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すべてが正論である園部逸夫元最高裁判所判事の女系天皇、女性天皇を認めるべきとの発言

園部逸夫元最高裁判所判事の発言

 園部逸夫元最高裁判所判事が女系天皇、女性天皇を認めるべきであると述べ、弁護士ドットコムニュースが報じています。

園部氏が座長代理を務めた有識者会議では、女性・女系天皇を認めるとの報告書を提出しているが、悠仁さまのご誕生によって、議論は立ち消えになった。安定的に皇室制度を維持していくために、皇位継承問題の議論はどうあるべきなのか。皇室法の第一人者である園部氏に聞いた。(弁護士ドットコムニュース編集部・山口紗貴子)

●「平成時代から引き継がれた課題が残されたまま」

平成時代から引き継がれた課題が残されたままになっています。現在の皇室は、天皇陛下、秋篠宮皇嗣殿下の次の世代の皇位継承資格者は悠仁親王殿下お一方となります。この先、悠仁親王殿下がご結婚されても、男子が生まれるかどうかはわかりません。安定した皇位継承とは程遠い危機的な状況が続いているのです。

私は法学者として研究、議論を重ねてきましたが、現在の「皇統に属する男系の男子が継承する」という制度では、安定した皇室制度の維持は厳しいと考えています。皇室制度の維持のために何より優先すべきは安定した皇位継承であり、そのためには直系であることが重要です。その先に、それが男性なのか、女性なのかという議論になります。

小泉純一郎首相の私的諮問機関として設置された「皇室典範に関する有識者会議」で、私は座長代理を務めました。女性天皇の可能性について約1年間議論を進め、2005年(平成17年)11月、報告書を提出しています。

主な内容としては、(1)皇位継承資格を女性・女系に広げる、(2)皇位継承順位は直系を優先する、(3)兄弟姉妹では長子を優先する、というものです。

提出から2カ月後の2006年1月、首相公邸で食事をした際には、小泉首相は3月の通常国会に皇室典範改正案を提出すると話されていました。ところが2月、紀子妃殿下のご懐妊がわかると、当時、官房長官だった安倍晋三元首相が「改正論議は凍結する」との方針を示し、議論はストップしてしまいました。実は1月に食事をした席には安倍元首相も同席していましたが、不満げな顔を隠すこともなかったことが印象に残っています。

その後、旧民主党の野田佳彦政権下でも有識者会議が設置され、典範改正を目指したようですが、実現はしませんでした。令和に入ってからも「皇室典範特例法」の附帯決議では、政府に対して、お代替わり後速やかに検討するように求めています。

ところが政治は進まず、棚上げされたまま、皇位の安定的継承が危機にさらされ続けているのです。議論した上で、国民の声をもとに法改正が必要であればしなければいけません。

議論する上で、まず初めに大事なのは、皇室の具体的な状況を念頭に置かないことです。愛子内親王殿下、秋篠宮皇嗣殿下、悠仁親王殿下などのお名前をあげることなく、本来望ましい皇位継承制度のあり方を考えなくてはいけません。

なぜ皇室制度が日本に必要なのか。必要だとすれば、女性天皇や女系天皇、女性宮家は認められるのか否かを考える。必要だとすれば適用時期、ご対象などについて考えていくこと。これが議論する上で、大事な姿勢です。

●「直系でつながる」重要性

現行の皇室典範は、第一条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」とし、第二条で、皇位継承順序は親から子への継承が原則であり、子の中では長子を優先すると定めています。

歴史上、皇位継承は必ずしも直系継承ではありませんでした。初代から現在の第126代天皇までの125の継承では、直系が継承した場合は70例で、天皇の兄・姉・弟あるいはさらに遠い血縁の皇族が継承していた場合が55例あります。

天智天皇が定めたとされる「不改常典」等、理念としては直系継承を尊重するものが見られますし、政治的に安定している時期には直系継承が多いといった傾向からも、本来の原則は直系による継承であると考えられています。

こうした歴史を経て、皇位の直系継承を法制度として定めたのが「明治皇室典範」です。その制定時「皇室典範義解」(伊藤博文著)では、皇位は直系に伝えることが祖宗以来の正しい法則であると説明しています。

●旧皇族の皇籍復帰「国民がはたしてどこまで納得するのか」

「女性天皇には賛成だが、女系天皇には反対だ」という声もあります。       

現行の皇室典範では、皇位継承資格を皇統に属する男系男子の皇族に限定しています(第一条、第二条)。法令用語研究会編「有斐閣法律用語辞典」(第4版)によれば、男系と女系とは次のような説明ができます。

男系「家系において、男子の方のみを通してみる血縁の系統的関係。すなわち、血縁系の間に女子が入らない者相互の関係」

女系「厳密には、女子だけを通じた血族関係をいうが、広く、中間に一人でも女子の入った、男系でない血族関係を指して用いられることもある」

明治典範(明治22年制定)でも、現行典範の制定の際にも、女性天皇・女系天皇の可否を議論しています。国民意識、歴史・伝統との関係、皇位の安定性、当事者への配慮など、政治、社会、歴史、文化、宗教をはじめ多くの観点から議論がなされ、その上で直系男子に限定することになりました。

当然ながら、国民の皇室に対する意識や国民との距離感は時代とともに変わります。

女性・女系天皇を認めないとの批判の根底には女性には任せられないという蔑視があるのでしょう。日本の男性中心の政治は、日本を滅ぼすと思います。戦後、男女同権という言葉があれだけ叫ばれて、新しい考え方が入ってきたと思っていましたが、一体どこに行ってしまったのでしょうか。

現在、終戦後に皇籍離脱された旧皇族の男系男子を皇籍復帰させるとの議論も出てきますが、皇籍離脱から70年以上経過し、今の天皇家の血筋とつながるのは600年も前という方も多く、国民がはたしてどこまで納得するのかわかりません。

弁護士ドットコムニュース「園部逸夫・元最高裁判事『女性・女系天皇を認めるべき』皇室典範改正、進まぬ議論に提言」

小泉純一郎内閣のもとで議論された皇室典範に関する有識者会議と上皇陛下の考えていた皇室のあり方

 小泉純一郎内閣のもとで皇室典範に関する有識者会議が開かれ議論が続けられましたが、その議論の席にはオブザーバーとして宮内庁の職員がいました。宮内庁の職員がいた理由は一つしかありません。天皇の意思を反映させるためです。有識会議の委員らは、緊張感をもって議論を行うとともに、宮内庁の職員がストップをかけないことで天皇の意思に反した議論になっていないことを認識したそうです。なぜ天皇の意思を反映させることが重要であるかと言えば、皇室の問題点や、表に現れない宮中祭祀などのご公務について、天皇以上に認識している方がいらっしゃらないからです。
 それに対して菅義偉内閣のもとでなされた天皇の退位に関する有識者会議の内容は酷いものでした。有識者会議に対して求められていたのは皇位の安定的な継承であったのにもかかわらず、皇位を継承することができない皇族を増やすことを議論し、女性皇族が皇室に残るもののその女性皇族の配偶者は皇族になることなく国民男子のままという女性皇族の家族の一体感すら無視した結論を提言しました。
 この有識者会議は、皇嗣殿下から悠仁親王殿下への流れを揺るがせにはできないなどと述べていますが、皇太子(「皇太弟」と表現すべきですが皇室典範には「皇太弟」を定義していませんので「皇太子」と表現します。)ではなく皇嗣であるという皇嗣殿下のお立場をまったく理解していないと言えます。
 皇太子は次に天皇になる方で、皇嗣はその時点で皇位継承順位1位である方です。つまり、皇嗣は皇位継承順位が上位の方が現れれば皇嗣ではなくなるお立場で、必ず次に天皇になる方ではないのです。したがって、現時点で皇位継承順位1位であるだけのお立場である皇嗣殿下が天皇になられる流れは変わってよいのであって、親王である悠仁親王殿下が皇嗣殿下の次の天皇になられる流れに至っては尚更であると言えます。
 新嘗祭など天皇陛下がなす宮中祭祀の場には天皇と皇太子のみが入ることができ、皇太子は天皇の姿を見ながら宮中祭祀を受け継いでいきます。しかしながら、天皇陛下の即位に伴って皇太子が不在であるという事態が発生しました。皇嗣殿下も皇太子ではないため、宮中祭祀においては他の皇族と同様に参列するというお立場で、宮中祭祀の場に入ることはできません。それは、宮中祭祀が次の世代に受け継がれないことを意味します。その事態を打開するためには秋篠宮殿下が皇太子となられる必要がありましたが、結果としてなされたのは皇嗣として宮中祭祀の場に入ることでした。このことから私は皇嗣殿下は天皇になられることに前向きではないのではないかと忖度いたしました。
 上皇陛下が天皇であったときに、皇位継承については国会などで決めることであるが、皇室のあり方については皇太子と秋篠宮に話を聞いてほしいとおっしゃっており、天皇や皇太子と比較してお立場的に自由に発言することができる秋篠宮殿下が「皇族の数が少ないことは皇室経済の面から考えればよいことであると思います。」と述べられました。この経緯から考えて、皇嗣殿下のこの発言は上皇陛下のご意見であり、天皇陛下も同じご意見であると解釈すべき発言で、上皇陛下、天皇陛下、皇嗣殿下は旧11宮家の末裔の男系男子が皇族になることについて否定的なお考えであると私は忖度しました。また、皇嗣殿下は「私は帝王学を学んでいない」とも仰っています。これらのお言葉を総合すると、皇嗣殿下は自らが天皇となること、皇嗣殿下とともに帝王学を学んでいらっしゃらない悠仁親王殿下について、天皇になることは適切ではないとお考えになっているのではないでしょうか。

伝統とは時代の積み重ねである

 皇位継承問題において、「皇位は万世一系で男系で継承されてきた」とおっしゃる方々がいらっしゃって、男系継承を維持するために戦後皇室を離れた11宮家の末裔の男系男子の一般人を皇室に迎え入れて皇位継承候補者に加えようとする案を支持しています。この案については、次の選択肢を示すことで批判に代えることができると思います。

竹田恒泰さんが天皇となった場合と、小室眞子さんが皇族から離れることなく天皇となって小室圭さんが天皇の婿という皇族になった場合と比較して、あなたが天皇に権威を感じ、敬意を持つことができるのはどちらですか?

 世論調査において、女性天皇と女系天皇の違いなどに理解が進んでいないにもかかわらず、愛子内親王殿下が天皇になられるべきだという意見が多いという結果がしばしば報道されています。私も参加したことのあるゴー宣道場では、愛子内親王殿下が天皇に即位することになればブームとなって天皇に対する敬意が高まるなどという意見がしばしば道場に参加する方から述べられていましたが、私はこれは違うと思います。
 愛子内親王殿下も皇嗣殿下もたった一度の人生を国民のために祈るという人生を受け入れられており、悠仁親王殿下はそのための準備をなさっています。ただ、天皇の子が天皇になるという直系で皇位が継承されていくということに国民が権威を感じていることが世論調査にあらわれているだけなのです。
 そして、伝統とは時代の積み重ねです。それぞれの時代において日本人が天皇に権威を感じて敬意を持ってきたということを積み重ねたことが伝統となっているのであって、今の時代において国民が愛子内親王殿下が天皇になられることに正統性を感じているという事実を過小評価することは間違いであると思います。

天皇の権威は神話に由来する

 そして、男系男子による継承を絶対として旧11宮家の末裔の男系男子の一般人を皇位継承候補者として皇族にさせようとする方々は、神武天皇からの男系男子による継承をやたらと強調しますが、天皇の権威は天照大神の天壌無窮の神勅に由来するものであって神武天皇の子孫であることではないのです。
 そして、天照大神が神話の中で描かれている神であることから神武天皇からの継承を強調される方もいらっしゃいますが、歴史学の研究で神武天皇も実際しないものとすることが通説となっていますから、神話に天皇の権威を求めているということにまったく変わりがないわけです。

過去に存在した皇位の女系継承

 そして、皇位が一度の例外もなく男系で継承さされたという点にも疑問があります。
 元明天皇と草壁皇子の間に生まれた内親王である元正天皇は、母である元明天皇の次の天皇に即位しています。この皇位継承は、女系継承がなされていると考えなければ説明がつきません。草壁皇子は天武天皇の皇太子でしたが、天武天皇の崩御後に皇位に就いたのは天武天皇の皇后である持統天皇でした。その後、草壁皇子とその皇子である文武天皇の早世により草壁皇子の配偶者で文武天皇のある元明天皇が皇位に就き、元正天皇がその後を継ぎました。この皇位継承において、天智天皇系の男系男子の皇族には桓武天皇の祖父である志貴皇子が存命で、天武天皇系の男系男子の皇族には長皇子や舎人親王などが存命であったことからも、天皇にすらなっていない草壁皇子の男系の血統が重視されたとは考えられず、元明天皇の内親王であることが皇位継承の決め手となったことは明らかであると思います。したがって、皇位が一度の例外もなく男系で継承されてきたというのは誤りであることがわかります。

天皇や皇族に過度の負担を強いない天皇と皇族のあり方

 そして、最後に考えておかなければならないのは、皇室は天皇や皇族がたった一度の人生を国民のために祈ることを決めてプライベートなどまったくない窮屈な生活を過ごされることによって維持されているということです。皇族が「私はこのような生活は嫌だ」と考えれば皇族から離れることもできますし、天皇や皇太子など皇族から離れることができない方がそう考えたとすれば、宮中祭祀や国民のための祈りは形骸化してしまい簡単に皇位が途切れることになります。
 そのためにも天皇や皇族のご負担を減らしていくことを私たち国民が考えなければなりません。特に、男子誕生が想像を絶するプレッシャーとなって天皇や皇太子の配偶者にのしかかる男系男子による継承は側室を備えているからこそ成り立つのであって、大勢の側室を抱えるということが天皇の権威を失わせるという今の時代において天皇の男系男子による継承はすでに不可能であると言ってよいでしょう。
 そして、旧11宮家の末裔で男系で継承している男子を皇族とすることも不可能です。皇位が断絶するかもしれないという緊急事態においても、男系男子による継承を絶対であると主張する竹田恒泰さんは自らが皇族となることを否定していますし、皇族になってもよいという旧宮家の末裔は未だ現れていません。また、保阪正康さんの調査では、旧宮家の末裔で皇族になってもよいと考える者はいないことが明らかになっています。
 仮に、皇族となってもよいと考える旧宮家の末裔が現れたとしても憲法の門地による差別の禁止をクリアすることができません。国民の中で旧宮家の末裔だけを、それも天皇から男系男子で継承している者が清和源氏の末裔や桓武平氏の末裔などと多く存在するにもかかわらず、特別に皇族とすることは門地による差別にあたります。
 それをクリアするために、皇族の養子とする案が出てきたわけですが、それは皇族に見たこともない赤の他人との養子縁組を強いるものとなります。
 以上のことから皇室典範を改正して直系優先による皇位継承とする以外の選択肢がないわけですが、いわゆる保守を自称する政治家たちは、批判を恐れて自らが鬼籍に入った後に訪れるであろう皇位断絶の危機には見て見ぬ振りをし、ご自身が批判されないのであれば皇位継承や皇室の危機に対応しないと考えているとしか思えません。その姿勢は皇室や天皇がいなくなることを望んでいる日本共産党などの左翼勢力の望む方向に進んでいるといえます。旧11宮家の末裔の男系男子を皇族にしたとしても、男系男子での継承を続けていく限り、女性皇族のご結婚によって皇族数はどんどん減っていき、清和源氏の末裔かどうか歴史上も怪しい徳川宗家の者などを皇族とするような未来が見えてきます。この誰でも皇族になることができるという皇室の形が、皇室の聖域性を根底から揺るがし、国民が皇室や天皇への権威を感じることがなくなり、皇室や天皇への敬意を持たなくなることへと繋がるのです。
 どのような形であれ、一度皇族を離れた者は、皇族との婚姻などの事情がない限り皇族となることはできないという皇室の聖域性を守るルールがありました。そのルールからしても、国民が天皇に権威を感じて敬愛するという天皇と国民が辛苦を分かち合うというこれまでの皇室のあり方から考えても、女系を認めて直系で皇位継承する以外の解決策はないのです。