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新宮・片岡・岩本など賀茂別雷神社(上賀茂神社)境内の摂社末社を巡る(前篇)

賀茂かも別雷わけいかづち神社、通称上賀茂かみがも神社の本殿及び権殿の特別参拝を終えたあと、境内にある摂社末社をめぐる。

上賀茂神社は通称で、賀茂別雷神社が正式名称。通称のほうが通りが良いので本文では上賀茂神社と記す。

本殿および権殿の特別参拝を終えたのち、楼門を出て左手へ進むと緩やかな石段の先にあるのが新宮しんぐう神社。この日は門扉の前より参拝。

上賀茂神社境内の新宮神社

御祭神は高龗神たかおかみのかみ。先に訪れた貴船神社と同じ神。
貴船神社は江戸時代まで長く上賀茂神社の摂社でした。積雪や水害などにより貴船へ行けないときのために、境内に貴船の神を分霊のが始まりのようです。
新宮神社の左奥には大山津見神おおやまつみのかみを祀る山尾神社がある。門からではちょっとハッキリとは見えず。
何年前か新年の頃に参拝したときは本社の中門から入り内庭を抜けて新宮神社から出る一方通行参拝だったような、うろおぼえだが。

川尾神社

楼門と新宮神社の間、小川を背にして建つ小社が川尾神社。ご祭神は水神の罔象女神みつはのめのかみ。苔の生えた檜皮葺が素敵だ。
山の神を祀るのが山尾神社で、水神を祀るのが川尾神社。わかりやすくて嬉しい。地名のついた神社だと、そこは稲荷さんだか八幡さんだか天神さんだかわからない。神様にも御神徳とよばれる得手不得手があるから、神名が冠されているほうが分かりやすい。

ここから屋根のついた橋・片岡橋を渡ったところに鎮座しているのが片山御子かたやまみこ神社、いわゆる片岡社。

左手の片岡橋、正面が片山御子神社

片山御子神社は上賀茂神社の第一摂社。延喜式神名帳にも記載されている。ご祭神は本宮祭神の賀茂別雷大神の母である賀茂玉依姫命かもたまよりひめのみこと
【妄想】片山御子神社と称しているから本来は、賀茂別雷大神の御子神が祀られていたのではないかと思う。

片山御子神社(片岡社)の絵馬

ここの絵馬はわりと好きなデザインをしている。『源氏物語』の作者である紫式部は片岡社を参詣し和歌を詠んでいる。

 賀茂に詣で侍りけるに人のほととぎすなかなむと申しけるあけぼの
 片岡の梢おかしくみえ侍りければ  紫式部
ほととぎす声まつほどは片岡のもりのしづくに立ちやぬれまし

『新古今和歌集』巻第三 夏歌

「もりのしづく」は朝露かしら、訪れたのは「あけぼの」というから早朝である。そこでホトトギスの声を聞こうというのだから、風流とは眠たいものである。

【妄想】神社の案内版によるとこのホトトギスを「未来の結婚相手」としているようだ。神社としては古人の和歌を借りて猛烈に縁結びのご利益をアピールしたいのでしょうが、紫式部はそこまで思って詠んだだろうかといささかいぶかしく思われる。
それよりも、季節の到来を待ちわびる心というのは現代人にもある。初夏にはカツオ、秋にはサンマ、冬にはカキと、食べ物ばかりで申し訳ないが、古人も花や食べ物や鳴く鳥に季節の到来を愉しむだろう。それは時に他人よりも早く楽しみたいと思うものである。
朝っぱらからしずくに濡れながらホトトギスの声をまつなんて酔狂なことはそうゆう心境でもないとしないと思う。真相は知らず。
もしかすると、未来の男を「濡れて待つ」とか。成人映画じゃあるまいし。

さて、片岡社のちかく石段を少し上ったところに須波神社。
ご祭神は、阿須波神・波比祇神・生井神・福井神・綱長井神の五柱一座。
大阪にある坐摩神社と同じ神。

須波神社

境内を流れる小川には賀茂社の社紋である葵が彩られた風鈴が飾られていた。この日は暑かったから水辺の風鈴は目にも涼しげ。

上賀茂神社境内の風鈴

川沿いに進むと岩の上にたつ岩本神社がある。ご祭神は底筒男神・中筒男神・表筒男神。
上賀茂神社境内にある岩本社と橋本社は古くは和歌の神(住吉と玉津島)として崇められていたようで、岩本社は在原業平、橋本社は藤原実方とされていた。
『徒然草』(67段)にも記されている。
和歌の才はないけれども、最近和歌が気になってはいるので、桔梗之介も忘れずに参拝。
それと在原業平は惹かれる人物。実像よりも『伊勢物語』のむかしおとこの印象が強いかもしれないが。また江戸は下町に住んでいるので、言問橋、言問通り、業平橋とゆかりの名があるのも親近感のひとつか。
【妄想】だから東武鉄道が業平橋駅をとうきょうスカイツリー駅と改称したのには慙愧に堪えず、しかも東京をひらがなにしたのは痛恨の極みである。

岩本神社

閑話休題。岩本社の先にあるのが賀茂山口神社。
式内社でもある。ご祭神は御歳神。

賀茂山口神社

賀茂山口神社の先の高台に二葉稲荷神社がある。上賀茂神社の境内図には記されていないので、別の神社になるのだろうか。詳しくは知らず。
ただこの稲荷神社から上賀茂の社家町が望める。風致地区なのでビルなどがない。甍の波とはこうゆう風景かとたのしませてくれる。

二葉稲荷神社から社家町をのぞむ

また賀茂山口神社の近くには賀茂神社の紋となるフタバアオイが群生している。ちいさなハート形の葉を古人はなぜに重要視したのだろうか。

「葵〔あおい〕」は古く「あふひ」と読んだそうで、「ひ」は神霊を意味するので、「あふひ」は「神と逢う」意味になる。賀茂別雷神が降臨の際、葵を飾るように告げられたのにちなみ、賀茂社の神紋となった。
【妄想】え、神妙にうかがっていたが、それってダジャレ?

賀茂神社の社紋につかわれている二葉葵

ちょいと長くなってきたので、本日はここまで。次回は上賀茂神社境内巡拝の後編の予定。七月に参拝をしてもうすぐ一か月が来ようとしている。記憶が陽炎。

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