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JW30 天磐盾

【神武東征編】EP30 天磐盾


名草戸畔(なくさとべ)を討ち果たし、名草の地を平定した狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行。

ここで、博学の天種子命(あまのたね・のみこと)と味日命(うましひ・のみこと)が補足説明を始めた。

天種子(あまのたね)「和歌山県海南市のガイドブックによると、紀の川の河口に大蛇が流れ着いたので、人々は神の化身として頭部、腹部、脚部の三つに分けて、それぞれを神として祀ったという伝説が残ってるみたいですな。」

三つの神社

味日(うましひ)「それって、名草戸畔は大蛇だった・・・ってことですか?」

天種子(あまのたね)「いや、紀の川の河口に流れ着いたっちゅうことは、中(なか)つ国(くに)から来た者やったんやないかと・・・。上流まで遡れば、中つ国やろ?」

味日(うましひ)「中つ国から派遣されてきた人物の可能性があるってことですね。」

天種子(あまのたね)「その可能性は捨て切れんやろ。」

サノ「汝(いまし)らは、何を言っておる。そのようなことはどうでもいいことじゃ。大事なのは、名草戸畔を祀り、後世まで語り継ぐことぞ。」

ここで、次兄の稲飯命(いなひ・のみこと)と天道根命(あまのみちね・のみこと)(以下、ミチネ)が加わってきた。

稲飯(いなひ)「その通りっちゃ。わしらは、敵対した者も、ちゃんと顕彰し、神様として祀り、同じ家族として、仲間として扱うんや。そうして、国を一つにするんや。」

ミチネ「では、わしは日像鏡(ひがた・のかがみ)と日矛鏡(ひぼこ・のかがみ)を祀るための神社を建てまする。」

サノ「うむ。これからも鏡を祀り、守護してもらいたい。頼んだぞ! ミチネ!」

ミチネ「こ・・・これからもですか?」

ここで、三兄の三毛入野命(みけいりの・のみこと)(以下、ミケ)も加わってきた。

ミケ「その通りっ! 汝(いまし)はこのまま、この地に土着し、紀伊国造(きい・のくに・のみやつこ)の祖となるんやじ。」

ミチネ「えっ?! そ・・・そうなりまするか?」

ミケ「日前神宮(ひのくまじんぐう)と國懸神宮(くにかかすじんぐう)のこと。よろしく頼むっちゃ。」

日前神宮
國懸神宮

ミチネ「わ・・・分かりもうした。そういうことならば、子々孫々まで、守り続けてみせましょうぞ!」

稲飯(いなひ)「安心せよ。二千年後も、ミチネの家は、二つの神宮の宮司として勤めてるっちゃ。明治期には、男爵家にもなる名門やじ。二度ほど女系に入れ替わっちょるが、子々孫々という意味では間違っちょらん。」

ミチネ「安心致しました。これで、心置きなく、お別れができまする。」

サノ「そうか・・・。ミチネと比古麻(ひこま)とは、ここで別れねばならぬのじゃな。」

ミチネ「神宝を守護する以上、付いて行くことはできませぬゆえ・・・。これが、異国(とつくに)で言う、くらんくあっぷ、というものらしいですぞ。皆さん、お達者で!」

比古麻(ひこま)「別れが寂しいというより、もう少し登場したかったというのが本音ですが・・・。」

サノ「仕方なか。それぞれの務めがあるのじゃ。それでは、我らは再び船路を進もうぞ。」

それを聞いて、次兄の稲飯命(いなひ・のみこと)と三兄の三毛入野命(みけいりの・のみこと)が過敏に反応した。

稲飯(いなひ)「まだ船で進むんか?」

サノ「そのつもりにござりまするが・・・。」

ミケ「騙されたっちゃ!」

稲飯(いなひ)「なあ、サノ。もう陸路で良かち思うんやが・・・。」

サノ「奥深い山を徒歩(かち)で進むより、船の方が速いと思いまするが・・・。」

稲飯(いなひ)・ミケ「いやじゃあぁぁ!!」×2

こうして、サノたちは、兄たちの要望を無視し、船で次の目的地を目指した。

そして、狭野(さぬ)を越え、熊野(くまの)の神邑(みわ・のむら)に到着した。

狭野と神邑

ここで、小柄な剣根(つるぎね)が説明を始めた。

剣根(つるぎね)「狭野(さぬ)は、和歌山県(わかやまけん)新宮市(しんぐうし)の佐野(さの)のことにござりまする。」

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つづいて、サノの息子、手研耳命(たぎしみみ・のみこと)(以下、タギシ)が説明を始めた。

タギシ「神邑も新宮市の三輪崎(みわさき)と言われておりまする。」

佐野三輪崎
狭野だ

サノ「で・・・タギシよ。なして、我らは神邑まで来たのじゃ?」

タギシ「それは、父上が行くと申されたからにござりまする。」

サノ「それでは、説明になっておらぬではないかっ!」

ここで、剣根の息子、夜麻都俾(やまとべ)(以下、ヤマト)が加わった。

ヤマト「我が君、御安心くだされっ! 我が代わりに説明致しまする。」

サノ「よし、ヤマト! 任せたぞ!」

ヤマト「天磐盾(あまのいわたて)に登るためにござる。場所は、新宮市の神倉山(かみくらさん)と言われておりまする。」

神倉山
神倉山1
神倉山2

サノ「で・・・何のために登ったのじゃ?」

ヤマト「それは、我が君が登ると言ったから・・・。」

サノ「説明になっておらぬではないかっ!」

ミケ「台本には理由も何も書かれてないんやかい(だから)、誰にも答えられないっちゃ。それを知っているのは、サノだけっちゃ。」

サノ「じゃっどん、ロマンを奪ってはなりませぬ。」

稲飯(いなひ)「じゃあ、作者の見解だけでも説明するっちゃ。」

サノ「作者の見解?」

稲飯(いなひ)「作者は、周防(すおう)の竹島(たけしま)の時と同様、今後の進路を検討するために、山に登ったんやないかと考えちょるみたいやな。まあまあ、いい線いっちょるかもしれんな。」

タギシ「あくまで答えは言わぬのですか? 父上?」

サノ「人々からロマンを奪ってはならぬ!」

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