り方などについても学ぶことができたのは大きな財産となりそうです。

またこの1年間、生成AIの使い方を真面目に考えることができたおかげで、これからは超スピードで研究を推進していけそうです。生成AIはソフトウェアだけでなくハードウェアの開発にも使えるためモノ作りも爆速で進めることができます。また既存の研究アイデアを整理し、新しい研究アイデアを着想するために活用したり、大量のマニュアルを全てRAGにして整理できたりもするんじゃないかと思います。

生成AIなしで10年かかることを生成AIを使って1年でできれば、単純には生涯でできる研究の量が10倍増えるわけです。さらに言えば、あと数年後にAIがもう少し賢くなり、それこそAGIに近いものが出てくるようになれば、AIに研究テーマを割り振り、学生やポスドクがいなくてもどんどん研究を遂行できるようになるのではないかとさえ思います。研究補佐のためのAIエージェントを大量にタダで生成し、効率的に研究を進められる環境を構築できれば、これまでは生きている間には不可能だと思われていたことだって再度日の目を浴びることになるかもしれません。

「生成AIのある今の時代、一番やるべきことは自分の好きな研究です。
みなさん、全力で世の中変えていきましょう!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

おまけ:会社について

正直にいえば入社前は上司ガチャなど、多少心配していた部分があったのは事実ですが、実際そんなことはないというのが今の正直な感想です。むしろ管理職以上の方には、協調性があり部下を気遣いながらプロジェクトをしっかり遂行できる優秀な方が多いと感じています。弊社の評価・昇進システムはきちんと機能しており、人材のクオリティが担保されているからだと思います。

某転職サイトの口コミなどで低い評価が散見されることがあるのですが、私が思うに、それは口コミを書いている方に問題があるのではと思わざるを得ません。当たり前ですが、プロジェクトマネージャーにとって、優秀な方を差別するような人は基本いません。上司としても優秀な部下を持ち、プロジェクトをしっかりと推進することができれば自分の評価も上がりますし、プラスにしかならないわけです。また人間関係やパワハラに関する報告システムもしっかりしているため、部下に不当なことを求めたり発言したりすれば、直ちに自分に跳ね返ってきます。勿論、私がこれまで関わってきた管理職以上の方の数は限られているため、上司ガチャがゼロだと断言はできませんが、口コミほど多いことはあり得ないなと思います。口コミは去る人からの声が主であり、どうしてもネガティブな方向にバイアスされてしまうのは致し方ないのかもしれませんね。

一方で管理職以上の方が激務だというのはその通りだと思います。スケジュールも30分単位でみっちり詰まっていることが多く、残業も多い印象です。もちろんその分給料には反映されているんだとは思いますが、自分がそうなりたいかと言われると、、、正直わかりません。。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?