ええ、あなたへの。

ちょっぴり春めいてまいりました。お正月がまだそこら辺をうろついおりますので、どうにももう3月に入る実感がありません。ぼくは気が早い人間なので、何でも先取りしたがります。当然季節も例外ではございません。
春物のコートを着て、冬の甘く重たい香りとは打って変わって軽く爽やかな春の匂いを纏います。

ぼくはかなりの香水マニアでして、マニアと言うからにはもうプラトン哲学の狂気と言っても過言ではない程ですが、自分の使っている香水を誰にも教えたことがありません。それは友人にも恋人にも家族にすら、教えたことがありませんでした。

理由はとても簡単で、匂いから余計なバイアスがかかることを恐れていたからです。歯に衣着せぬ言い方をするのであれば、真似したくないし真似されたくなかったのです。香りとは厄介なもので、過去に誰かの印象が付いてしまった香りは良くも悪くも、次に会ったその人にそのバイアスがかかります。逆も然りなんてはばかられますが、ぼくの印象を誰かに与えてしまったり、ぼくを勝手に印象付けられるのも嫌だったので、当然周りの人間と被る匂いも避けました。

そんなぼくがひた隠しにしていた香水をふと教えてしまいました。特に理由はありませんでしたが、教えたって余計なバイアスがかからない程、ぼくに理解があると信頼できる人間だから教えたのだろうと今になって思います。

そんなことを考えていると、昔から人一倍天邪鬼で個性に悩んだ結果こんなにもひねくれた大人になってしまったぼくなので、ぼくの人間性なんてものは匂いひとつで変わってしまうのか、ぼくの匂いひとつで、よその誰かがぼくになれるようなものかと、そんな風に考えると、今まで隠してきたこのスタンス自体が自信のない自分の言い訳をしているようで急に恥ずかしくなってきました。

なんて肝っ玉の小さい薄っぺらな人間なんだ。笑止。

それからというもの、香水を秘密にすることをやめ、より自信を持つことのできる人間性を確立していこうではないかと思った26歳でした。

今週も読んでくれてありがとうございます。
ただやっぱりこれと言った大事なときと、好きな人と会うときはやっぱり秘密が欲しいですね。「秘すれば花なり。」

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