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ボディービルコンテストの秘密】超人的な望みを叶える魔法の薬

フィットネスに関わる人口は近年その数を増し、ジムやトレーナー、コンテンツの量は数世代前とは比べ物になりません。理想の肉体を手にするボディーメイキングは24時間、365日、気の抜けない仕事のようなもの。適切な栄養に管理された食事、一貫性のある計算されたトレーニング、快適さが保証された十分な睡眠。それは何年もの長い時間を要する長い道のりです。

でも、もし、そこに近道があるのだとしたら。境界線を越えることで他の競争相手より近道ができるなら。大勢の歓声とスポットライトに照らされる栄光のステージを水平線に見ることができるなら…

見えているからこそ、揺れないほうがバカなのか?
超人的な望みを叶える魔法のお薬(アナボリック・ステロイド)

それは、ここ数年でより身近で手軽なものとなり、いとも簡単に手に入る。法律も侵さないし、変化は保証されている。遺伝子や才能の差にも悩まされず、注目を集め、金も稼げる。


人生で望むものが明らかでないのなら、その後半では、後悔することになるでしょう。生きているうちに何が何でも、叶えたい夢がある。その為だけに今日すべきことに集中する。周りがなんと言をうとも、憑りつかれなければ完璧を追いかけることなんて出来ない。

始まりはみんな同じスタートですが、何を想って汗を流すか、夢の叶え方は人それぞれ。近道を選んだ人にはどんな風景が映るのか?どれほどの犠牲を払うのか?コンテストに立つ矛盾は?成功の背後にある暗い真実を一緒に解き明かしていきましょう。

アナボリック・アンドロゲン・ステロイド(筋肉増強剤)

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生理機能を変化させるステロイドは人に超人的な力を与えます。筋力を増し、筋肥大の効率は最大化され、損傷回復も劇的に飛躍させる。本来、精巣から分泌されるはずの男性ホルモンを外部から注入することで、何万個もの細胞を活性化させタンパク質の合成を高め、分解を防止します。その結果、何もしなくても常に筋肉は巨大化していく。このような外部の薬物を使用して体作りを行っている人たちのことを通称、ユーザーと呼び、多くのユーザーはステロイドの使用を隠しているか、または名言しないのが一般的で、ナチュナルと同じジムに通い、同じ基準で、同じコンテストに出場し評価を受けている。

一方、ナチュナルが筋肥大を起こすには、高重量のトレーニングによって限界まで追い込む必要がある。酷使された筋繊維は損傷し、さらに強力なものとなって復活する。そうして初めて筋肥大を起こすのだが、この筋合成が高まった状態は男性ホルモンの影響で24~48時間で終了する。つまり、健康的で自然な男性は1日に4~9mgの男性ホルモンしか生成できずにタンパク質を合成する期限があるということです。これがある種、人間が身につけることの出来る筋量の限界を示しています。しかし、ステロイドを使えば外部から疑似的な男性ホルモンを注入できるので、週に3回のトレーニングなんかしなくても、筋繊維に栄養を送り込む程度の負荷で筋肥大は起こせます。

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それを証明する10週間にわたった研究が存在しています。研究では43名の健康な男性を4っのグループに分け、ステロイドの有効性を確かめました。

ひとつ目のグループは運動もせず、テストステロンも摂取しません。期待していた通り筋量の増加はありませんでした。

ふたつ目のグループは運動をせず、600mgのテストステロンを毎週摂取します。すると筋量は平均で3.17kg増加。

3つ目のグループは重量挙げのトレーニングを行い、ストステロンは摂取しません。すると筋量は平均で1.81kg増加。

最後のグループは600mgのテストステロンを毎週摂取し、重量挙げのトレーニングも行いました。すると筋量は平均で5.89kgもの増加を見せたのです。

この論文の結果をまとめると、全く運動をしていないユーザーはトレーニングをしたナチュラルの倍近い筋量を付け、ユーザーがトレーニングをすれば、ナチュラルの3倍近い筋量を付けることができることとになり、あまりにも不平等な体格差が現れます。

さらに、実際のユーザーは医師の処方もなく個人で使用するため、それ以上に摂取している可能性もあり、他の流行りの何十~何百もの錠剤を組み合わせることで超人的な20倍の数値をたたき出した研究も存在します。これは人間の全速力に対し東北新幹線はやぶさの時速に匹敵します。

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また、短期間に筋量を得られるだけでなく、その使用を止めたとしても残りの人生において多くのメリットが残されます。

2019年にアメリカのマサチューセッツ大学がマウスを使った実験によれば、ステロイドによって増えた筋肉組織の核は遺伝子転写が引き起こされ、その使用を止めたとしても核は残り続けるという論文です。ですからステロイドは短期的に筋量が増えるだけでなく、例え使用を中断し、筋量が減少したとしても、またすぐに再肥大するポテンシャルが高いままだということです。

その差はステロイドを過去に投与していたマウスが36%もの復帰効果だったのに対し、ナチュラルはたったの6%しか再構築が得られませんでした。ユーザーは例えステロイドの使用を止めたとしても、その後に渡って不公平な利益を受け取り続けます。

コンテスト

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ボディービルコンテストほど矛盾を抱えた競技は他にありません。JBBF、IFBB、FWJ、BBJ、NBBF、NABBA。国内では数多くのフィットネス団体がコンテストが開催しているのですが、どの大会もアンチドーピングを掲げています。しかし、極一部のコンテストを除いて実際には全く検査されていないのが現状です。

全てのチャンピオンには必ずトロフィーとセットとなって一定数の疑惑が向けられます。

“あの人も、ステロイドユーザーかもしれない”

誰がユーザーで、誰がナチュラルなのか、筋量だけで見極めることは出来ません。それは本当に血のにじむ努力の結果?正々堂々と戦った結果?それとも…?

疑惑を払拭させるにはドーピング検査をするしかありません。しかし、ボディービルにとって、その見返りはあまりにも少ないものです。年間を通じて抜き打ちの検体検査が実施できる体制、スタッフと資格、恐ろしいほどのコストが必要になります。

ライセンスビジネス

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企業や協会が選手のイメージを利用して、プロモーション・商品化を行うことで利益を上げるビジネスモデル。

通常であれば類い稀なる才能とたゆまぬ努力の結晶が、評価の基準であり、ボディーメイキングの基本です。それを格付けし、ファンにお披露目するのがコンテストの位置付けです。コンテストが盛り上がれば、盛り上がるほど運営と選手には強力なブランドイメージが与えられます。

方程式は次の通りです。ステロイドを使うことで土台である才能と努力に下駄をはかせ、超人的な筋肥大を起こします。次に超人的なユーザーがステージに上がることでコンテストは盛り上がる。それに比例して観客は増え、より強力なブランドイメージを手にすることが出来るのです。

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通訳を頼むなら英検に、コンサルを探すならMBAに、事務員さんが欲しいなら簿記検に信頼を置いて、私たちは金を支払います。実際に役に立つかは別にして、その方が安心できるからです。

すると金と名誉のために鍛えているユーザーは必然的に、厳格な審査のある団体からは離れていきます。なぜならその主な目的は強力なブランドイメージが欲しいのであって、ドーピングが科学的に証明された選手に、その後の選手生命はありません。これまでの実績には泥が塗られ、ブランドには傷が付き、スポンサーや関連業者へのイメージダウンは避けられません。自分の運営しているジムからは人が消え、フォロワーはアンチへと変わり、大会への出場資格を失います。どう考えても使うなら不透明な団体に所属すべきです。

ドーピング検査さえされなければ、他人からバレることは無いのですから。

ステロイドを使ったほうがコンテストは盛り上がります。「分かりやすい肉体」が常に求められ、観客離れは商業上、目指すところではありません。愛好家たちは選手の純恋潔白な精神性をこよなく愛していますが、それと同時に超人的な肉体美をも求めています。その欲望が満たされることはありません。もっとデカいヤツ。もっと引き締まったヤツ。もっとバランスの良いヤツ、もっと、もっと、もっと。それに愛好家たちは興奮するのです。科学と神様の狭間で夢を見るのです。美しき力の象徴に切望を抱くのです。次第にコンテストで勝つためにはドーピングが公然の秘密となりビジネスにするなら当然の選択肢となりました。

次第にボディービルは特異な文化を築き上げていく。

実用的なステロイドの誕生は1930年後半に開発されました。未だ100年も経っていない薬品なのですが、それ以前の筋量はどれほどのものだったのでしょう。

1867年"近代ボディビルの父"と呼ばれている。ユージン・サンドウの写真がコチラです。

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ユージンは100%ナチュラルだと断言できます。ステロイドが存在しない時代ですから。その後、コンテストのたびに数多くのチャンピオンが誕生します。筋量は益々大きくなり人外的マッスルモンスター化が進行していきます。誰が彼らをチャンピオンに選んだのでしょう。愛好家たちです。ユージンの筋量が少ないのは食べ物のせいでしょうか?トレーニング方法の違いでしょうか?努力?遺伝子?それとも…

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アーノルド・シュワルツェネッガー(ユーザー)、ロニー・コールマン(ユーザー)、ドリアンイェーツ(ユーザー)現役を退いたのちに自らその使用を認めています。ステージに上がるためのチケットはステロイド。傷付きながらも、成長を続ける特異な文化は、まさに筋トレそのものです。

当然のことながら、彼らのような TOP of TOP に君臨するためには常人が想像すらできない努力と才能が条件です。勉強も仕事も恋人も遊びも全て投げ出して、人間の限界になることだけを求めなければいけません。

ディズニーランドは夢の国。着ぐるみの中身がしゃべり出したら覚めてしまう。信じちゃいるが、開けてはいけない扉がある。口にはしないが、裏でやってることがきちんとある。全ては楽しみにしている観客への漢気、傾奇、任侠で磨かれており、それが普段では燃えない心を熱くしてくれます。

これは筋肉のジレンマとも呼べるでしょう。誰かにモテようと筋肉に魅せられた男たちが最終的には、ダサいことをしなければモテることが出来ない。使ったところで苦しみますし、使わなくても苦しむことになるでしょう。

種々のほろ苦い不都合を含んでいるコンテストは突き詰めれば突き詰めるほど矛盾や対立を内包したものとなり、対話の機会は希少なもので、その境界線はあやふやなままです。

すべての物語には二面性があり、対岸に向かって「そのような戯言を間に受けるのは愚かだ」とか「教養に欠けている」と言うのは簡単なことですが、個別の事象を取り上げて批判するという方法ではとても追いつかない規模で、次のような問題が絶え間なく発生しています。

副作用

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極一部の愛好家たちが集うコンテストは、その舞台を今やソーシャルメディアへと時代を移し、注目を集めることで影響力は広がりをみせ、一般的な領域までそれは及んでいます。さらにフィジークと呼ばれるカッコいいバランスを競う部門も登場し、怪人的なシルエットに限られていた敷居が下がったことで若者の人気は高まり、競技人口は増しています。健康的な肉体はみんなの憧れです。

日本国内においてステロイドは個人での輸入、及び使用が認められているため、海外から輸入でき、覚せい剤を打つより簡単に投与が始められる。

自己責任であるが故、容量を誤った場合、取り返しのつかない副作用が身体に影響を与えます。男性なのにおっぱいが出たり、女性なのにひげが生えたり、勃起不全や不妊症、うつ病や攻撃性の上昇、高血圧、心臓病、脳卒中、血栓など。

多くのユーザーはこれらの副作用を抑えるために回復期間を設けたり、それを抑えるステロイドブロッカーを追加で服用します。外見は良くなっていくが、その内側は壊れ、健康はとても期待できないでしょう。多くの金を使い、肝臓はイカれ、その障害が一生に渡るケースも存在します。仮にステロイドを止めた場合、構築されたステ筋の多くは失われ、そのかわりに多くの脂肪を取り戻します。その姿はきっと別人です。

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フィットネス産業の拡大とともに、消費者庁に当てられた「筋肉増強剤」関連の被害相談は2016年4件だったにも関わらず、翌年には82件に急増。輸入代行業者への注文件数は前年比で1.8倍の979件でほぼ倍増しています。

人生の使い方は人それぞれ、タバコもお酒も好きにすればいいんです。しかし、ステロイドだけは、その特性上、秘密にしておく必要があります。どこの受験生がカンニングを自首しますか?マジシャンがステージでタネを教えてくれますか?大酒飲みも、愛煙家もその魅力を大声で語れますが、ユーザーは隠し通す人もいるのです。

驚異のビフォーアフター、自信溢れる汗の根性論、驚異的短期間のトレーニング。誤った情報の流布も多く、マーケティングの視点に立てば外観をエサに、納得しやすく簡略化し、とてもわかりやすく見せた方が消費者は信じやすく、販売は容易くなるのです。その入り口には多くの夢を抱いた無知な初心者が集まり権威の力は高まります。

ジムにグッズ、サプリメント、アパレル、メディア、セミナーにプライベートレッスン。イメージの力で競争力は上がっていきます。彼らは金と名誉に目のくらんだスポーツマンではないのです。むしろスポーツマンの仮面をかぶったセールスマンなのです。お金の専門家であり、稼ぐ努力家です。

野心的な人間性に筋肉という名の鎧をまとい、常軌を逸する程に「伝えたい」と願う純粋な想い。その割には真実を口にすることが許されず、人を欺きながら自分を守っていくしかない。そんな矛盾した鎖はどんなバーベルよりも重く感じることでしょう。

まとめ

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スポーツ界でドーピングがダメな理由は、ダメだからとしか言いようがありません。そのような自滅的な見せ物小屋が、その体裁をスポーツマンシップで整えていたとしても、実態は殺し合いをさせて楽しむ好奇の目、快楽主義的な視覚願望、金が命よりも優先される狂楽に、人は過ちを犯かすことが多いのです。

「応援してます、頑張ってください」っと言われれば、その声に応えたくなるのが人間です。それで、どこまでも、どこまでも頑張ってしまい、本当に何が重要なのかを見失ってしまいます。

与えられた遺伝子も境遇も私たちにはコントロールできず、それに立ち向かう力は極わずかなもので、その限界の境界線は非常に曖昧で、近づこうと必死にもがき、苦しみながら、時には矛盾を抱え、時には納得しながら、その道を選びます。

ユーザーとナチュラル、薄っぺらな人間はどちらなのでしょうか?

ユーザーは薄っぺらな人間を集めるために体を厚くしていますが、
ナチュラルは薄っぺらな人間にならないように心を熱くしています。

ユーザーはこう答えます。「それならジムにはいきません、ただ鍛えるだけならつまらないので」
ナチュラルはこう答えます。「それでもジムにはいきます、ただ鍛えることが好きなので」

ユーザーは「筋肉を付けろ」と言いますが、ナチュラルは「ウソを付くな」と言いいます。

いまは夢の叶え方が自由だからこそ、多くの人が努力が多いよりは少ないことを、当然のことながら望みます。むしろ、成功が得られないにも関わらず、負荷を上げていくような人たちのほうがイカれてると言った方がいいのかもしれません。不平等になる機会は平等にありますし、そうすることで多くのものが手に出来る。しかし、間違ったことをして成功しても、それでは虚しいだけじゃないですか。

だから、今日も誇りに思えることをやっていく。肉体は紛れもなく、その過去を示しています。

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