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Parallel Lives 平行人生 — 新宮 晋+レンゾ・ピアノ展/民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある/大友克洋全集『AKIRAセル画展』

《Documenting》20230809
Parallel Lives 平行人生 — 新宮 晋+レンゾ・ピアノ展
於:大阪中之島美術館

 新宮晋の30cm〜数メートルのモビールが大量に展示されていた。シンプルな幾何学形態の美しさもさることながら、わずかな風でそれが信じられないほど滑らかに動くのにびっくり。造形と物理学の止揚。
 レンゾ・ピアノの方は作例の写真とちょっとしたコメントのみで資料性がなく見どころにかけたが、架空の島「アトランティス島」の気宇壮大な建物群を収めたミニチュアは圧巻だった。

《Documenting》20230809
民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある
於:大阪中之島美術館

 会場入ってすぐのところに日本家屋の一室が再現されており、ところ狭しと民藝が並べられている。柳宗悦が1941年に行った展示を再現したインスタレーションとのことだが、まずこれを見た瞬間に萎えた。
 民藝を美術館で展示するということは、その民藝品が置かれていた環境や使用価値と切り離して美術として扱うということだ。なのに美術館の中にわざわざ生活空間を再現し、遠くから観客に眺めさせるというのは、倒錯以外のなにものでもないのではないか。茶器や食器、花瓶がぎゅうぎゅうに並べられたテーブルを見て、「普通に使いづらいやろ」と思ってしまった。
 一方、最後の方に展示されていた現在の職人たちのインタビューと民藝の作り方解説は面白かった。触ることの出来ない民藝品の展示よりも、こういう情報の方が興味深い。

《Documenting》20230816
大友克洋全集『AKIRAセル画展』
於:Mixalive TOKYO

 劇場アニメーション『AKIRA』のシーンの流れに沿ってセル画・原画を掲示する展覧会。総カット数2200、総セル数15万枚というこの大作の中のごく一部が展示されているのみだが、それでもこれだけの作画と着色を約半年でやったという当時のアニメ業界の熱気がびんびんに伝わってきた。
 ただもっともテンションが上ったのは、大友の手書きの指示が書き込まれた、金田らが通う学校の校長室の背景のコピーだったりする。「金ピカもっと渋く」とか「ガラスの感じ出す」、「木目しっかり(メールで…… ※以降、読み取れず)」などの文言から、色彩ひとつにまで大友がこだわっていたことがわかる。実際、赤をキーカラーにした本作のケバい色彩設計や、顔の輪郭ごと動くディズニーみたいなパクの作画は、アメコミや欧米のアニメーションを意識して大友が設定したものだ。これだけのセル画や原画を見れて基本的には満足なのだが、そうした背景情報に一歩踏み込んだキャプションがあればよかったのにと思う。
 ちなみに、コミックス版『AKIRA』に関しては『AKIRA CLUB』、劇場版に関しては『アキラ・アーカイヴ』というめちゃくちゃ面白い資料集が世に出ている。セル画や原画のもっと手前にあるこうした中間制作物には、表現の根幹となる思想や、アウトプットに至るまでの試行錯誤の跡がつまっている。こうした資料を駆使しながら、セルアニメ全盛期の技術とスタッフが揃った劇場版『AKIRA』の思想と方法論、さらには『AKIRA』前後の影響関係までを見据えたキュレーション感のある展示を見たいと強く思う。できれば氷川竜介や藤津亮太といった商業アニメの研究・批評を行なっているような人の手になるものを。


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