見出し画像

演出がひどすぎた新国立劇場の「リゴレット」

*演出のネタバレがあります。

新国立劇場オペラパレスで、ヴェルディの「リゴレット」を見た。

【リゴレット】ロベルト・フロンターリ
【ジルダ】ハスミック・トロシャン
【マントヴァ公爵】イヴァン・アヨン・リヴァス
【スパラフチーレ】妻屋秀和
【マッダレーナ】清水華澄
【モンテローネ伯爵】須藤慎吾
【ジョヴァンナ】森山京子
【マルッロ】友清 崇
【ボルサ】升島唯博
【チェプラーノ伯爵】吉川健一
【チェプラーノ伯爵夫人】佐藤路子
【小姓】前川依子
【牢番】高橋正尚

【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【指 揮】マウリツィオ・ベニーニ
【演 出】エミリオ・サージ
【美 術】リカルド・サンチェス・クエルダ
【衣 裳】ミゲル・クレスピ
【照 明】エドゥアルド・ブラーボ
【振 付】ヌリア・カステホン
【舞台監督】髙橋尚史

いやー、ひどい演出だったね😅

ビルバオ・オペラっていうスペインの歌劇場の制作らしく、大道具も小道具もそこから持ってきたようだが、わざわざ持ってくるほどの舞台装置?😅

私はオペラは苦手にしていて(モーツァルトとヘンデルは別)、ヴェルディも「椿姫」と「アイーダ」しか見たことないので偉そうなことは言えませんが、演劇自体は10代のころから見てます。
歌舞伎や能も見るので、舞台美術はそれなりに見てきました。

「おから」みたいな舞台装置だと思いましたね。
「アイーダ」という最高級の豆腐を作るのに大幅な予算使ったので、そのおからで「リゴレット」作ったような(ひどすぎ?😅)

でもしょぼい演出のわりにお金かかってるんだろうなぁ😓

ラストにリゴレットが「呪いだ!」と慟哭する場面で冒頭の舞踏会の赤いシャンデリアが急に降りてきて吹き出しそうになった😅
わざわざ最初にかけられた呪いってことを強調しなくても…。

とにかく「アイーダ」とは比較にならない! 舞踏会のシーンは細長い板が客席に向かって斜面のように設置されていて、そこでモンテローネ伯爵が叫んだりする。
V6の「学校へ行こう!」で学校の屋上で叫ぶ生徒かと思っちゃったよ😅

廷臣たちは上手の細長い台の上で舞踏会をご鑑賞。プールサイドで見学してるみたい😅

「アイーダ」は全面キンキラキンの世界だったけど、こちらは床はグレーだし、稽古場と大して変わらない雰囲気。どこが宮殿?😅

今回は舞台転換に時間かかりすぎ。特に第2幕と第3幕は幕が変わってるんだから一回緞帳下ろしたら?(それ以外も薄い幕を下ろすとか)
メイキング見せてるんじゃないんだからさ。一気にムードが冷めるっつーの。

リゴレットがスパラフチーレと遭遇する場面もしょぼすぎ。
四角い台をたくさん並べて、上から小さな四角いライトをたくさん当てる。
え? これが窓ですか?😅 これで建物ってひどくない?

リゴレットの家もひどい。ジルダが乗った階段付きのセットが急に下手から滑ってきて、舞台上の台とドッキング。
それで家です、って言われてもなぁ…。

誘拐の場面は廷臣たちがてっきり担いで運ぶのかと思いきや、新国立劇場合唱団が美人ソプラノと“肉体的接触”をするのはNGだったのか(第3幕でスパラフチーレの妻屋さんは殺したジルダを引きずってたけど)、まさかの階段付きセットごと誘拐🤣

これじゃ誘拐じゃなくて撤収だよ😂

第2幕は宮殿なのに奥の階段は雑居ビルの非常階段みたいな作り。どこが宮殿?

「2001年宇宙の旅」のモノリスみたいなでかいパネル(第3幕で裏返されて居酒屋のドアになる)の前にベッドらしきものがあるんだけど、ここは何の部屋??

舞台上に何もないとジルダがリゴレットにもたれて歌えないからリゴレットが座るために設置したんだろうけど、ベッドなのか何なのかよくわからない物体。
ベッドだとしたら公爵の寝室で2人は話してるのか?(でも公爵は舞台上にはない寝室でジルダを襲ってたはずだからなぁ)

第3幕のセットもひどい。中央に傾いた大きな板のセットがあり、その上にベッドカバーのない黒っぽいシーツだけのベッド(背もたれなし)と大きな扉だけ(壁はなし)。

扉にはランプがあり、その下に縦に細長い窓がある。鍵穴か?😅

居酒屋って設定ではないの? テーブルも椅子も飲み物もグラスもない。ベッドしかないって風俗店ですか?😅

雷鳴が轟く段になると、上手の上部にスタッフルームが丸見え。
そこに雷の装置あるのねー😓

演出と美術は何一つ褒めることがない。ほんとに海外で絶賛されたプロダクションなのか?

歌手は素晴らしかったですよ。
マントヴァ公爵役のイヴァン・アヨン・リヴァスは舞踏会のシーンでは声量が足りなくて物足りなさがあったが、第2幕からパワーアップして演技にも堂々とした貫禄が出た。

リゴレット役のロベルト・フロンターリは終始孤独が滲むような声色だったし、ジルダ役のハスミック・トロシャンは声量たっぷり、感情表現も見事。
この人で「カルメン」や「椿姫」見てみたいですね。

スパラフチーレ役の妻屋秀和、モンテローネ伯爵役の須藤慎吾は「アイーダ」同様素晴らしかった。
四重唱におけるマッダレーナ役の清水華澄も良かった。
店内の2人が見えない位置だったのに息ぴったりで歌ったフロンターリさんすごい。

マウリツィオ・ベニーニの指揮もダイナミックとデリケートの両方で魅了してくれた。

聴衆は大いに沸いたが、拍手がフライング気味になることはなく、ブラヴォーの掛け声含めてレベルの高い聴衆だった(ジルダの「慕わしき御名」で携帯鳴らした人反省してね😡)。

字幕(増田恵子)もとてもわかりやすかった。リゴレットが自分のことを「不具」というシーンで「身体の不自由な」にしなかったのは英断だね😊

映画評論家の淀川長治がまずいステーキを食べていた永六輔に「永くん、自分でお金を稼ぐようになったら、横浜のホテルニューグランドに行ってステーキを注文しなさい。どんなに味が違うか分かるから……」と言ったエピソードがある。

要は最高のものと最低のものを味わえば自分の審美眼や価値基準ができる、ということだ。

どちらかだけではダメ。なので、「運命」を3種類しか聴いたことのない人より20種類聴いた人の方がより深い審美眼を持つことができる。

クラシックの鑑賞とはそういうものだと思います。

最後に言わせていただくなら…

「アイーダ」と「リゴレット」、落差ありすぎません?😂

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?