いぬやしきは素晴らしいですよ。

私は漫画が好きだ。
漫画家になるのを諦めたり、小説を書くようになって、漫画に対する距離の置き方が難しく感じているが、やはり好きなのは変わらないようだ。

いぬやしき、と言う漫画がある。
奥浩哉さんと言う漫画家が描いたものだ。
奥浩哉さんの作品と言えば、ペンネームは違うが、HENと言う漫画が私の世代では思い付く。その次がGANTZと言う漫画だった。HENは立ち読み程度で、GANTZはTUTAYAのレンタル漫画で途中まで読んだが、最後までは読まなかった。そして、いぬやしきがある。

何故、いぬやしきを読もうと思ったかと言うと、実写映画の宣伝を見たからだった。木梨憲武さんが俳優をしている。そして主演だ。とんねるずのコメディアンとしての印象が強い彼が映画に出る。しかもどうやらSF?らしい。それに興味を持った。

いぬやしきをまず、電子漫画で1巻だけ読んだ。その凄まじく素晴らしい、絵にひきこまれた。背景、機械の描写。何故、ここまで描けるの?何を使ってるの?と思う絵。ネットではドローンを使って撮影を行って漫画に使っている、とあった。それは頷けた。

ドローンを使って漫画を描く。何故、映画や映像じゃないのか、何故、漫画なのか。そこに奥浩哉さんの漫画家魂を感じる。漫画でなければいけない理由。物語描写に漫画を選ぶ理由。コマが生み出す素晴らしいマジック。それは漫画を好きな人間なら理解出来るものだと思う。漫画が生み出す人間の脳への作用。小説でも映画でも成し得ない効果。

凄まじい画力を使って描かれた奥浩哉さんの漫画で伝えたい事は何もその画力のひけらかしじゃない。そこにあるのは人間の心の動きに対しての感銘であったり、物語だから出来るエンターティメントである。

これを書いている私は実はいぬやしきを全部読んでいない。古本屋で2巻を買い、3巻から5巻を電子漫画で読んだ。全10巻の全部を読んでいない。実はこの時点で、実写映画をアマゾンプライムで観たのだ。

実写映画はぶっちぎりで思うのは佐藤健さんと言う俳優が素晴らしく魅力的だったと言う事だった。その次に木梨憲武さんの演技も素晴らしかったと言う事。そしてあの原作を2時間の映画に収める為の構成。そしてその次にSFXの素晴らしさがあると思う。

多分、残念な事にこの映画は高い評価は得てないだろう感覚がある。物語の収拾がちょっと足りないものがある気がする。でもそんな事なんか払拭する程、佐藤健の演技が逸脱していたし、SFXもかなり頑張っている。おそらくあのエンディングはいぬやしき2を作る事になった時の為の伏線だと思う。

私は映画を観終わって、原作の方も完読したいと思っている。物語の題材とか伝えたい事が唯一無二という訳ではない感じがあるが、エンターティメントとして優れすぎていると思う。単純に人間の心が面白いと思えるものだと思うのだ。それに理屈が言えるなら、誰だってエンターティメントが作れる。漫画、小説を少し書いた事のある私はそれを痛烈に思う。それはそう簡単な事ではないのだ。

私はマニアックな人間だと時々言われる。その私のドストライクのこの作品はきっと高い評価を受ける事は出来るが、じわじわとされるものな気がする。そんな勢いだと、娯楽作品が売れる事が難しいこの時代では目立たないのだ。

それでも映画を観終わって、興奮するこの気持ちを抑えられなくて、これを書いている。第一には奥浩哉さんと言う素晴らしい漫画家さんに対しての敬愛の念がある。その次に佐藤健さんと言う俳優へのミーハー的な愛が生まれたのもある。彼はNHKの朝ドラ、半分、青い、でもずいぶん楽しませてもらった。演技の事はよく分からないが、とても上手い俳優さんの一人だと思う。ルックスもとても良い。

じわりじわりとこのいぬやしきと言う作品が人々を楽しませ、息の長い作品になってくれる事を祈る。原作はもう完結してしまっているが、何も長期連載化するのが優れた作品の証拠では無いと思う。やはり漫画は素晴らしい。これに尽きる。

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