東京

夜の10時過ぎ
東京駅発の高速バスに乗った

車内は空席ばかりが目立つ
荷物はほとんどない
カバンの中には化粧ポーチと財布とタオルと一冊の文庫本
まるで逃避行のようだ

首都高からの夜景が見たくて
行き先もわからない高速バスにわたしは乗り込んだ

新宿という街では、品のないネオンに紛れて、作り物みたいな月が見える
わたしはその月が好きだ

肥満体型の人が
"東京の美味しい店ガイドブック"
を買っていくような正直さも愛おしい

愛を育むのは離れている時間だし、
自分を成長させられるのは一人の時間だ

わたしはこの街が好きだ
どうしようもなく愛おしいのだ

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