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『SHIFT:イノベーションの作法』をレゴ🄬シリアスプレイ🄬の文脈で読む(2)バイアスの発見

 『SHIFT:イノベーションの作法』の中で、あえてキーワードを一つだけ挙げるとしたら、それは「バイアス・ブレイク」になるだろう。

 イノベーションにふさわしい新たな発想とチャレンジを阻むのは常識であり、新しい発想とチャレンジを生み出すのも常識である。

 後者に関しては、「常識」に阻まれて考えようとしなかったところにこそイノベーションの可能性が数多く眠っているということである。

 同時に、難しいのは「常識」の中にある「バイアス」を可視化させるという点であろう。あまりにも当然であるがゆえに、数多くの情報を処理しなければならない脳の情報処理活動からは省略されやすくなる。すなわち、常識は「見えなくなっている」のである。

 見えないものを見えるようにするのは何か。まずは「問題」である。本書でバイアス・ブレイクの事例がいくつかあげられているが、バイアスを見つける前には、いずれも「問題」がある。実際に、その問題は組織の上層部から来るかもしれない(例:既存市場の商品の売り上げが落ちているため新商品の開発が急務である)。
 「問題」までいかない場合もあり、それは現状に対する小さな違和感などであろう。

 現状に対する小さな違和感は、多くの人にとって感じる機会はそれなりにあるはずだ。しかし、その小さな感覚を機敏にとらえ集中力と思考を詰めていくということまでに、ほとんどの人は至らない。
 優れた起業家は、他の人が気づかないところに鋭く切り込み、それを商品化したときには「それなら私も考えたことがあったのに」と言わせるものである。

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドの出番は

 そこでレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドは、心の小さな揺れ動きや言葉にならない感覚的なものを可視化するのに優れている。

 ここでは、そこにバイアスが眠っているかもしれない小さな違和感を形にするということには貢献できそうだ。「あなたが最近感じた日常での小さな不満とは」などというお題で作品を作ってもらうなどが考えられる。その作品の説明を切り口に「バイアス」を掘り出すことができるだろう。

 もしくは「問題」の対象になっているビジネスや領域をわかりやすく説明するモデルを作ってみるということもある。複数人につくってもらうことで、そのビジネスや領域の「常識」などが浮かび上がってくるはずだ。その裏に「バイアス」が潜んでいる可能性がある。

 もちろん、濱口氏のイノベーション手法では、バイアスの発見はイノベーションの入り口にすぎないが、この「バイアス」に上手く気づけないまま終わってしまう残念さを考えれば、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使ったバイアス発見ワークは、十分試してみる価値はあるのではないだろうか。

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