20231129

 タイカワイティティ監督の映画『ジョジョ・ラビット』を観た。第二次大戦末期のドイツでナチスの思想に毒された少年ジョジョが少年兵としてヒトラーユーゲントの合宿に出向くが、うさぎ一匹も殺せず〝ジョジョ・ラビット〟と馬鹿にされる。イタリアで任務に就いていると聞かされている父親はヒトラーのような出で立ちで彼のイマジナリーフレンドとしてナチスの思想を囃し立てる。訓練中に手りゅう弾で自爆し顔に傷を負ったジョジョは退院後にクレンツェンドルフ大尉のもとで雑用係として働く。ジョジョは母親ロジーと二人で暮らす家の屋根裏部屋にユダヤ人の少女が匿われているのを偶然発見し、ユダヤ人に対する偏見を改めていく。しかし、徐々にドイツは敗戦の色濃く街にも戦火が広がる。様々な角度から描かれてきたナチス政権下のドイツとホロコーストだが、ここでは兵としてまともに動けないジョジョをはじめ、片目の視力を失い、前線から外れたクレンツェンドルフ大尉など正史から外れたような人物たちにフォーカスしており、戦時下でありながらどこかゆるやかな雰囲気を醸し出している。ジョジョの親友ヨーキの癒しキャラが素晴らしい。それでも中盤の親衛隊による家宅捜査で訪れる緊張感、後半には街は破壊され、戦争の不条理がしっかりとドラスティックに演出される。音楽も効果的に使われていて印象深かった。

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