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【9】日ソついに開戦

前回の記事はコチラ。


今回はこちらから。
ついに日ソ開戦の日。
1945年 8月9日です。


こつこつと扉を叩く音に目をさまし電灯をつけていぶかしげに扉に近づいて開けると外は真っ暗、すると上等兵が顔の前に顔を出し、目を輝かせながら「非常呼集です、すぐ登庁してください。」と言うと足早に廊下を消えて行った。

柱に掛けた腕時計はまだ1時前、“非常呼集”…突差に緊張して身支度をする。
隣室の情報班の二関曹長が顔を出し「出来たら行こう」と声を掛けてくれた。

外に出た。小雨が顔に当たる。闇の中に自動車の前照灯が交錯する。
二関は「境界侵犯だろう、2~3日前から奴等の動きが活発になったから。」と言っていた。
2人は局部的侵犯を想像し、虎林や虎頭などの国境の景色が頭に浮かんだ。
局部的侵犯は最近数あることだった。


牡丹江街道を自動車が何台も疾走する。
庁舎に近付くに従って2人はただごとではないぞと思ひ一段と歩をはやめた。

庁舎にはまだ人影は少なかった。
2階動員室の隣、会議室には司令官をはじめ、椎名、野溝、人見の3師団長、軍直轄部隊長が会議中で、これら団体長は1週間ほど前から新防衛戦術研究のため会議が開かれていた。

非常呼集はその一環として行はれたものではないか・・・が違う。
その雰囲気が。
出入りする将校の緊張した顔、顔。
その雰囲気は次々と登庁してくる者に伝わって異状な緊迫感を醸しだした。

動員室の者が全部揃うと両角少尉より「電灯は必要限度をもって管理。」と指示された。
騒音とてないのに強く耳朶をうつ騒音、息つまる圧迫感、わかっていながら口に出てこないもどかしさ。
誰の目も疑惑に包まれながら何ものかを探求しているかのようだ。

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