西中賢治

編集、批評/『アラザル』『ア美研』同人(撮影=川島小鳥)◆よかったら記事への「いいね」…

西中賢治

編集、批評/『アラザル』『ア美研』同人(撮影=川島小鳥)◆よかったら記事への「いいね」とアカウントのフォローをお願いします。◆日々の鑑賞メモはXにて【https://twitter.com/kenjinishinaka/

最近の記事

ウンゲツィーファ『動く物』2024

《Documenting20240419》 ウンゲツィーファ『動く物』2024 於:PARA  「ウンゲ演劇集 ふたりぼっちの星」という企画名で、新作『旅の支度』と2本同時上演。この『動く物』の初演は2016年で、再演時にリライトしたものをベースにすでに何度か上演している劇団の代表作だという。私は初見。  舞台は若いカップルが同棲するワンルーム。「毎日休みみたいなもん」で暇を持て余している男と、仕事で疲れ切っている女の仲は、かなりギスギスしている。部屋の一角にはおがくずの

    • ルサンチカ 野外公演『更地』

      《Documenting20240325》 ルサンチカ 野外公演『更地』 於:都立戸山公園  新宿区の戸山公園にて、太田省吾の戯曲『更地』(1992年初演)を上演。このあたりは学生時代によく散策したが、かつては尾張徳川家の下屋敷が、戦前・戦中には陸軍戸山学校が置かれていた場所である。園内は人工的な地形の中に史跡が点在する箱庭的空間で、歩いていると時空が歪むようなトリップ感を味わえた。  中でも今回の公演の舞台になった野外演奏場跡は、陸軍戸山学校軍楽隊時代の芥川也寸志や團伊

      • THE COPY TRAVELERS「THE COPY TRAVELERSのトッピングシャワー」

        《Documenting20240225》 THE COPY TRAVELERS 「THE COPY TRAVELERSのトッピングシャワー」 於:東葛西1-11-6-A倉庫  THE COPY TRAVELERS(以下コピトラ)に関しては、2019年のMOTアニュアルなどのグループ展で何度か見ていたが、個展を見るのは初めて。今回の展示は、昨年12月に青森の八戸で見た山車の制作現場が発想源になっているという(https://padograph.com/ja/events/1

        • 中平卓馬 火―氾濫

          《Documenting20240209》 『中平卓馬 火―氾濫』 於:東京国立近代美術館  中平卓馬の写真の歴史を、それが掲載された雑誌や個展の展示再現を軸に見せる回顧展。独立した一点のプリントを並べて見せるのではなく、発表された媒体、環境を含めて見せようというところがまずもって素晴らしかった。雑誌『現代の眼』編集者として出発した中平にとって、写真とはそれについて言葉で考え、撮ったものをどのように見せるかという流通経路まで含めた芸術形式であり、また私を含む世界という現象そ

        ウンゲツィーファ『動く物』2024

          神田伯山 新春連続読み『畔倉重四郎』 2024

          《Documenting20240110》 神田伯山 新春連続読み『畔倉重四郎』 2024 於:イイノホール(2024年1月5日〜10日上演)  確か2021年以来の生伯山。連続読みとなると神田松之丞時代に行なわれた2019年の『慶安太平記』以来で、完全抽選の今回もあまり期待はしていなかったが当選した。結局、前夜祭と連続読み初日の一〜四話を干してしまったが、あいかわらず超人的な言語能力を体感できてよかった。  現在公式YouTubeチャンネルに上がっている2020年の『畔倉

          神田伯山 新春連続読み『畔倉重四郎』 2024

          岡﨑乾二郎「頭のうえを何かが」

          《Documenting20231221》 岡﨑乾二郎「頭のうえを何かが」 於:南天子画廊  アラザル同人の前田礼一郎と銀座ギャラリー巡り。いわゆる「ア美研」と我々が呼んでいる会。お目当ては南天子画廊で開催中の岡崎乾二郎の個展で、2021年10月に重篤な脳梗塞によって倒れた岡崎が入院中に描いていたドローイングと、最近作った陶土の立体などが展示されていた。  ドローイングに描かれているのは「ポンチ絵」シリーズを思わせる漫画的な具象画(このような絵を岡崎は「絵画の紋切り型」と表

          岡﨑乾二郎「頭のうえを何かが」

          折坂悠太 らいど 2023/小栗康平『眠る男』

          《Documenting》20230929 折坂悠太 らいど 2023 於:昭和女子大学 人見記念講堂  2023年の折坂悠太ツアー最終公演。音楽活動10周年を記念した今回のツアーは、ここ数年取り組んできたバンド編成の「重奏」ではなく、ソロの弾き語りによる「独奏」スタイル。  人見記念講堂の広いステージの中央に、シェードランプ、椅子、衝立、ローテーブル、そしてアコースティックギターが置かれている。折坂が時折行なうインスタライブのように、彼の部屋から発信しているかのような趣

          折坂悠太 らいど 2023/小栗康平『眠る男』

          豊岡演劇祭2023 安住の地『かいころく』/市原佐都子×岡田利規×相馬千秋×平田オリザ『国境を超えた創造性』

          《Documenting》20230918 豊岡演劇祭2023 安住の地『かいころく』 於:日本基督教団 但馬日高伝道所 (2023年9月18日11時30分の回) 市原佐都子×岡田利規×相馬千秋×平田オリザ 『国境を超えた創造性』 於:豊岡市民プラザ 交流サロン (2023年9月18日13時30分〜)  私の豊岡最終日は安住の地『かいころく』。関西で活動する劇団/アーティストグループの安住の地は、なかなか東京で観ることができないが、今年5月に東京のせんがわ劇場で『生きてるみ

          豊岡演劇祭2023 安住の地『かいころく』/市原佐都子×岡田利規×相馬千秋×平田オリザ『国境を超えた創造性』

          豊岡演劇祭2023 福井裕孝『インテリア』/y/n『カミングアウトレッスン』

          《Documenting》20230917 豊岡演劇祭2023 福井裕孝『インテリア』 於:豊岡市民会館 ギャラリー (2023年9月17日12時30分の回) y/n『カミングアウトレッスン』 於:芸術文化観光専門職大学 C311教室 (2023年9月17日15時の回)  豊岡演劇祭参加2日目。まずは福井裕孝の構成・演出による『インテリア』。市民会館の多目的室のような一室の中に、白テープで区切られた30畳ほどの空間が作られている。この空間はマンションかアパートの隣り合った2

          豊岡演劇祭2023 福井裕孝『インテリア』/y/n『カミングアウトレッスン』

          豊岡演劇祭2023 ぱぷりか『柔らかく揺れる』/Q『弱法師』

          《Documenting》20230916 豊岡演劇祭2023 ぱぷりか『柔らかく揺れる』 於:豊岡市民プラザ (2023年9月16日11時の回) Q『弱法師』 於:城崎国際アートセンター (2023年9月16日14時の回)  2019年からスタートした豊岡演劇祭に初参加。豊岡は「東京からもっとも時間のかかる土地」と言われているそうで、前日の金曜日に電車で6時間かけて前のり。  最初に観劇したのはぱぷりか『柔らかく揺れる』。ノゾエ征爾のはえぎわや青年団の無鄰館で学んだという

          豊岡演劇祭2023 ぱぷりか『柔らかく揺れる』/Q『弱法師』

          ウンゲツィーファ『リビング・ダイニング・キッチン』

          《Documenting》20230914 ウンゲツィーファ『リビング・ダイニング・キッチン』 於:アトリエ春風舎 (2023年9月14日・20時の回を観覧)  作・演出を務める本橋龍の育児経験をもとにした作品だという。とてもいい芝居だと思った。  アクティングスペースにはごく一般的なLDKの部屋が再現されており、キッチンやソファやテーブルといった家具の他に、子供の玩具やさまざまな植物がそこかしこに置かれている。ここで暮らす夫婦の赤ん坊は、甲高い泣き声を発するBlueto

          ウンゲツィーファ『リビング・ダイニング・キッチン』

          Parallel Lives 平行人生 — 新宮 晋+レンゾ・ピアノ展/民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある/大友克洋全集『AKIRAセル画展』

          《Documenting》20230809 Parallel Lives 平行人生 — 新宮 晋+レンゾ・ピアノ展 於:大阪中之島美術館  新宮晋の30cm〜数メートルのモビールが大量に展示されていた。シンプルな幾何学形態の美しさもさることながら、わずかな風でそれが信じられないほど滑らかに動くのにびっくり。造形と物理学の止揚。  レンゾ・ピアノの方は作例の写真とちょっとしたコメントのみで資料性がなく見どころにかけたが、架空の島「アトランティス島」の気宇壮大な建物群を収めたミ

          Parallel Lives 平行人生 — 新宮 晋+レンゾ・ピアノ展/民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある/大友克洋全集『AKIRAセル画展』

          お布団「ザ・キャラクタリスティックス/シンダー・オブ・プロメテウス」

          《Documenting》20230721 お布団「ザ・キャラクタリスティックス/シンダー・オブ・プロメテウス」@アトリエ春風舎(7月21日14時の回)  私はお布団の公演を1本か2本しか観たことがない上に、演劇を十全に味わう知識も経験値もないので、たぶん面白ポイントを取りこぼしている部分もあるだろう。しかし知人がこぞって絶賛しているだけに、批判的な意見もどうしても記録しておきたくなった。  まず、本作はSFの枠組みを使って現実の問題を比喩的に語り直しているだけで、問題その

          お布団「ザ・キャラクタリスティックス/シンダー・オブ・プロメテウス」

          『君たちはどう生きるか』メモ ※ネタバレ注意

          《Documenting》20230714 『君たちはどう生きるか』メモ ※ネタバレ注意。未見の方は読まない方がいいです。 ●ストーリー ・塔の中は一族の者それぞれの内面世界。大叔父は石(知識/自己完結した論理の象徴)と契約して積み木を積んでいる。義母も息子とそりが合わず産場にこもろうとする。 ・登場時の主人公は頭を割って嘘をつくような「弱さ」があった。塔の中で成長し(インコ=敵=肥大化した自我をいなして)、アオサギと友達になり、義母を受け入れる。 ・だが成長のきっかけが

          『君たちはどう生きるか』メモ ※ネタバレ注意

          青年団第94回公演『ソウル市民』

          《Day Critique》163 青年団第94回公演 『ソウル市民』 作・演出:平田オリザ @こまばアゴラ劇場(2023年4月15日15時の回)  『ソウル市民』は、1994年初演の『東京ノート』より先立つこと5年、1989年に初演された青年団の初期代表作。作・演出の平田オリザは、今回の当日パンフに以下のような文章を寄せている。 「『ソウル市民』は1989年に初演された作品です。当時、私たちは、いまの「現代口語演劇」の骨格となる方法論を発見し、しかしそれがどんな意味を

          青年団第94回公演『ソウル市民』

          ホー・ウィディン『青春弑恋』 / パリ・オペラ座バレエ・シネマ「プレイ」

          《Day Critique》161 ホー・ウィディン 『青春弑恋』 (2021年/台湾)  エドワード・ヤンの『恐怖分子』と同じ『Terrorizers』という英題が冠された台湾映画。確かに複数の登場人物の運命が交差するプロットや、白昼夢的犯罪といった要素が共通しているし、少女がいたずら電話をかけるシーンなども明らかに『恐怖分子』へのオマージュだろう。が、本作の語り口はかなりサスペンスに振り切っている。  ストーリーは、ゲーム好きの青年が通り魔事件を起こすに至った過程を

          ホー・ウィディン『青春弑恋』 / パリ・オペラ座バレエ・シネマ「プレイ」