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【我が家レポート】父と息子の静かなる戦い

あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか。
一時間は優に超えているだろう。
左腕の張り具合が私をそう思わせる。

ふと時計を見ると14時を少し回ったところだった。
まだ15分しか経っていなかった。

「よしいいペースだ」

私は心の中でつぶやいた。

左腕の張りは慢性的なものになりつつあり、時間を推測する指標としては意味のないものになっていた。

息子は私の左肩に右の頬をぶにっとくっつけ、小さな鼻息がすーぴーすーぴーと音を立てている。

ここからが正念場だ。

私はリビングの端に敷いてある小さな敷布団に目をやった。

バスタオルほどの大きさの掛け布団が無造作に置かれている。
その掛け布団を右足でどかし、私は最後の戦いに入った。

敷布団に息子の背中をつけ、そのまま自分の体で息子を覆うような姿勢で静止した。

「よし、気づいていない。」

息子のお腹に私の体をつけたまま、私はすぐに立てる体勢を整えた。

「もう少し、もう少しだ。」

私は焦る気持ちを抑え、気配をなくし、ゆっくりと動くよう努めた。

そして、最後の最後に息子のお腹から私の体を離した。

私は息子との戦いに勝利した。
そう思った。

私はゆっくり立ち上がり、布団の上で満足そうに微笑みながら寝ている息子を見下してそう思った。

「さぁ、午前中にやるはずだった洗濯と皿洗いを今のうちに済ませないと。」

そう思って息子に掛け布団をかけた瞬間、その静寂は打ち破られた。

「へーん!ふぇーん!」

その音は息子の口から発せられたものだった。

そこまで圧倒的に優勢だった黒色が最後の一手で白色にひっくり返されるオセロのように、形勢は逆転した。

私は勝てなかった。
息子との寝かすか寝かされないかの戦いに私は負けたのだ。

「くそー、だめだったか。もう一回戦だ!」

積んである洗濯物と、お皿の溜まったシンクを横目に、三度目の息子の寝かしつけが始まったのでした。

こんにちは。
きーちです。

今日は寝かしつけという父と息子の熱いバトルを小説仕立てにしてみました。

それではまた。
きーち

妻・娘・息子と4人でディズニーランドに行く軍資金にします。 その折は、我が家レポートで報告いたします。 よろしくお願いいたします!