見出し画像

悲鳴を上げる教育現場

進まない学校の働き方改革

 
「学校は最も効率的な教育機関だ」という話を社会教育を担当されるある県で働いている先輩から聞いたことがあります。

「社会教育とは、「学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及びレクリエーシヨンの活動を含む。)」(社会教育法第2条)を指し、教育活動の一つとして捉えられます。」
「社会教育は、学校教育と異なり、人々の学習ニーズに即した幅広い学習内容をもっており、「個人の要望や社会の要請にこたえ」、「国及び地方公共団体によって奨励されなければならない」(教育基本法第12条第1項)とされています。
 また、社会教育は、多様な主体により、様々な場や機会で行われていますが、学習の拠点となる代表的な社会教育施設として、公民館、図書館、博物館、青少年教育施設などがあります。」

出展:新潟県HPよりhttps://www.pref.niigata.lg.jp/sec/syogaigakushu/1329685356780.html

 例えば、社会に取って必要な情報を国民(県民・市民等)に伝えようとする場合を考えてみましょう。

社会教育の場合は、
1)広報が必要です。
新聞等の広報媒体をとおして、住民(市民や県民)に伝える必要があります。予算がない場合は、市や県が持つ広報誌の枠(スペース)を活用することになります。
 「○○に関する講演会を実施します。
  場所:△△公民館
  期日:□月□日(□)です。お越しください」です。

でも、学校教育の場合は不要です。教育したい相手(児童・生徒)は、毎日学校へ通ってきます。

2)伝える(話をする)
多くの人を集めることは、非常に困難です。
なぜなら、
①興味がないことに人は時間を割いて集まってくれません。
 行政が知らせたいことと、住民が知りたいことが一致している必要があります。
②興味があっても、忙しく日程が合わない場合が多い。
 仕事を休んで参加してくれません。また、大切な休みを削っては、参加してくれません。

でも、学校でなら、在籍する全ての生徒に必要な内容を漏れなく、伝えることができます。学校は、生徒への教育内容を決めることができるからです。

教育委員会をとおして各学校にお願いすることが、最も効率的で効果的、かつ最も安上がりな方法だと言えるでしょう。

これらの理由から、多くの人が、学校の教育内容に加えて欲しいと殺到することになります。

たとえは、ざっと考えても次の様なものです。
いわゆる「○○教育」です。

○情報教育、○ICT教育、○著作権教育 ○ネットリテラシー教育 
○ネットモラル教育 ○プログラミング教育

○人権教育 ○規範意識育成教育 ○道徳教育 ○心の教育 ○障害者教育
○特別支援教育

性教育 ○性の多様性教育 ○LGBT教育 ○インクルーシブ教育 

○主権者教育 ○法教育 ○平和教育 ○消費者教育 ○金融教育
○税に関する教育(納税教育) 

○キャリア教育 ○起業家教育

○環境教育 ○自然体験教育

○安全教育 ○交通安全教育 ○防災教育 ○放射線に関する教育

○国際理解教育 ○外国語教育 ○多文化共生教育 
○持続可能な開発のための教育(ESD)

○ボランティア教育 ○福祉教育

○健康教育 ○食育教育 ○ワンヘルス教育 ○ガン教育
○薬物乱用防止教育

○博物館教育 ○動物愛護教育 ○図書館活用教育 ○郷土教育

○NIE教育(新聞を学校教育に取り入れる)

○女子教育 ○家庭教育 ○男女平等教育

どれも必要なものであることは否定できません。
でも、全てを、かつ漏れなく、学校で行う必要があるのでしょうか?

新しい○○教育が導入される度、学校では担当者が決められ、教育委員会の研修会が開催されます。
モデル実施案にしたがって、各学校の担当教員は、外部機関に所属する「講師」と連絡をとって、日程調整をします。そして、職員と生徒向けの研修会を計画し、実施します。
多くの場合、実施後のアンケートとその集計を実施し、主なものはコピーして当日の講師へ、感謝状を添えて送ることになります。

これにより、貴重な授業時間が削られます。クラスづくりの時間が削られます。児童・生徒一人一人とゆっくり接する時間が削られます。
採点やノートの点検やコメントを書く時間が削られます。

もっと、教科の授業を行いたい。クラスづくりの活動を行いたい。
そのための、準備の時間を確保したい。
でも、学校はますます忙しくなるばかりです。
○○教育が増えるごとに、・・・。

学校は日々、大切なことを落とさないように、かつ、必要なものの抜けがないように、教育することを迫られています。

子どもが登下校中に交通事故に遭うと、「交通安全指導はきちんとしているか?」
子どもが心ない発言をする度に、「人権教育は十分に行われているのか?」
などと、保護者や地域の方々から、苦情の電話がはいります。

新しい○○教育は、教育委員会の指導(=命令)で実施しなければならない。そして、すぐに成果が求められる。しかも、これまでの教育水準は落とせない。(全国統一テストの成績が下がれば、・・・。)

まるで、「曲芸」をやっているようなものです。
いわば、学校の先生は、大切な○○を一つも落とさずに「ジャグリング」をやっている曲芸師かもしれません。

少なくとも、○○教育を実施するか しないかは、学校現場の教員が決められるようにして欲しいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?