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ショートショート#10 塩氷りんご(しおごおりんご)

アイスを食べていたら、いつの間にか塩氷りんごを食べていた。
カレーを食べていたら、いつの間にか塩氷りんごを食べていた。
ポテチを食べていたら、いつの間にか塩氷りんごを食べていた。

塩氷りんごにはいつの間にか手を伸ばしてしまう中毒性がある。
まるでお伽噺の毒りんごだ。

見た目は普通のりんご。
塩漬けしてある、塩味のりんご。
それを凍らせてできあがり、塩氷りんご。

もう一つ、塩氷りんごの不思議なところは、中身がまるで万華鏡のように光り輝くことだ。
食べるとピカピカと光るので、夜食べる時は気をつけなければならない。
ダイエット中に妻に内緒で食べていると、光で見つかってしまう。

切ってみるといろんな模様になっているのが面白い。

問題は入手方法だろう。
りんごを塩で漬けて、冷凍庫で凍らせるだけでこんなに面白い図柄が広がるものなのか。
いや、そう簡単に家で作れる代物ではない。
自分で塩氷りんごを作ろうと思っても、ただの塩漬けで凍らせたりんごができるだけだ。
塩氷りんごのように病みつきのうまさで、中身が万華鏡のように光り輝くのはどうしてか。

その秘密は水にある。
オホーツク海を流れる流氷の一部には特殊な成分が含まれているものがあり、流氷を溶かすと塩氷りんごの素となる光り輝く水ができる。

しかし、オホーツク海の流氷が手に入らない。
というか、溶かしても塩氷りんご用の光り輝く水になるとは限らない。

何とも不思議なりんご。
塩氷りんご。
食べたら病みつき。
塩氷りんご。
中身は万華鏡のような輝き。
塩氷りんご。

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