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全米NO.1ヒットを聴いただけで怒涛の3時間説教&教会送りになった話

高校時代、アメリカの高校に無事編入した私は、最初こそ英語がわからなかったものの、意外に簡単に現地のお友達ができました。

聴き手専門ですが、私が音楽好きだったことが大きかったと思います。
当時は全盛期からは程遠いとはいえ、今では考えられないほどのロック人気。ニルヴァーナなどのグランジを寮の部屋でガンガン聴いてました。

その音色?に誘われ、ノックしてきたのが鼻ピアスのゴシック系のK

普通の女子高生ならいきなり鼻&耳ピアスをチェーンでつないだうえにオドロオドロしいゴシックスタイルのあやしい女(失礼!)が訪ねてきたらお金渡しちゃいそうですが、ヘビメタ好きだった私は、お仲間だわ!とばかりに意気投合したのでした。

そしてルームメイトは白人とラテン系のハーフで見かけラッパーbutロックも好き。
日本人の目から見ると二人とも化粧しなくても大人っぽくて28歳くらいに見えましたが全員花の16歳スウィートシックスティーンの乙女です

こうして楽しいアメリカンハイスクールライフが始まったのでした。

私が通った高校はニューヨークのお隣のニュージャージー州の学生街に位置し、寮もあるクラシカルな私立校。

ほとんどの生徒たちはTheプレッピー!って感じの良家の子女風が多かったのですが、主張強めの個性派も同じくらい生息。
当然のごとく学校側はプレッピールックを推奨していたのに、
ジャケットさえ着てれば鼻ピアス&ゴシックルックでもラッパースタイルでも登校OKだったのが謎すぎます。

鼻ピアスの時点で「まじめな良家の子女像」から果てしなくかけ離れます。
それどころか、
「こんな高校ぶっつぶしてやるぜ!」的な「反逆」のメッセージがビシバシ伝わってくるのは偏見でしょうか。

日本なら間違いなく教育的指導が入る案件ですが、当時のアメリカはジャケット着用ですべて帳消しなる、まさにミステリーソーンでしたね。

まあ、当時も今と同じく銃乱射事件なんて日常茶飯事(!)でしたし、同じ寮の子が真夜中にLSD摂取の幻覚により絶叫&大暴れし、救急車2台とパトカー3台(!)駆けつけ、文字通り彼女の部屋のドアを突き破って捕獲&連行とかしていたので(しつこいようですが、学生街の良家の子女が集う私立校です!)、鼻ピアスぐらいかわいいものなのかもしれません。

そんな魑魅魍魎うず巻く環境にもかかわらず、私たちが危険分子扱いされるとは一体どういうことなのか。

それはうららかな春の日。
放課後、寮の部屋でだべりながら当時大ヒットしていた曲を流していた私たち。
確かに大音響だったので迷惑かけたのかもしれませんが、それは皆同じ。
大音響でごまかして、白昼堂々、怪しげなパーティなど開いていたわけでもありません。

「I wannna sex you up」byカラー・ミー・バッドを聴いてただけです。
和訳はご想像におまかせしますが、別に歌詞に共感したわけでも(今でも歌われると英語聞き取れないし)なく、この歌の世界観を賛美しているわけでもなく、メロディや楽しそうな雰囲気が好きだから聞いていただけです。

が、激しいノックの連打とともに彼女は乱入してきました。
彼女とは、当時の我が校の生徒指導教師。
「結婚まで男女交際禁止」と本気で生徒を啓蒙&指導していた超過激なクリスチャン。
(交際にオープンといわれるアメリカですが、こういう人も普通にたくさんいる両極端な国なのです)
「glee」のスー先生を100倍おっかなくした感じです。

そんな彼女からすると「I wanna sex you up」などという神の意思に背き、人類を堕落させる曲を神聖な校内(寮は学校内にあった)で大音響で流すなど言語道断の悪行。

私たち、こんななりですが、いかにもまじめなプレッピーなのに裏でマリワナ売りさばいてるような少女と違い、お酒もタバコもドラッグとも無縁のピュアな16歳なのに、はっきり言って冤罪です。

でも鼻ピアスのゴシックルックの白人、ラッパーのラテン&黒人ハーフ、メタリカのデビューアルバム「Kill 'Em All(皆殺し)」のTシャツ着たアジア人(私)たちは、まごうことなき犯罪者予備軍と思われたようです。

彼女の脳裏には、数年後ドラッグディーラーとしてヤクを売りさばく私達の姿が脳裏に浮かんだはず。

有無をも言わさず、私たちを説教部屋に連行しました。
そして怒涛のノンストップ3時間説教!

いかにこの曲が有害か、から始まり~~
あまりの早口で聞き取れず、すぐに意識が遠のき(笑)ほとんど覚えてません。
ただ「そんなに音楽聴きたかったらストライパー(クリスチャン・メタル・ バンド)を聴け」といわれたことは覚えてます。

もちろんバリバリのメタルファンだった私は反省などなにひとつせず、「I wannna sex you up」に影響受けて堕落する人なんかいるかと思ってました。
でも反省する振りしないと解放してくれないので、「ち、早く終わってよ!」と思いつつ、しおらしく俯く。

時間が経つほどに朦朧としていく意識の中、

「I wanna save you!」

という力強いお言葉。

「私はあなたたちを救いたいの! あなたたちはまだ若い。真人間になるには遅くないわ! 今ならやり直せる!」

とカルト教団の洗脳のごとくいわれ、護送車みたいなバンに乗せられました。

先生のルックス上(失礼)、このまま人里離れたところに連れ去られて始末されるんじゃ、と怯えました。

が、連れて行かれた先はなんと先生行きつけの教会!!!
そこで神父さんからのさらなる説教&あんたらが救われるにはジーザスしかない!とか断言され、塩?みたいの撒かれました、、、

そして毎週日曜のミサに1ヶ月参加することを強要されたのでした。
成長した今ならどのどの宗教の教えも心理的哲学的に納得しますし、人々を救うことができると理解しています。
でも当時の私は「まだエンタメ要素があるゴスペル教会のほうがよかった」など、敬意のかけらもないことを思ってました。

あれから○十年……まだ真人間にはなりきれておりません。

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