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冒険してみること

つい最近、アイデアソンを無事走りきることができた。
地元の商業施設が若者に愛されるにはどうすればよいかを考えるイベント。
地元の見ず知らずの大学生が集まって、一緒にアイデアを考えるイベント。
実験室にこもりっきりの僕が、初めて大学を飛び出して成し遂げたイベントだった。

まず初めに、なぜこのイベントに参加したのか。
単純に、ワクワクしたからだ。

大学院生活。大学生の時とはモチベーションが違う。
大学にこもりっきりで仲のいい同期もいない中、僕はちょいと億劫な気持ちだった。
別に研究が嫌いなわけではないし、後輩にも恵まれている。
就活もしなくちゃいけない。
それでも、どこか退屈だったのだ。
有り余る情熱が適所に当てはまっていない感じ。
「やらなくてはいけない」が、「やりたい」と結びついていない感じ。
僕の経験上、これが批判とか皮肉につながって、結局自分のことを嫌いになるそんな感じ。
とりあえず、そんな気持ちから脱却したかった。

そんな中Instagramでちらっと目についたイベント。
専門分野でもなければ、直接就活に結びつくわけでもない。
けれども、なぜかワクワクする。
ワクワクするなら行くしかない。
修論と就活を差し置いて、僕は外の世界に飛び込んだ。

そんなイベント。アイデアソン。
「アイデア」と「マラソン」を組み合わせた造語。
商業施設が若者に愛されるアイデアを生み出し、ブラッシュアップを繰り返していくイベント。
最高に磨きをかけたアイデアを発表するまでがゴール。
短いようで、やることはたくさん。走りきらなければいけない。

イベント初日。
周りの人たちはキラキラしていた。かっこいい人たちだらけだった。
陽の方々が大勢いると、僕の陰がものすごく強まるかのように感じる。
夢を持って突き進む人。成功していてカリスマ性のある人。いつもポジティブで周りを引き込む人。
嫉妬したし、悔しかった。
自分にはそんな能力はない。キラキラしていて憧れてもらえるような人でもない。
はたまた億劫になっている自分がいた。

けれども、スタート地点に立った僕は走らなければいけない。
少しずつ加速してゆく。

イベントが進むにつれて、アイデアが徐々に形になっていく。
活躍されている講師の方々に学ぶ。チームでアイデアを出し合う。
しかし、僕には奇抜で人の心を揺さぶるようなアイデアは出てこない。

「俺だめだなあ」「こういう場に立つ人間じゃないな」

冒険したのに何も変わらない。何なら現実を突きつけられた。
夢を見る理想主義者の僕には、こういうのが一番応える。

それでも、走り続ける。逃げるのは嫌いだから。

負の感情が湧き出ても走り続ける。
そうすると見えてくることもたくさんある。
キラキラした人たちの意見や会話を聞いていると、自分の意見がおのずとあふれてくることに。
感情がものすごく揺さぶられ、悔しさや嫉妬以外にも楽しいという感情が芽生えることに。
自分がチームのエンジンみたいな存在だなと気付かされることに。

その中で少しずつ気が付いていく。
ああ、これが自分らしさなんだな。

自分単体では魅力的な人ではないかもしれない。
けれども、周りの環境や人次第で化けることができる。

チームのエンジンにもなれるし、メンバーを支える人にもなれる。
そこに「やりがい」を感じる。
生きていることに「やりがい」を感じる。

高校の部活。高校三年次の室長。
こんな感じだったな。やっぱこれだよな。
過去の青春がよみがえる感じ。
青春っていうのは「心の若さ」
老けた大学生活が一気に若返った気がする。

ゴールが近づくごとに、僕の億劫さはどこかへ消えた。
なんなら、もう少し走っていたい。そんな風に思っていた。

最終日。発表の時。
アイデアに磨きをかけて、いいものができたなとしみじみとする。
チームでゴールにたどり着いたことに達成感があった。

けれども、それでは足りない。
最高の評価が欲しかった。
1番が欲しかった。

商業施設内の350インチ以上のスクリーンで発表することになる。
メンバーはめちゃくちゃ緊張しているようだった。

もちろん、僕も緊張している。
けれど、こんなでかいスクリーンで、会議室ではない空間で発表することにワクワクしていた。
人生でこんな体験一度きりのはず。やるだけじゃ物足りない。最高な発表にしたい。

他のチームが素晴らしい発表をしていく。
僕らの発表の時が来た。なんなら大トリ。

チーム名が呼ばれる前に僕は立っていた。
スクリーンの前に一番乗りで、メンバー一人一人にグータッチをしていた。
最後だぜ、やりきろう。みたいな感じ。
不思議だった。けれど、僕らしかった。

発表はめちゃくちゃよかった。1番の自信があった。やり遂げた。
メンバーのみんなもキラキラしていて、楽しかった。
一瞬だけ、会場が僕らの色で染まっていた気がする。

発表の時。
惜しくも僕らのアイデアは選ばれなかった。

めちゃ悔しかった。顔には出さなかったけど。
大学生活で一番悔しかったかもしれない。

感情が目まぐるしく刺激されたこの時間。
発表の後、どっと疲れた。

イベントの最後。他チームのメンバーと振り返り。
他のチームのアイデアが良かったこと。
他のチーム活動の様子を聞けたこと。
このイベントを通した気づきや心情。
終わりが近づくごとに寂しさもあふれてくる。

そんな中
「発表の時グータッチしているの、めっちゃよかったです」
「セールスマンみたいでかっこよかったっす」
そんな評価を頂いてこそばゆかった。
僕にはそれしかできないし、時と場合で波もありますよー。みたいに。

イベントが終わってちょっとばかしの打ち上げ。
数少ない大学の友人も参加していて、そいつは顔が赤くなるほど酔っぱらっていた。
彼もこのイベントに参加して楽しかったらしい。それも良かった。

お別れの後、路面電車を使わずに友人と歩いて帰った。
酔いを醒まそうという口実だったけど。僕はもう少し余韻に浸りたかった。

商業施設の周りはイルミネーションが灯っている。
肌寒く、クリスマスや年越しが近づいている。
今までだったら、皮肉な感じで「今年も彼女無しか」なんて言っていたけれど。
僕は素直な気持ちで「きれいだな」と感じていた。

大学に残りの実験が待っている。
友人を無事送り届け、実験室に赴く。

いつもと変わらない日常が待っている。
就職活動という現実が待っている。

それでも僕のエンジンは止まることはない。

夢と希望を持ちつつ、億劫になることなく走り続ける。

僕の人生を煌びやかに完走する。
思考は現実化する。それを体現する。

いい冒険ができた。そんなお話。

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