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#02 ゲージとその選び方


ニットにたずさわっているとよく耳にする「ゲージ(G)」。

仕様書に書かれる7Gや16Gのような表記や、最近だとお店でもローゲージやハイゲージという言葉を見かける機会もあると思います。

ただ、言葉と意味は知っていても、場面場面によってどうゲージを選択すればいいのか理解している人は多くないんじゃないかなと思います。

今回はそんな「ゲージ」について書きたいと思います。



- 「ゲージ」とは? -


横編み機におけるゲージは、「1インチ(=2.54cm)の中に何本編み針が入っているかを表す単位」で、3Gだと1インチの中に針が3本、12Gだと1インチの中に針が12本入っていることを意味しています。

ベラ針


なので、数字が大きいほど編み目は細かくなり(ハイゲージ)、小さいほど編み目は大きくなります(ローゲージ)。

針の大きさもゲージごとにちがっていて、ハイゲージになるほど細く、ローゲージになるほど太くなります。

冬物に多いざっくりとしたニットはローゲージ、Tシャツなどのカットソーやサマーニットに多い細かい編み目のニットはハイゲージになります。



- ゲージ=編み目の密度 -


完成度の高いニット製品を作る上で、使用する糸や編み組織も大切ですが、個人的にはゲージごとの編み目の密度の差が一つの重要な要素だと思います。特にシルエットを作る上でこの密度が大きく関わっていると思います。

例えば、ギャザーがポイントになるアイテムをデザインする時、ローゲージとハイゲージではどちらがはっきりギャザーが見えるでしょうか?

仮に同じ糸、同じ編み組織の場合だと、ハイゲージの方がギャザーのくしゃっとした表情がはっきりします。


これは編地の密度が大きく関わっていて、ローゲージになるにつれて編み目の密度はどんどん低くなる(=編み目の隙間が大きくなる)ので柔らかくなり、ハイゲージになるにつれて密度がどんどん高くなる=編み目の隙間が小さくなる)ので張りが出て布帛に近づいていきます。


ゲージの密度-01


つまり、ローゲージでギャザーをしても編み目の隙間が埋まるだけでギャザーのくしゃっとした感じがなかなか出ませんし、出そうと思うとギャザーの分量を多く取らないといけません。それに対して、ハイゲージの場合では編み目の隙間がもともと少ないので、くしゃっとした感じが比較的出しやすくなります。

逆にくしゃっとした感じを出さず分量のみ多くしたい場合は、ローゲージのように密度が低くなるように設定(ハイゲージでも度目や本数取りで調整可能)をすると良いかなと思います。


この密度の考え方で他の人から説明を受けたことが私もないのですが、この考え方は色々と応用が効くと思います。

たとえば、ゲージだけでなく透かし柄などの編み地でも同じ事が言えますし、同じゲージでも糸の本数取りを増減すれば密度を変えられます。

なので、ゲージで悩んだ場合には、密度の調整を意識すると狙ったカタチに近づけられると思います。



- ゲージの決め方 -


ニットをデザインする時、使いたい編み柄や糸、出したいシルエット、製品になった時の重さや単価など、色々なことを考えながらデザインすると思います。

これらどの要素にも、ゲージは大きく関わってきます。なので、個人的には何を一番のポイントにするか決め、それに合わせてゲージを決めるといいと思います。

それぞれの要素がどうゲージと関係しているかを次に説明します。


①糸とゲージの関係

糸とゲージの関係は、糸の太さが大きく関わっています。

上でも書きましたが、ゲージによって針の太さが変わるので、各ゲージの機械によって適した糸の番手(=糸の太さ)の目安があります。(適正番手の計算方法はここでは省略します)

適正番手から大きく外れると、針折れや目落ちといった編みキズの原因になります。(編みキズは、量産時の大きな敵になるので、極力避けましょう。)

適正ゲージの度目を調整し密度を変化すれば、編地の厚みやハリ、編み目の見え方を変えられますし、度目だけで目面を調整できない場合は、ゲージを上げ下げしてゲージ変更すれば、糸の本数や編み目の密度を大きく変化させることができます。

※適正番手以外のゲージで編む際、糸の強度や太さ、形状や伸縮性の有無などによって編めたり編めなかったりするので、確認が必要です。


②編み柄とゲージの関係

使いたい柄が一番にある場合、目指す見え方になるようにゲージを設定すれば大丈夫です。それから、設定したゲージに最適な番手の糸を選ぶと間違いが少ないです。

ケーブルのようなひねりのある柄はローゲージほどダイナミックに見えますし、天竺でもゲージによって全然見え方が違います。

ただ、設定したゲージには合わないけどどうしても使いたい糸があったり、シルエットなどの他の要素と折り合いがつかない場合は、ゲージと編み方を変えてなるべく同じ見え方になるようにする手段もあるので、「必ずそのゲージでその編み方!」という風にこだわり過ぎず、バランスをとってみると良いかなと思います。


③シルエットとゲージの関係

先に書いたように、シルエットは編地の密度と密接な関係があるので、狙ったシルエットがどういうものなのか、実際の編地の密度がどうなっているとそのシルエットが出せるのかイメージできるようになると、できてくるサンプルとイメージのズレが少なくなると思います。

特にサンプル前のスワッチの段階でゲージや糸取りを調整できると、その後のサンプルがスムーズに進みますし、ここのズレが大きいとサンプルの修正も多く、その後もトラブルが多くなるので、なるべく最初の段階で編地の調整ができるといいなと思います。

そのために少し大きめの編地を編んでもらうのも1つの手だと思います。(スワッチが小さいと柄の見え方も検討しづらいので)


④重さとゲージの関係

同じ糸・同じ編み方で、本数取りだけ変えてゲージごとの適正番手で編む場合、ローゲージよりもハイゲージの方が軽くなります。

ハイゲージの方が密度が高くなるのになぜ軽くなるかというと、密度の変化よりも使用する糸の重さの変化の方が大きいためで、逆に同じ本数取りなら密度が低いローゲージの方が軽くなります。

重さとゲージの関係-01


実際には糸の番手で調整できるゲージは限られるので、糸の本数を増やしたり減らしたり、ゲージを変更したりして重さを調整します。



- おわりに -


全体のバランスをどう取るかが大事

編地を決める段階で全てが希望通りになっていることは少ないです。なので上に書いてきたことに注意しながら、色々と調整していく事が大切です。

その調整の精度が高くなれば、ニッターさん側も何回も編地出したりしなくていいし、確認するブランド側も何回も見なくて済むので、どちらもいかに早く完成形をイメージできるかが大切かなと思います。

製品をつくっていく上で、あちらを立てればこちらが立たずな事はしょっちゅう起こります。そんな中で、何が最優先なのか。そこから優先順位を付けて要素ごとにクリアしていくと、製品の完成度も段々上がっていくかなと思います。



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