ナカツカサトモコ

神戸大学文学部出身。専攻は中国文学。 学生時に本屋でアルバイトをしていた折に、たまたま…

ナカツカサトモコ

神戸大学文学部出身。専攻は中国文学。 学生時に本屋でアルバイトをしていた折に、たまたま建築というジャンルと出会う。 中国貿易の専門商社に勤務後、建材販売の会社へ転職し今に至る。 古い日本の木造建築が好き。

マガジン

  • 古民家再生のこと

    家族所有の古民家を部分解体、改修、そして再生ワークショップに至るまでをまとめています。

  • 古建築さんぽ

    山と街をつなぐ場所、神戸のサロンhase65会員用に書いていた建築探訪の記事です。今年サロンページを終了したことによってお蔵入りになりましたので、こちらで公開していきます。

  • 蔵☆コレ

    田舎に必ずある蔵。そのデザインには意外と地域性があることに気づいてから、誰に見せるでもなく撮りためた「蔵顔」写真集です

最近の記事

古民家再生工事 ひとまず完了

いよいよ古民家再生工事も残すところあと少し。 今回は最後の仕上げ工事を中心に、ご紹介していきます。 木材の塗装工事外壁は杉の羽目板貼りで仕上げて頂いたのですが、杉の色そのままだと、余りにも新しすぎて落ち着きが出ないので、DIYで塗装をすることにしました。下の写真は1回目の塗装作業風景。 2回塗りなので、もう一度同じ色を重ねて塗ります。古民家の色調に合うように色を選んだので、見た目が少し落ち着きました。 屋根の下地や垂木なども新しく交換して頂いたので、塗装をしていないと新

    • 再生工事その後

      前回までの記事で修繕工事の内容を記録しましたので、今回はその後の進捗写真を載せていこうと思います。 ケラバ新設・壁下地組み 納屋との取り合いで、土壁がむき出しになった壁に板を貼るための下地組みと、ケラバ新設。下地板なども古く傷んでいる部分は交換をしてもらって、新たに屋根をやり直してもらいます。 また、窓がなくて真っ暗だった台所を少しでも明るくするため、一か所明り取り用の窓を作ってもらうことにしました。 室内から見るとこんな感じです。山が見えている枠の所に、窓を設置しても

      • 古建築さんぽvol.8 比叡山延暦寺

        先日、滋賀県坂本地区の山林管理をされている坂東林業さんをお訪ねしようとご連絡をしたところ、「折角の機会なので」と延暦寺をご案内頂くことに。幸運なことに、初めての延暦寺をご案内付で拝観させて頂きました。 Google mapで見る比叡山さて、タイトルの写真は航空写真で見た比叡山延暦寺周辺です。御覧の通り琵琶湖の西側・京都との県境に位置しており、周りは見渡す限り山。延暦寺が所有する山林の多くは人工林で、その7割を桧が占めるそうです。 つまり、延暦寺は昔から山林を経営し、山の木を

        • 古建築さんぽ vol.7 曳家岡本の仕事編

          築200年の茶室建築の曳家作業  先日、奈良市の東大寺近くで曳家作業を見学させて頂きました。今回曳家をするのは築200年の茶室。もともとは東大寺の僧侶の所有していた茶室だそうですが、建物の建っている土地の地盤が悪く、地盤改良をして基礎をやり直すために曳家を実施することになったそうです。 そもそも曳家とは? 普通建物の修復や移築の場合には、いったん部材を解体してやり直しますが、建築物をそのまま解体せずに基礎(建築が建っているベース)と切り離してその場で持ち上げたり、或いは少

        古民家再生工事 ひとまず完了

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          8本
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          9本
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        記事

          再生工事のはじまり その2

          前回の記事でどのような修繕工事をするのかを、ざっと書き出しましたが、おさらいの意味で再掲します。 ① トイレの新設工事 ② 解体納屋と屋根を共有していた箇所の修繕工事 ③ 雨漏り部分の修繕工事 ④ 外壁の一部新設工事 ⑤ 解体後外壁扱いとなる土壁への化粧工事 前回は①から③までを詳しく書きましたので、今回は④と⑤について。 外壁(一部)新設工事記事トップの写真、むかって右手にポカっと穴があいている所があります。ここはもともと納屋と母屋の通路になっていたので、建物の解体に

          再生工事のはじまり その2

          古建築さんぽvol.6 諏訪大社下社秋宮

          vol.5に続いて、同じく諏訪大社下社、今度は秋宮です。 秋宮の方は春宮よりも敷地も規模も大きく、鳥居もあった筈なのですが、写真を撮り忘れました。諏訪湖を望むひらけた高台にあって、全体的に春宮の敷地よりも日当たりが良いです。 春宮と同様に、階段を上るとまず神楽殿があります。 場所は違いますが、春宮と秋宮は建物の種類と配置はほぼ同じです。建物には彫刻が施してありますが、よりデザイン的抽象的で、春宮同様に素晴らしいものです。 そしてこちらが秋宮の幣拝殿、左右片拝殿。春宮と同

          古建築さんぽvol.6 諏訪大社下社秋宮

          古建築さんぽvol.5 諏訪大社下社春宮

          長野県は小諸市の方で個人的に古材調査の依頼があり、見に行った帰りに諏訪に立ち寄りました。 「諏訪大社」は上社本宮・前宮・下社春宮・秋宮とあわせて全部で4社あり、それぞれが諏訪湖の周りに点在しています。今回は、古材調査のために同行して頂いた大工さんの希望で、下社春宮と秋宮を訪ねました。 毎回鳥居をくぐるときというのはエンジンがかかりますが、今回はいつもと違って、「宮大工が見たい神社」ということで、いつもの倍速です(笑)。 鳥居をくぐって左手に大きな欅(ケヤキ)大木が出迎えて

          古建築さんぽvol.5 諏訪大社下社春宮

          再生工事のはじまり その1

          解体工事と片づけが終わったら、いよいよ再生工事が始まります。 予算がふんだんにあるわけでもなく、また住居として使うわけでもないので、最低限の修繕工事にとどめます。やってもらった大工工事は、以下の通りです。 ① トイレの新設工事 ② 解体納屋と屋根を共有していた箇所の修繕工事 ③ 雨漏り部分の修繕工事 ④ 外壁の一部新設工事 ⑤ 解体後外壁扱いとなる土壁への化粧工事 トイレの新設工事 この家が築何年経っているのか記録は残っていませんが、おおむね江戸時代後期ではないかと想像

          再生工事のはじまり その1

          古建築散歩vol.4 [檜皮」編

          檜皮(ひわだ)とはなにか?前回の古建築さんぽでご紹介した三田市大川瀬の住吉神社の境内林の中には、真っ赤な木肌のヒノキが3本ほど立っていました。 これは樹皮を剥いたあとの状態と書きましたが、ヒノキの木は生きたまま皮を剥いても枯れないため、昔から建物の屋根の材料として使われてきました。この、屋根材としてのヒノキの樹皮を「檜皮(ヒワダ)」といいます。今回はその檜皮の採集の様子をご紹介したいと思います。 檜皮の採集檜皮を剥くヒノキですが、ヒノキであればなんでも良いというわけではあ

          古建築散歩vol.4 [檜皮」編

          解体から再生へ

          躯体の解体竹小舞(土壁の下地)を構造材(柱や梁・桁など)から切り離したあとは、構造材自体をどんどん刻んで解体していきます。この工事は、あいにく見に行くことが出来なかったのですが、約2日で2棟の建物がバラバラに。 写真を見てもらうとわかるのですが、木材と竹と土以外の素材はほとんど見当たりません。ゴミになると感じたのは、プラスチック製の雨樋だけ。こうやってほぼ全て自然に還るものであっても、解体ゴミとして申請し、処分場で処分する必要がある事には、少し違和感を覚えます。 母屋の隣

          解体から再生へ

          古建築さんぽvol.3 大川瀬住吉神社

          大川瀬、それは知る人ぞ知る三田の奥地 「古建築」=「日本古来の伝統工法で建てられた建築物」と、私は勝手に 定義しておりますが、何だか神社本殿ばかりを紹介している気がするため、そろそろ違う建物も。 ということで、今回は兵庫県三田市にある住吉神社へ出かけましょう~! 三田市内で唯一、能舞台を備えた神社こちらの神社で特筆すべき特徴は、能舞台です。 しかもこちらでは、神様へ奉納する「神能」が現在も10年に1度行われておりまして、享保11年からずっと現役の能舞台(神社としては舞殿と

          古建築さんぽvol.3 大川瀬住吉神社

          解体工事開始

          いよいよ解体工事へ解体前の片づけが完了し、いよいよ解体工事の開始です。 今回解体するのは、写真左側の納屋、そして写真右手赤さび屋根の母屋の裏にある建物、合計2棟です。 鉄砲狭間みたいな窓は、納屋に付属のトイレ窓。 納屋の屋根に葺いてある瓦は本瓦で、この建物の古さを物語ってくれたのですが、残すだけの予算がなく、鬼瓦だけを残すことにしました。 解体する納屋から外はこんな風に見えました。 左のドアは母屋、右のドアが納屋の入り口です。 解体してしまったら、もう二度と見ることはない

          古建築さんぽvol.2 岩上神社

          岩上神社にたどりつくまで誰もいない神社やお寺を散策するのが好きです。 仕事で訪れた淡路島のとある小さな集落で、たまたま教えてもらった神社に行ってみました。前情報なく訪ねて歩くと、素晴らしいものに出会うこともあれば、がっかりする確率もまあまあ高く、その日の運試しみたいなところもあります。 タイトルの写真は神社の鳥居の前から、神社の方向を見たものです。 一応は手書きの看板がかかっており、それによると鳥居から神社までは、 約200m程度山を登るらしい。 神社へのアプローチは、時

          古建築さんぽvol.2 岩上神社

          古建築さんぽvol.1 六條八幡宮

          神戸人もしらない、千年以上の歴史ある氏神さま六條八幡宮へのアプローチは、タイトル画像の通り、水田に囲まれたのどかな風景です。鳥居をくぐって、一番最初に目にする建物は神社の場合は「拝殿」というものなのですが、ここでは、それよりも大きな存在感で目に入ってくるのがこちらの木。 「イチョウ」です。 木の大きさって比較するものがないとわかりにくいのですが、写真右にある手水舎から想像してもらうと、このイチョウの勢いがよくわかります。 この写真の左に普通は神社にないものが写っているので

          古建築さんぽvol.1 六條八幡宮

          古建築さんぽvol.0 動機

          木という材料から、木という生物へ私は、普段建築を作るための材料、いわゆる「建材」販売を生業としています。 建築という業界にいると、木はただ単なる材料の一つです。 わたしたちが目にするのは既に伐られ、製材され、製品になった完成形であることが多いので、そこからその木が実際に生きていたことを感じることは難しくなっています。 私も最初からこういうことを気にして仕事をしていたわけではありませんが、実際に山に入ったり、林業に携わる方や山の手入れをしている人たちから色々学ぶうちに、や

          古建築さんぽvol.0 動機