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「アバウト・タイム」日常的タイムトラベル、トライアル&エラーのすすめ


①「今日が人生最後の一日だったら何をする?」の答えを探す「タイムトラベル」

 「アバウトタイム」は、父親から代々受け継いだ「タイムトラベル」の能力を、21歳のティム(ドーナル・グリーソン)が使って、自分の恋愛の失敗や友人や家族の不幸な出来事を消そうと奮闘するラブコメディ。リチャード・カーティスの監督としての最後の作品。
 リチャード・カーティスは、インタビューの中で、この映画は「今日が人生最後の一日だったら何をする?」という友人との会話から生まれたと話していた。
 「タイムトラベル」ありきの企画ではなく、主人公がその答えを探すためのタイムトラベル。その企画の発想が面白いと思った。

②「タイムトラベル」はトライアル&エラーの象徴

  「タイムトラベル」の映画は腐るほどあるし、発想としてはありきたり。
 そこでCGなし「未来には行けない、行けるのは自分の過去だけ」等のルールを決めて、ローテクで、誰でもできそうな「タイムトラベル」
 タンスに入って、目をつぶり、拳を握り「行きたい過去を思い浮かべる」だけ。「目を開く」とそこは失敗した出来事が起こる前の世界。
 そこで主人公は失敗した出来事を何度か繰り返して、日常に戻ってくる。
 私からみれば、ティムは反則の手を使って自分の人生を完璧にしているわけだが、実際には過去に戻れないとしても「失敗は何度でもやり直せる事、トライアル&エラー(試行錯誤)こそが、本当の成功を生み出す秘訣だ」とこの映画は教えてくれる。 

③「タイムトラベル」トライアル&エラーからの「学び」と成長

 今の若い人は「失敗したくない、失敗が怖い」という事をよく聞く。
それで、教える側は「失敗させずに、いい所をほめてのばせ」と言われる。それも一つの方法ではあるが「ダメな所はダメ」「ダメ出し」しないと改善、改良しないまま作業を一方的に終わらせてしまう。
 トライアル&エラー「試行錯誤」を繰り返し、新しいものを生み出す発想が抜け落ちてしまう。
 映画製作の全ての作業は企画もシナリオも編集もブラッシュアップの繰り返し。そのために教師は効果的な「ダメ出し」をしなければならない。
 しかし昨今は「ダメ出しより、褒めて伸ばせ」と言われる。トライアル&エラー(試行錯誤)の要求がうまくできない。何かいえば「無理」と言って作業そのものを投げ出してしまう。
 これは、若い人たちだけの問題ではなく時代や社会が、日々、不寛容な社会になって、誰かに常に監視され、否定されそうな不安や恐怖がある。
 些細な失敗で厳しく責められたり、失敗者は自己責任として切り捨てられたりする社会全体の問題ではないかと思う。
 SNSから距離を置いている学生も少なくない。
 話を「アバウトタイム」に戻すと、ティムは「タイムトラベル」を繰り返す度に「自分の浅はかさ」「女性の気持ち」「周囲の人々」との関係を学ぶ。
 そして自分の失敗は何度でもやり直せるが、他者の不幸な出来事や事故、運命は変えられない事を知る。
 主人公ティムが、タイムトラベルで成功したかに見えるのはメアリー(レイチェル・マクアダムス)との関係だけだが彼女とは最初から結ばれる運命だったようにも思う。
 現実的には「タイムトラベル」不可能だし、運命も変わらない。ただ試行錯誤を繰り返す行動力強化され、未来への可能性確信へと変化する。

④「タイムトラベル」は、自らの「行動力」が「未来を変える」

 ティムは、映画の最後で「タイムトラベル」をやめ「今ある人生を2度目のように生きる」選択をする。
 ティムが成長し、自らの行動力が未来を変える事実感する事で、日々の失敗を消す「タイムトラベル」の必要がなくなったことを知る。
 そして現実には「過去に戻る事も、未来を知る事もできない」「今ここ」大切さを知る。

 最初のリチャード・カーティスの「今日が人生最後の一日だったら何をするか?」の答えは、「何をするかは人それぞれ、どう一日を生きるか?」問いだけが、観客の心の中に生まれる。
 それでも私はこれからも失敗を繰り返すだろう。そして失敗した時、何かやらかしてしまった時、自分だけの落ち着ける場所で、目をつぶり、拳を握って、過去に戻り、なぜ失敗したのか?を客観的に考察して、明日のやり直しの行動を想像する。
 「明日もう一度、○○してやり直せばいい、よしいける」
 これが私なりの「日常的タイムトラベル」
 「アバウトタイム」の主人公の「タイムトラベル」は私に「失敗」の自覚と次の「行動」を生み出す、未来への可能性を与えてくれた。

 私も過去の出来事をエッセイに書く時、過去にタイムトラベルしている。当時は気づかなかった周囲の人の感情に改めて気づく。
 自分の失敗や後悔がその後の人生に影響を与えた事も…。気づいた事を表現するだけで、自分の見方が広がったように思える。
 私はまだまだ「タイムトラベル」(トライアル&エラー)を繰り返し成長する必要があるようだ。

 これは「アバウト・タイム」イギリス公開時に「How Long Will I Love You」にのせて、リチャード・カーティス監督の「フォーウェディング」「ノッティングヒルの恋人」「ラブ・アクチュアリー」「アバウト・タイム」4作をまとめた公式動画です。

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