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ジャック・リヴェット『メリー・ゴー・ラウンド』遺産相続、廃墟探索、リヴェット流ゲーム

リヴェットの構想していた"Scènes de la vie parallèle"という計画が二つ(『デュエル』『ノロワ』)で頓挫した後に製作された作品。同年の『北の橋』ではオジエ親子がパリを双六に見立てて冒険するIngressみたいなゲーム映画だったが、本作品も似た構造を持っている。エリザベス・ホフマンによってパリに呼び出された元カレのベン・フィリップスと妹のレオ・ホフマンだったが、待ち合わせのホテルには誰も現れず、初対面の二人は互いに不信感を募らせながら、エリザベスの居場所を探し始める。彼女は意外にもすぐに現れ、二人を彼女の(そしてレオの)実家へと導く。かなりの金持ちだった彼女たちの父親デヴィッドは飛行機事故で亡くなったはずなのだが、実は生きていて、エリザベスに渡った遺産を狙っていたのだ。彼女はすぐに誘拐されてしまい、彼女の残した暗号を元に遺産を手に入れようとゲームを始める。しかし、リヴェットなので緩急の差が激しい。探しに行った廃墟でイチャつきながら豪華なディナーを作るなど、不可思議なシーンも多い。

本筋とは別に二つの映像が随所に挿入される。一つはサックスとコントラバスをフリーで演奏する二人の奏者の映像で、場面転換などに使用される。彼らの音楽はそのまま劇伴として本筋でも使用されているが、音響が微妙なので演者の英語に丸かぶりで内容を消してしまっている(なんかリヴェットなので許せる)。そして、もう一つは Hermine Karagheuz 演じる女が森の中でベンを追いかけ回す映像だ。レオを演じるマリア・シュナイダーが撮影中に降板したらしく、彼女の衣装を着た Hermine Karagheuz が彼女の代わりを演じているらしいのだが、猟犬や中世の騎士が登場したり、『砂の女』ばり蟻地獄が登場するなど脈絡がない分とても不気味。

遂にはレオ、ベン、エリザベス、死んだはずの父親デヴィッドもどき、弁護士、弁護士助手、ベンの妹(?)シャーリーなどが様々な陣営となって陰謀を張り巡らせ、遺産を手に入れようと躍起になっていることに気付かされる。前半のボケーッとした雰囲気は犯罪映画へと急転換し、可愛い子猫とちょこまか動くデヴィッドもどきなど新キャラによる目玉シーンが意味もなく挿入され、リヴェット流ゲーム映画として混沌を極めていく。そして迎える結末は、『北の橋』と同じような展開ながら悲惨さが増している。レオとベンが空手の練習を始めてくれたらそれで良かったのに…

・作品データ

原題:Merry-Go-Round
上映時間:160分
監督:Jacques Rivette
製作:1981年(フランス)

・評価:90点

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