大企業はもたない。

10年以上前から言ってる。

理由は2つある。

第一に、「Touch（タッチ、接触）」がないから。社外のお客様とのダイレクトなタッチがない、そしてそれ以上に深刻なのは、社内でもタッチがない。コロナの3年で、テレワークがお墨付きされたから余計、その傾向がある。社内旅行ない、社内運動会ない。タッチがない。

組織が機能分化し過ぎ、となりの部署が何やってるのか、わからないし、知ろうともしない。

第二に、「Strategy（戦略）」がない。戦略を立てる部門はある。でもそれは、「宿題のための宿題」みたいなもので、「部門のTo Do」になってしまっている。処理。それじゃダメで、戦略というのは全体思考が要る。全体を俯瞰して観る視座やね。

第一で述べたように、極端な機能分化のおかげで、社員の仕事は「分析（Analysis、アナリシス）」ばかりになっている。分析偏重だから、スキルがもてはやされるし、ビズリーチ始めとする転職ビジネスが花ざかり。

ところが戦略は「統合（Synthesis、シンセシス）」なのだ。

エンタテイメントの世界は、世の中の流れを敏感に察知し、先行する。

ミュージックステーションにBE:FIRSTが初出場するというので、観た。この番組はジャニーズの圧力で、似たようなボーイズグループはこれまで出られなかったらしい（知らんけど）。ところがこうなったので、BE:FIRSTは出場できた。

ジャニーズや乃木坂とかは大企業社員と言える。
一方、BE:FIRSTは新興ベンチャー社員だ。創業して、実質2年の若い会社。

パフォーマンスを観た。乃木坂46は口パクじゃないの？　というくらいの品質。「わたしたち、歌やダンスはヘタだけど、可愛いし若いからおおめに見てね」昭和から変わらぬアイドル価値観。はっきり言って、古い。名古屋で行った10年前から変わらない高いだけの和食店と同じだ。これには賛否両論あるだろうけど。

Sexy Zoneはまあ頑張ってるかなという品質。

差が出たのはディズニー・スペシャル。

『アラジン』「フレンド・ライク・ミー」をカバーしたのだが、コレオグラフィ（ダンス振り付け）も歌も、全体の演出も、素晴らしい！

SOTAは昔、この曲のバックダンサーをしていたらしく、その映像も観た。だから思い入れも一入（ひとしお）だろう。SOTAが振り付けつけたはず。そして全員で考え、磨いていった。彼らのことだ、映画『アラジン』も観ただろう。

BE:FIRSTオリジナル曲かと思うくらいのパフォーマンスだった。

BE:FIRSTはベンチャー社員らしく、自分たちで曲を総合的に理解し、咀嚼し、表現した。シンセシス、戦略を立てた。

次はSexy Zone、『星に願いを』（ピノキオ）を歌った。ダンスは「世界的ダンサー」と言われるTAKAHIRO一人がパフォーマンス。観ているこっちは、「ん？　あの躍ってる人、誰？」。Sexy Zoneとダンサーに何ら共通の文脈がない。唐突感大きい。

『星に願いを』は難しい楽曲だ。それを歌だけで聴かせるなんてのは、ジャニーズの庇護のもと、ぬくぬく育った彼らにはどだい無理な話であり、これを演出担当したジャニーズ・スタッフに責任がある。

後に続くミュージシャンたちの素晴らしいパフォーマンスがより際立つ、引き立て役になってしまった大変気の毒な時間だった。

尾上松也。すごかった。この曲、メロディがあるのかないのかわかりづらい難曲。さすが歌舞伎。広い劇場すみずみまで響かせる仕事やっているからこその声。

歌舞伎は「歌舞伎」という大企業があるわけではない。松竹はあくまで興行であり、基本、一人ひとりの役者（個人自営業者）が創り出す総合芸術である。つまり、老舗の個人自営業者コミュニティ・ブランドといえる。コロナで舞台ができなくなったとき、中村勘九郎（六代目）が「失業者でございます」と言っていた。

Sexy Zoneのメンバーが悪いわけではない。彼ら自身が「パフォーマンスを考える」発想になってないだけで。機能分化され過ぎた大企業の犠牲者なのだ。

その意味で、ここのところの各スポンサーの「ジャニーズ下ろし」は、「やはり大企業だなあ」。これまでCMスポンサーとして、彼らにはお世話になってきたわけだし、起用には何らかの発信戦略の裏付けがあったはずだ。

それがこうなったからといって一斉に「降ろす」というのは、発信戦略の無さを自ら言っているのと同じだし、コンプライアンス部門と相談したところで、みんなアタマに浮かべてるのは上司の顔であり、ダイレクトにふだんタッチしているお客さんは皆無だから、顔の浮かびようがない。

フリーランスの皆さん、中小企業の皆さん、チャンスです。

鍵は、T&S、タッチ＆ストラテジーです。仕事をワクワク楽しいものにし、みんなで互いにタッチし、お客さんとタッチし、総合芸術にしましょう。

参考図書？　本なんか読まず、このドラマがいいよ。孔明は素晴らしい戦略家です。