羅針盤を買う ~俺氏、紙の辞書かいました~

辞書編集部を舞台にしたドラマ「舟を編む ~私、辞書つくります~」が最終回を迎えました。

いや、おもしろかった! 久々に連ドラにハマりましたよ。

言葉の世界の奥深さもさることながら、モノづくりの面白さや情熱が描かれていて、とても見ごたえがありました。原作も早く読まないと。

さて、ドラマを見ながら、僕の作るZINE「民俗学は好きですか?」の最新号も、校正の作業に入りました。文字の誤字脱字をチェックしなければいけません。そのためにも辞書を引いて正しい表記や意味を調べることは不可欠です。

もちろん、ネットの辞書で検索すれば事足りるのかもしれません。

ただ、ぼくもZINE作りに情熱を燃やしています。そして僕のZINEは紙と言葉で構成されるもの。

そのため、紙は「なんでもいいや」ではなく、「これだ!」と思う紙を使っています。

文字のフォントも「なんでもいいや」ではなく、「これだ!」と思うフォントをつっています。

なのに、言葉を裏付ける辞書が「なんでもいいや」というわけにはいかないでしょう。ネットで適当に検索するのではなく、「これだ!」と思う辞書でしっかり校正したい!

というわけで、図書館に行っていくつかの辞書を読み比べしてみたところ、三省堂の新明解国語辞典の語釈が、なんだかおもしろいのです。

【恋愛】の語釈が悲喜こもごもが描かれていたり。

【世界】や【挑む】の語釈が、本質をとらえていてワクワクさせるような内容だったり。

「これだ!」と思ったので、校正作業に入る前に本屋さんに買いに行きました。

まず驚いたのが、1冊3000円だったということ。

高いなぁ、と思いつつも、ドラマで描かれたあの作業量を考えると、むしろ3000円でいいのですかとすら思えてきます。

そしてさらに驚きが。新明解、同じ第八版なのに、何と赤・白・青の三パターンがあったのです。ポケモンのソフトみたい。

ポケモンだと赤と緑と青で微妙に出現するポケモンがちがってて、友達と交換しないと図鑑が完成させられないんだけど、新明解も赤と白と青で微妙に収録してる言葉がちがってるとかあるのかなぁ。

……辞書でそれやられると、ただの欠陥なのよ。

安心してください。どの色を買っても、中身は全く同じだそうです。

ドラマの中で、「わざわざ紙の辞書を作るメリットとは?」という話が描かれていたけれど、3色選べるというのも紙の辞書を買ってもらう工夫なんでしょう、きっと。

さて、実際に辞書を片手に校正を進めていきます。

この場合、「知らない言葉の意味を調べる」ということはほぼなくて(知らない言葉は、原稿に書けないんですよ)、「この『はかる』ってどの漢字だっけ?」「『関の山』ってなにげなく使っちゃったけど、この意味や使い方であってるんだっけ?」「『ひょうはくの民』って『漂白』? 『漂泊』?」と、知ってる「つもり」の言葉の意味の再確認に辞書を引きます。

ドラマの中では辞書を舟に例えていましたが、ぼくにとっての辞書はどちらかというと羅針盤です。知らないものを知るというよりは、こっちの方向に進んでるんだけど合ってる?と確かめるための羅針盤なのです。

そんなZINE作りの心強い相棒となるであろう国語辞典。

ところで、その辞書には「ZINE」や「リトルプレス」は収録されているのかな?

と辞書を引いてみたところ、これが全くない。

どうやら、僕が乗っているのは、「辞書に載ってない海」を進む舟みたいです。

4年前に出た最新版の辞書にまだ載ってない、未知の海を進んでいるのです。ワクワクしますね。

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