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#01 どうしてニットは伸びて、布帛は伸びないのか


1回目の今回は、ニットといえばコレ!の、編物(ニット)の伸縮性について書こうと思います。


前回のnoteでも書いたように全然伸びがでない編地もあるので、この記事を読んだ後に、どういう編地が伸びてどういう編地は伸びにくいのか少しでもイメージできるようになってもらえたらいいなと思います。

というのも、実務で色々と仕様書を見ていると「この編み方でこの衿周りの仕様(寸法)だと頭入らないんじゃ?」という問題が少なからずあったので、イメージができるようになるとこういった問題はあらかじめ回避できるようになると思います。


どうしてニットは伸縮性があって織物(布帛)はないのか、それぞれ生地の作られ方から考えてみようと思います。



※今回はあくまでも編み方や織り方の話なので、糸自体が持つ伸縮性については考慮していません。糸自体に伸縮性があれば織物でも多少伸縮性があります。



糸の動きが布帛は直線、ニットは曲線



布帛の生地は経糸(たていと)と緯糸(よこいと)からできています。

初めに経糸をずらっと何千本も並べ、その経糸に交差するように緯糸を往復する事で織られています。


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それに対してニットは、ひと目ひと目ループと呼ばれる輪っかを作りながら一段ずつ緯糸の往復だけでできています。


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織物は緯糸がピンっと真っ直ぐに進むのに対して、ニットは曲がりくねりながら進んでいきます。

針金で考えるとイメージしやすいのですが、伸びきった状態の針金(布帛)はそれ以上伸びる事はできませんが、バネのようにゆとりを持たせた針金(ニット)だと伸びが出てきます。

この曲線があるかないかで伸びる伸びないが決まってきます



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部分的に見てみると、同じ長さの糸だとニットの方がループを作る分、巾が狭くなります。

同じ生地巾で比較すると、布帛よりもニットの方が長く糸を使用していることになり、ピンと伸ばした状態で比べると、その差は結構大きいです。

実際には上下左右、編地全体のループ同士が影響しあっているので、単純に差分伸びるわけではないのですが、イメージとしてはこういう事かなと思います。


なので伸びる編地とは、一定の生地巾に対して、1段1段糸が長くなるように編まれた編地です。

伸びる組織の代表だと1×1リブがありますが、1×1リブもキュッと詰まってくる編み方なので、生地巾に対して1段1段に使用する糸が他の組織と比べて長くなる編み組織になっています。


伸びない編地は布帛に近い


では、逆に冒頭に書いた伸びにくい編地とはどういうものなのか。

これは、布帛に近い編まれ方、つまり糸が一番短くなる直線的な緯糸の動きで編まれたものは伸びにくいです。いわゆるスレッド編みとかインレイ編みと言われる編み方です。


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左図のように上下が同じようなループになっている場合、同じように横へ伸びるのですが、右図のように途中途中で糸を飛ばして編むとすぐにピンっと張られてしまい、それが周りのループに影響して伸びにくくなります。

糸を飛ばせば飛ばすほど伸びが出なくなるので、服の作り方としてはより布帛の生地を使った作り方に近くなっていきます。
(あまり飛ばしすぎるとひっかけのトラブルになるので要注意です!)

また、透かし柄も部分的にループが短くなるので、天竺などよりは伸びが少なくなります。

デザイン上伸びにくい編地で衿周りにどうしても開きを作りたくない場合は、見た目に影響が出ない程度に全体もしくは部分的に伸びが出るよう組織を変更するか、糸自体に伸縮性があるものを使用した方が良いです。(ストレッチ性の糸は乱寸が出やすいのでオススメしませんが。。)



衿周りがコンパクトなデザインが最近よく作られていますが、ニットだから何でも伸びると思わずに、編地を決める段階でどの位伸びがあるか、衿ぐりの寸法と相談しながらチェックするのが大事かなと思います!

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