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学生服リユースショップさくらや研究【さくらやぼん編その4】

 馬場さんは、出版する本について、「さくらや」を紹介するだけの内容にするつもりはなく、地域デザインのことが分かる、オシャレなMOOK本にしたいと考えていました。

喫茶ランドリーでの対談

 「さくらや」以外の事例として、東京都墨田区にある「喫茶ランドリー」というカフェのオーナーとの対談を盛り込むことにしました。

 「喫茶ランドリー」は、最寄り駅からさほど近くもないランドリー兼喫茶店なのですが、連日近所の人たちや遠方から訪れる人たちで賑わっているそうです。そして「喫茶ランドリー」で働く人とお客さんとがおしゃペリしたり、時にはイベントが開催されたりと、地域のコミュニティになっているのです。

 置いてあるのは、洗濯機だけではありません。テーブルにはミシンやアイロンがあって、「家事室」としても使われています。ミシンでエプロンを作ったり、ぬいぐるみを作ったり。ミシンを使ったイベントのほかにも、近所の会社がプロジェクトのワークショップの場所として使うこともあるそうです。

 私設公民館を作りたかったと対談で語るオーナーの田中元子さん。その狙いや、作ろうと思った理由を、田中さんのバックグラウンドを含めて、馬場さんとの対談で語っています。

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馬場さんに影響を与えた人

 本の中では、馬場さんの人生に影響を与えた人たちについても紹介されています。その一人が、地元香川県のテレビ局の元プロデューサー、有信由美子さんです。

 有信さんがフリーのプロデューサーだった2015年に、知人に「さくらや」のことを紹介されてお店を訪れ、地元テレビ局の企業探訪番組を作成したのが縁でした。その際の馬場さんへのインタビューで有信さんはとても引き込まれて、馬場さんを深く掘り下げたドキュメンタリー番組を作りたいと考えたのだそうです。

 翌年に有信さんが再び「さくらや」を取材して作成されたのが、「日本のチカラ」という全国放送のドキュメンタリー番組でした。

 「日本のチカラ」は3ヶ月にも及ぶ密着取材で、取材陣も馬場さんたちも1つの映像作品を作り上げるために緊張の日々が続いたそうです。馬場さんが、なりふり構わずにただ目の前のことを解決するために行動してきたことが、全国放送で紹介されて、地方の小さなお店が認知されることは喜ばしいことだったと言います。

 撮影は馬場さんの自宅でも行われました。ちょうどその日は馬場さんの長女の初めての給料日。長女には知的障がいがあり、特別支援学校を卒業して作業所で働いていました。

「初めての給料で、お母さんにネックレスを買いたい」

彼女は取材時に有信さんにそう伝えていました。もう一つは、自分のために嵐のDVDを買いたいと言いました。

 女性が仕事と子育てを両立するのは、決して楽なことではありません。スケジュール管理や、体力的な問題もあり、本当に大変です。有信さんも子育て中のママでした。それでも3ヶ月かけて密着取材してくれたのは、「母親が子供たちと接するさくらやの1つのカタチを見て、何か感じるものがあったからかも知れない」と馬場さんは言います。

 「日本のチカラ」は、「“おさがり”で地域をつなぐ~母の力で切り開く学生服リユース店~」というタイトルで、2016年7月に全国放送されました。馬場さんにとっても感動の涙が出る内容でしたが、視聴者にとっても同様だったようです。放送を見た人が、後日、馬場さんの長女のもとに、嵐のDVDを東京から送ってくれました。馬場さんと同じく、嵐が好きな娘を持つ母親からでした。

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 「日本のチカラ」が全国放送されたことが、さくらやパートナーの問合せだけでなく、馬場さんの長女のことで応援してくれる人がいたりしたことで、馬場さんは全国にもっと「さくらや」を知ってもらって、支援やお手伝いをしたいと考えるようになりました。 

 「さくらや」を扱った「日本のチカラ」は、財団法人民間放送教育協会の2016年度奨励賞を受賞しました。馬場さんは自分のことのように嬉しかったそうです。

 本の中では、「さくらや」を取材する中で有信さんが印象に残ったことを語っています。

続く





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