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JW61 神様の娘

【神武東征編】EP61 神様の娘


建国の詔(みことのり)を発表し、橿原(かしはら)の地に宮殿を建てることを決めた、狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行。

次に、サノの嫁を探すことになり、嫁候補選びの会議が開かれた。

ここで、目の周りに入れ墨をした、大久米命(おおくめ・のみこと)が姫の名を語り始めた。

大久米(おおくめ)「その名も、媛蹈鞴五十鈴媛(ひめたたらいすずひめ)と申します。タタラちゃんと呼んでほしいっす。」

大久米の提案に、博学の天種子命(あまのたね・のみこと)が問いかける。

天種子(あまのたね)「それで、親である神様は、誰にあらしゃいます。」

大久米(おおくめ)「親である神は・・・いろいろっすね。」

サノ「いろいろ? どういうことじゃ?!」

大久米(おおくめ)「それが『日本書紀(にほんしょき)』では、大三輪神(おおみわのかみ)とか、事代主神(ことしろぬしのかみ)と記されてまして・・・。『古事記(こじき)』では、大物主神(おおものぬしのかみ)と記されておりまして・・・。」

サノ「諸説ありか・・・。」

天種子(あまのたね)「せやけど、分かることもあります。」

サノ「どういうことじゃ?」

天種子(あまのたね)「出雲(いずも)の系統に属する神様ということにあらしゃいます。大物主は、出雲の大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)の和魂(にきみたま)ですし、大三輪神は、大物主の別名・・・。事代主は大国主の息子にあらしゃいます。」

タギシ「和魂・・・優しい心というわけか・・・。どっちにせよ、完全に出雲の神様か・・・。」

大国主神たち

サノ「じゃっどん、なして、中つ国に出雲が関わってくるのじゃ?」

天種子(あまのたね)「国譲りで、出雲を明け渡したあとは、中つ国に移住してたんでしょうなぁ。せやけど、どういう経緯で、タタラちゃんは生まれたんや?」

大久米(おおくめ)「聞くところによると、三島溝橛耳神(みしまのみぞくいみみ・のかみ)の娘を出雲の神様が気に入って、嫁にしたみたいっすね。娘の名前が『日本書紀』では玉櫛媛(たまくしひめ)で、『古事記』では勢夜陀多良比売(せやだたらひめ)となってるっす。」

タタラちゃん家系図1

サノ「こっちも諸説ありか・・・。」

大久米(おおくめ)「どちらにしても、神様が娘を気に入って、嫁にしたんすよ。『日本書紀』では八尋熊鰐(やひろのわに)、すなわち大きな鮫(さめ)となって通ったと記されてるっす。」

ここで、椎根津彦(しいねつひこ)(以下、Seesaw)と息子の志麻津見(しまつみ)も解説に加わった。

Seesaw「じゃっどん、『古事記』では朱塗りの矢となって、娘が用便をしている時に陰所(ほと)を突いたと聞いちょるぞ。」×2

志麻津見(しまつみ)「それを引き抜くとイケメンに変わり、そして、二人は結ばれたとか・・・。」

サノ「シーソーよ。陰所(ほと)とは・・・もしや・・・。」

Seesaw「女性器ということやに!」×2

タギシ「出雲の神様は、直球勝負が好きなのか?!」

大久米(おおくめ)「まあ、そういうわけで、七人も女の子が生まれたみたいっすね。それで、最初に生まれたのが、タタラちゃんです。最初は陰所蹈鞴五十鈴媛(ほとたたらいすずひめ)だったそうなんですが、名前に陰所って・・・と思ったのか、姫自身が改名したみたいっすね。」

タタラちゃん家系図2

サノ「そうであろうな・・・。我でも改名すると思うぞ。」

天種子(あまのたね)「されど、タタラちゃんの爺ちゃんにあたる、三島溝橛耳神(みしまのみぞくいみみ・のかみ)という名・・・。どこかで聞いたことが・・・。」

そのとき、八咫烏(やたがらす)(以下、三本足)が口を開いた。

三本足「オラの別名だからな。それで、聞いたことあるんじゃねぇか?」

天種子(あまのたね)「ちょっ! えっ?! それでは、タタラちゃんは、三本足の孫娘ということになりますのんか?」

三本足「まあ、そういう説もあるみてぇなんだよなぁ。オラ、人気者だからなぁ。」

サノ「では、大久米よりも、詳しく知っておるではないか? なして、早く言わなかったのじゃ!」

三本足「大久米の活躍の場を取っちゃ、まずいだろ? やっぱ、台本通りに進めねぇとさぁ。神様に怒られっからよお。」

タタラちゃん家系図3

サノ「三本足・・・。姫のこと、詳しく教えてくんない(ください)。」

三本足「あれは、オラが三島に住んでた時のことだ。三島ってのは、摂津国(せっつ・のくに)の三島郡(みしま・のこおり)のことで、二千年後でいう、大阪府(おおさかふ)の茨木市(いばらきし)とか高槻市(たかつきし)の辺りだ。」

三島1
三島2

志麻津見(しまつみ)「溝橛(みぞくい)っちゅう名からも分かる通り、農業先進地なんやろ?」

三本足「そうだ。溝は水路、橛は杭(くい)のことだかんな。それに製鉄も進んでてよお。銅鐸(どうたく)の供給地だったんだ。茨木市に東奈良遺跡(ひがしならいせき)っちゅうのがあって、そっから、36点もの銅鐸の鋳型(いがた)の一部が出土してんだ。」

東奈良0
東奈良1
東奈良2
東奈良3
東奈良4
東奈良5
東奈良説明版
銅鐸の鋳型
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サノ「三本足・・・。そっちの詳しい話ではない・・・。姫のことじゃ。」

三本足「ああ、姫は母親に似て、美人だぞ。それに聡明だ。まあ、オラの血が流れてんだから、当然なんだけんどよお・・・なんてこと言ったら、大国主様に怒られるかな?」

サノ「それで、姫は、今も三島に?」

三本足「いや、今は三輪山(みわやま)の麓(ふもと)にいるみてぇだ。狭井川(さいがわ)の上流に住んでるみてぇだな。」

狭井川1
狭井川2
狭井川3
狭井川4
狭井川5
狭井川6
狭井川マップ

サノ「三輪山(みわやま)といえば、弟磯城(おとしき)こと黒速(くろはや)が治めている磯城(しき)の近くではないか。」

主君の発言を聞いて、黒速(くろはや)(以下、クロ)が意気揚々に答えた。

クロ「そうなんです。私が治める磯城の近くなんですよ。なぜかって? 大三輪神は、私の父上だからですよ。」

会議参加者「ええっ?!!」×多数

黒速の衝撃発言・・・。

八咫烏はどこまで関わってくるのか・・・。

次回に続く。

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