見出し画像

父になる。

私が高校生の時、父は天に召された。
「我が生涯に、一片の悔いなし」
と言って召されたかというと、きっとそうではないだろう。悔いだらけの人生だったかもしれない。もちろん、悔いなしっ!と逝ったかもしれないが。

少なくとも、それ以降母親は苦労した。我が家は男三兄弟、兄貴は就職していたが、弟はまだ中学生だった。私は高校を卒業間近で、就職も決まっていた。頭が悪く、進学の線がなかったことは、もしかしたら母親の負担を少しは減らせたのかもしれない。最初で最後の親孝行だ。以降の人生で、私は母親に多大な迷惑をかけることになるのだが、その話は今はいい。

そして現在。気付けば私は二児の父になっていた。
歳を取るにつれて一個ずつ増えていく肩書に父が追加されて九年になる。
父の事を思い出す。

私は父が好きだった。貧しい中でも大事に育ててもらった。父はなかなかの強面で、ガタイの良い男だった。たしか半分ゴリラだったと記憶している。となると、私にもゴリラの血が流れている事になるのだが、体毛が濃いのはきっとそういう事なのだろう。

そんな、語尾に「ウホッ」とか言いそうな父は、私が高校の時も〇〇チャンと呼んできた。多感な時期、友達の前でチャン付けで呼ばれるのは、いささか迷惑であった。
露骨な反抗期がなかった私は、嫌々ながらもチャン付けを受け入れていた。反抗するにも、やはり父は怖かったのだ。叩かれたこともあるし、鬼のような顔で怒るものですから、ゴリラちゃうんかいっ!鬼かいっ!とツッコまない訳にはいかない。

そんな鬼のような半分ゴリラは、突然逝った。もう、本当に突然。人って本当に突然いなくなる。しかもこの世からだ。隣町に行ったとかじゃない。それこそ死ぬまで行けない場所まで逝ってしまった。

男ってのは二十歳になったら父親と酒を呑むのではないのか?そんな話を聞いたことがあるのだが、私は誰と呑めばいい?
そんな思いの行き場はなくなった。

この話、どう締めればいいのか。締め方がわからない。どうせなら手紙でも書こうか。届かないと知ってるから書ける言葉もある。


お父さん、あなたの息子は父親になりました。まだまだ立派な父親ではありません。あなたの足元にも及ばないのでしょう。唯一あなたに勝てるところがあるとすれば、私はまだ生きています。あなたの孫が二十歳になるまで生きてみせるでしょう。そして酒を呑みます。悔しいでしょうか?悔しいなら会いに来てください。そして、父親とはどうすることなのかを教えてください。あなたにしか教えれない事があるはずです。
本当に会いに来たら、私は迷わず塩をまきますが。
それではお元気で。
お元気で、は違うか。南無。


ここまで読んで頂きありがとうございます。
なんか良い事でも書きたい気分だったのでしょう。命日でもないのにです。
手紙敬語だし。気持ち悪っ

改めまして、読んで頂きありがとうございます。

それでは、佐世保の隅っこからウバでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?