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奇縁堂だより11【本の紹介:江戸川乱歩賞①】

 前回前々回に紹介したのは,本格ミステリに与えられる日本推理作家協会賞でした。今回はミステリ界の登竜門とも言える江戸川乱歩賞を紹介します。

江戸川乱歩賞とは

 本賞は,1954年に作家の江戸川乱歩が,探偵小説奨励の賞を制定することを目的に探偵作家クラブ(現在の日本推理作家協会)に100万円の寄付し,これを基金として発足した賞です。
 「その年度の探偵小説の諸分野において顕著なる業績を示した人に,過去の実績をも考慮して贈賞する」としたもので,功労賞としての意味合いを備えた賞としてスタートしました。
 しかし,第3回以降は長編を公募して優秀作を選ぶという現在のスタイルに変更されています。
 現在の正賞は江戸川乱歩像,副賞は賞金500万円。受賞作は講談社より単行本として刊行され,フジテレビによる映像化検討が約束されています。

江戸川乱歩について

 この賞を創設した江戸川乱歩について少し紹介します。
 江戸川乱歩(1894-1965),本名は平井太郎。ペンネームの江戸川乱歩は,アメリカの推理作家エドガー・アラン・ポーのもじりであることはよく知られるところです。
 乱歩の代表作には『二銭銅貨』,『陰獣』,『幻影城』,『怪人二十面相』,『明智小五郎事件簿』,『D坂の怪人』など多数あります。ちなみに,乱歩は探偵作家クラブの初代会長を務めました。

 次に,書肆奇縁堂の在庫の中から江戸川乱歩賞受賞作をピックアップして紹介します。
 日本推理作家協会賞受賞作とは少々異なり,荒削りですが着想の面白さを堪能できる作品がたくさんあります。今回は19回~37回の受賞作を取り上げます。(次回は41回~60回の受賞作の予定です。)

紹介作品一覧

  1. 『アルキメデスは手を汚さない』

  2. 『猿丸幻視行』

  3. 『原子炉の蟹』

  4. 『黄金流砂』

  5. 『写楽殺人事件』

  6. 『天女の末裔』

  7. 『放課後』

  8. 『モーツァルトは子守唄を歌わない』

  9. 『白色の残像』

  10. 『連鎖』


作品紹介

・『アルキメデスは手を汚さない』(小峰元:著) 文庫,¥ 150(税込)
 第19回受賞
 女子高生の美雪は,「アルキメデス」という不可解な言葉だけを残して死んだ。さらに,クラスメートが教室で毒殺されかかり,また行方不明者も出現するに及んで生徒たちは疑心暗鬼となり慄然とする…
 一体,事件の真相は? 1970年代の高校を舞台にした青春推理小説である。
 

・『猿丸幻視行』(井沢元彦:著) 四六判,¥ 330(税込)
 第26回受賞
 時は明治後半。平安時代の伝説の歌人猿丸大夫の和歌と,“いろは歌”に隠された秘密の解明に,民俗学者であり国文学者でもある折口信夫が挑む。
 信夫は友人の死の謎を解き明かしながら,“猿丸額”の謎も解明にも迫る。猿丸大夫とは? “いろは歌”にかくされた千年の秘密とは? 

・『原子炉の蟹』(長井彬:著) 四六判,¥ 440(税込)
 第27回受賞
 原子力発電所の建屋内は巨大な密室である。そこで,連続殺人が起こった。
 そして,原子炉で多量に被曝した死体が,ドラム缶詰めにされて処分されたという噂が流れる。
 被害者は,失踪したという原発の下請け会社の社長か?新聞記者たちはこれを追い,一社がスクープとして報じるが…。
 原発に関する謎と情報が複雑に絡み合う推理小説。

・『黄金流砂』(中津文彦:著) 四六判,¥ 350(税込)
 第28回受賞

 盛岡のホテルで,高名な歴史学者の死体が発見された。駆け出しの新聞記者・法願総一郎が事件を担当することに…。
 事件解決の鍵は“源義経は平泉で死んだのではなく,北へと逃れた”という義経北行説まつわる古文書にある?
 ついに総一郎は,最後まで義経を庇護し続け,誅殺された藤原忠衡直筆の古文書に行き当たるが…。

・『写楽殺人事件』(高橋克彦:著) 四六判,¥ 150(税込)
 第29回受賞
 江戸後期に活躍した謎の浮世絵師・東洲斎写楽。この写楽を研究する大学助手の津田は,偶然入手した秋田蘭画の画集に写楽の名を見つけ,これをヒントに写楽の実体に迫る。
 しかし,津田の周辺に連続殺人が起きていて…。津田は或る結論にたどりつくのだが…。

・『天女の末裔』(鳥井加南子:著) 四六判,¥ 220(税込)
 第30回受賞
 岐阜の山中にある神守地区。この山中で巫女が女の子を生んだ。生まれた子は民俗学研究の学生が連れていったという。
 そのとき,村の男性が殺害された。現場には巫女がいたが,「竜神様の御意志です」というばかりで詳細は語らず,村人たちも「イチミコサマの呪い」と呟くのみ…。
 そして,巫女は殺人犯として服役することになった。23年後,事件直後に書かれたイチミコサマ研究の卒業論文の存在が突然クローズアップされる。
 神守生まれの娘が自分の出生の秘密をさぐるうち,事件の真相を暗示するこのレポートに巡り合ったのだ。そして,再び山中で謎の殺人事件が起きる…。

・『放課後』(東野圭吾:著) 四六判,¥ 1650(税込)
 第31回受賞
 県下でトップクラスの進学女子高で教鞭を執る前島。なぜか彼は何者かに命を狙われている。しかし,校内の更衣室で青酸中毒で死んだのは生徒指導の村橋だった。犯人候補は生徒の中に続々登場する。
 そして,運動会の仮装行列で第二の殺人が起こる。死んだの前島の同僚教師だった。しかし,狙われたのは前島…。前島が命を狙われる理由とはいったい…。

超人気作家・東野圭吾のデビュー作。商品は初版本です!!

・『モーツァルトは子守唄を歌わない』(森雅裕:著) 四六判,¥ 880(税込)
 第31回受賞
 モーツァルトは,最後のオペラ“魔笛”の作曲ににとりかかっている間に,自分の生命が誰かに狙われているという疑念を抱くようになった…。モーツァルトの死因にはさまざまな説があり,また他殺説も広まっていた。
 そして彼の死後18年,シレーネという娘がウィーンの楽譜屋に「父の作曲楽譜が,モーツァルトの名前とすり替えられ売り出されている」と抗議している最中に,あのベートーヴェンが楽譜屋を訪れ,楽譜の真贋と謎に興味を持つ…。
 モ-ツァルトの死の謎は,彼が作曲したと言われている子守唄の楽譜に隠されているのでは?名探偵・ベートーヴェンの誕生か⁉︎

・『白色の残像』(坂本光一:著) 四六判,¥ 330(税込)
 第34回受賞
 夏の高校野球甲子園大会。千葉県代表と茨城県代表の監督は,かつては大阪の野球名門高校でバッテリーを組み,甲子園で優勝した実績をもっている。しかし,不幸な事故が二人の関係を遺恨対決に変えてしまった…。
 スポーツ新聞の記者が二人を取材したが,その折に甲子園大会をギャンブルの対象とするハンデ師が殺害される。事件の解明は,甲子園大会の日程に合わせて徐々は進むが…。

・『連鎖』(真保裕一:著) 文庫,¥ 200(税込)
 第37回受賞
 チェルノブイリ原発の事故による放射能汚染食品が,ヨーロッパから検査対象外の国を経由して日本国内に輸入されている!
 これをスクープした記者が,運転する車ごと海に落ちて意識不明の重体に陥った。
 記者の友人である羽川は,厚生省(現在の厚生労働省)の元食品Gメンとして食品検疫所で働いているが,汚染食品の横流しの眞相究明に乗り出した。その羽川に危機が…。


ここまでお読みいただきありがとうございました。
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