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刃渡り10㎝の宇宙人

ここに鋭利な刃物があり、これはエイリアンである。これはジョークではない。ジョーズでもない。これは紛う事なきエイリアンであり、そして鋭利な刃物である。

彼、と呼んで良いのかは分からないが、ここでは便宜上彼と呼ぶことにする。

我々人類の知見の外からはるばる地球へやってきた彼は、偶然にも地球で「果物ナイフ」と呼ばれる刃物と同じ形をしていた。形だけでなく、性質もおそらく同じであった。彼は果物を

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3月33日の夏祭り

きっと世界は私に嘘をついているのでしょう。

人ごみであふれる夏祭りの屋台通り。私の隣にはサンタクロース。スマートフォンのカレンダーは3月33日。多分、壊れている。スマートフォンも、そして世界も、壊れてしまったのだ。

私の記憶が間違っていなければ、今日は3月33日ではないし、少なくとも夏祭りが行われるような季節でもない。それなのに、通りに掲げられているのぼりの中では「夏祭り」という文字が大きく自

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羽毛布団の味

目が覚めると、白い髭を入道雲のように蓄えたサンタクロースが私の顔を覗き込んでいた。

ん、サンタ?今って、何月だっけ。

枕元に置いてあるスマートフォンで日付を確かめてみる。『3月32日』。3月にそんな日付があったかどうかは定かじゃない。定かじゃないっていうか、ない。なかったはず。あれ?私の記憶が定かじゃない。3月って何日までだっけ。スマートフォンが32日って言ってるんだから、32日まであるんじゃ

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カップラーメン

月が綺麗だなと思って眺めていたら、夜空に浮かぶその球体の輪郭が少しずつ大きくなっていくのに気がついた。

それが月がこちらに近づいてきているのだと理解するにはしばらくかかった。

つけっぱなしにしていたテレビが緊急速報に切り替わり、この世の終わりみたいな表情をしたアナウンサーが告げる。

『月がもの凄い速度で地球に近づいています!』

聞けば地球はあと3分程で粉々に砕け散るとNASAが発表したとい

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不透明人間

不透明人間

絵の具なんかじゃ描けないあの綺麗な透明に、いっそ染まることが出来たらいいのに。

この高台に来るといつもそう思う。ここから見下ろす景色はとっても綺麗なんだ。雑然とした街並みとその奥に広がる真っ青な海、そして海と同じ色に染まる空が水平線をおぼろげにして一体化する様は、見るものを引きこんでいく。綺麗だ、という言葉で済ませてしまうのがもったいないくらい。時間が変われば空の色は変わるし、時代が変われば街並

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『食欲』

『食欲』

夜、時計の長針と短針が"12"を指して重なる頃である。

ポテトチップスが僕を笑った。

彼の名前は「のり塩」である。

『いいのかいこんな時間に私を食べて。』

『君もご存知の通り私は脂肪と糖質の塊だ。今君が私を体内に取り込めば君は確実に体重を増やすことだろう。』

全く、五月蝿いポテトチップスである。

のり塩よ、お前はお菓子の分際で僕に逆らおうというのか。

『逆らおうなんてとんでもない。た

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