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#06ニットパタンナーの仕事内容


ニットメーカーによってはいないことも多々あるニットのパタンナー。

専門学校でもニット自体ニットの学科以外ではしっかり取り上げられることがないので、おそらく普段布帛を扱ってる方々からしたらニットパタンナーって何をしているのかわからない存在だと思います。

そこで、私が工場ベースで経験したニットパタンナーの仕事内容がどのようなものなのか、おおまかにですが書こうと思います。


サンプル


1.仕様書をもとに型紙(パターン)を引く

パタンナーなので、パターンを引きます。おそらくこれはどこの会社でも同じだと思います。基本的には指示寸法をもとに囲み製図で引いていきます。

私は基本囲み製図で引いて、ジャケットやコートのラペルや衿周り、平面でわかりにくいデザインのもの、編地が布帛に近いものなどは、立体裁断(ドレーピング)で形のバランスを確認しながらパターンに落とし込んでいってました。

ニットのパターンの作り方についてはまた別の機会に書こうと思いますが、基本的にダーツはなし、編み出しがあるので裾線は水平という制約があるので、その条件をクリア(もしくは活用)しながらどうやって形にしていくかがどのアイテムを作る場合でも大切になります。ドレーピングで形を作る場合でも、その制約をちゃんと踏まえて形にしていきます。

また、布帛でも使用する生地によって作り方を変えたりする場合がありますが、ニットはダレや加工方法などによって布帛以上に使用する編地や糸にシルエットを左右されてしまうので、あまり同じ型紙をそのまま使用することはないと思います。使用する編み組織や糸に応じて、編み方や縫製方法を考慮したパターンが必要になります。

カットはもちろんですが、成型やホールガーメントで作る場合でもパターンはあった方が編む人は最初の柄組がすごく楽になるので、作り方に関係なくパターンは引いた方がいいのかなと思います。


2.編み立てに編み指示を出す

パターンが引けたら、編地を編む人(=編み立て)に編む時に注意してほしい点を指示します。

パターン作成時にイメージしたシルエットに近づけるように、編地の風合いの確認やリブがどのくらいの度目が良さそうか、リンキングが必要な衿や他の付属の目数、編みキズが出て編めない場合の対処法、(複数の編み柄が使われている場合)編み組織のバランスの調整をどうするか、などなど。バランスを見ながら製品クオリティーを上げられるように1つ1つ指示します。

また、最初の段階で量産の時に問題になりそうな編み方がないかチェックすることも大切かなと思います。編み方が少し変わるだけでパターンや製品の単価にも影響が出てしまうので、編みキズが出にくく安定してシルエットが出せる編み方になっているか注意しておくと、後々トラブルが起こりにくくなります。

OEMやODM生産の場合、指示された編み組織や糸では希望のシルエットが出せないことがあるので、その場合にどう代替案を出せるかもパタンナーに必要な能力かなと思います。


3.縫製に指示を出す

編み立てから指示通りに編みあがってきたら、次は縫ってくれる方に指示を出します。縫製への指示は、カットで作る場合と成型で作る場合で異なります。

カットで作る場合、仕様の説明(縫い代の仕末の方法やどういう順序で縫い進めていくか等)や柄合わせの有無、パターンを編地にどう合わせるかなどの指示を出します。パターンの合わせ方は、例えば袖口や裾がリブの場合、リブが何本入るように裁断してほしいかや、編地の目を立てて裁断するか型紙通り裁断するかなどを指示します。

成型で作る場合は、各縫製箇所(肩やAH、袖下など)を何センチ(何矢)で縫って何センチ伸びてほしいか、縫い代をどのくらい(何目)にするかなどを指示します。何センチ伸びるかはミシンの糸調子に関係するので、ちゃんと指示できた方が量産の時にバラツキが出なくなります。


4.アイロンをかける

カットの場合は裁断前の編地の状態でアイロンをかける時に、成型の場合は縫い終わったとの最後のセットアイロンの時に、編地がどう変化する(=動く)かをちゃんと見極めます。

糸や加工によってスチームをかけるとびっくりするくらい動くことがあるので、間違ったアイロンのかけ方をすると乱寸等の問題に繋がり、後々パターンや修正に大きく影響してきます。

私自身このアイロン工程の大切さにはじめ全然気づかず数々のトラブルに見舞われたので、ちゃんとできるようになったほうが良いです。


5.製品の採寸

出来上がったサンプルの採寸をします。

ニットは布帛に比べて、触ると簡単に動いてしまうので、あまり変なチカラを加えないようスッと自然に置きます。工場側とブランド側で採寸結果が違うことが多々ありますが、置き方によるバラツキが原因なことがあります。

採寸方法は各ブランドで違うようですが、そもそも布帛とニットでも違うみたいです。


6.サンプルの修正

サンプルの修正は、修正指示に沿って行なっていきます。

パターン修正はカットでは必要ですが、成型やホールガーメントで作る場合は修正内容に応じてパターンを修正した方が速い場合と、パターンを用いずサンプルをパターン代わりに直接目数の増減を修正・指示した方が速い場合があります。

布帛とニットの大きな違いは、布帛はパターンや縫製面の修正がメインですが、ニットの場合パターンだけでなく、編み方で問題箇所を修正できたりするのでどう修正するのがベストなのか考える必要があります。

修正の考え方についてはまた別の機会に詳しく書きますが、サンプルのどこに不具合が起きているかしっかり見極める目を養って、パターンを直すのか、編み方を直すのか、縫製方法を直すのか、どれが最適なのか判断できるようになる必要があると思います。


量産(現物/BALK)


1.サンプル最終修正&グレーディング

最終の修正指示をもとにパターンを修正し、そこからサイズ展開(=グレーディング)をしていきます。また、パターンだけでなく衿の目数や編地の柄位置の指示なども行います。

成型やホールガーメントでは、修正の時と同じように目数の増減でサイズ展開を指示していきます。センチで指示してもいいですが、目数で指示した方が編み立ての人が目数数えなくて済むので喜ばれます。


2.割り出し(カットの場合のみ)

カットの場合、布帛のように反物から裁断する訳ではないので、パーツごとに編地のサイズや柄の入れ方(柄合わせや特定の位置に欲しい柄がある場合)などを編み立てに指示します。特に、裁断時に必要になる編地の大きさは、会社によって考え方が違ってくるところだと思います。

これについては「#04ニット製品のつくり方(カット編)」に少し書きましたので、そちらを参照してください。


3.協力工場へ指示

ニットに限らず、基本的に多くの工場は自分のところだけで作れない量を生産する時、周りにある協力工場さんに分担して作ってもらいます。ニットの場合の協力工場さんは、編み立てだけ行うところや縫製だけ行うところ、両方とも行うところがあります。

そうした時どこで作ってもらっても同じ品質になるように、編み立ての協力工場さんには、度目の確認や伏せ目の伸び、目面などに差異がないか確認を取り、縫製の協力工場さんにはロックの差動や縫製方法や手順に不具合がないか確認を取ります。


終わりに

ニットは縫製仕様の種類が布帛に比べて少ない分、パターン以外で諸問題を解決できる方法があるので、パターンの知識だけでなく編み立ての知識が必要になることだと思います。

書いてきたのは、私が経験したことなのでそれぞれの会社によって多少業務内容が違うと思います。(他社さんではパタンナーはパターンだけしか引かないところもありますし。)そもそもニットのパタンナー自体布帛のパタンナーに比べて稀有な存在なので、一般的なニットパタンナーの業務というのがあるのかわかりませんが、こんな感じでやっています!ということが、必要な人に少しでも伝わればいいなと思います。

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