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森林経済学サマースクール in スイス 体験記(その1)

以前の記事で紹介した、スイス・マイエンフェルトで6月下旬の1週間にわたって開催されたサマースクールに参加した体験記です。

主催はスイスの研究機関WSL。森林経済学を中心にその関連する分野を含めた範囲を専攻する大学院生を対象としたものでした。午前中は講義、午後は参加者の研究内容のプレゼンと討議という内容。世界各国から25名ほどが参加しました。

講義の様子

僕が参加を志した理由は2つありました。1つは専門分野の知識を深めること。ゲッティンゲンでの通常の講義は面白いのですが、森林学の性格上、修士課程では政治経済から造林学や森林賦存量の計測から遺伝学に至るまで幅広く基礎を学ぶことしかできません。僕自身は森林経済学に集中したいという気持ちをすでに持っていたので、それを深めるのにとてもよいプログラムであるこのサマースクールに応募しました。2つ目は人脈を深める点。この業界で食べていこうと思えば、やはり最後にものをいうのは人脈。研究のアドバイスをもらうことはもちろん、プロジェクトのポストを紹介してもらったりすることも、顔を知っている相手のほうがしやすいと思います。

チューリッヒから電車で1時間30分ぐらい離れた、スイス東部の小さな村、マイエンフェルトの研修施設が会場。ここはアルプスの少女ハイジの舞台として有名。海外からの観光客は日本からが一番多いとのことで、一部の看板に日本語の表記を見つけることができました。かつてはヨーロッパを訪れる東洋人といえば日本人と相場が決まっていたのですが、現在では中国、韓国からの観光客のほうがずっと多いのが実情。ドイツでは日本人の観光客と出会うことはあまりありませんでしたが(これは、僕がドイツの有名な観光地にはほとんど行っていない、ということも考慮しなくてはならないですが)、滞在中、日本人の団体旅行の方を何組も見かけました。ここは、ハイジにあまり興味がない方にとっても、スイスの農村地帯を見るにとてもよい場所だと思います。通貨高のせいもあり、物価がとても高いことが難点ですが、それでも東京の価格と比べればさほどの違いはありません。

のどかな山村

マイエンフェルトはスイスではワインの産地としても有名。日当たりのよい南斜面と石灰質の土壌がワイン用ブドウの栽培に向いているんだとか。ただ、規模が小さいので国外に出荷されることはほとんどないそうです。今回のサマースクールでは、夕食後にワインティスティングの会が設定されている日があり、徒歩20分ほどの地元のワイナリーに出向いて地元のワインを楽しむことができました。ワインの味については参加者それぞれでしたが、僕はシャルドネがおいしいと思ったので一本お土産に。

日本人にとっては「ハイジの村」

下の写真は、宿舎となった研修施設に併設されている木材加工の実習室。これは最新式の加工ロボットで、オペレーターの指示に応じてアタッチメントを自ら取り換えながら動くというもの。スイスでこれが一般的になるのは10年先だろうと案内してくれたトレーニーの方はおっしゃっていましたが、それをいち早く導入し、トレーニングプログラムを提供するという考え方は面白いと感じました。

木材加工の実習室

そして、トレーニーの地元の兄ちゃん風の気のよさそうな方が、十分に理解できる英語で説明をしてくれたことにも驚きました。この施設はスイス国内の学生や林業従事者を対象としているものなので、普段、英語を使う必要はないはずなのです。スイスは4つの言語が公用語というマルチリンガルの国なのですが、そういう環境で仕事をするという中で、英語もスキルの一つとしてマスターしたのだろう、と推測しました。ちなみに4つの言語とは、ドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語。英語は入っていません。


オリジナル記事公開日:2012年8月3日

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