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「きく」の謎-聞く、聴く、訊くとは-

先日、2018年8月9日の社内会議向けに作った「傾聴」に関する資料を掘り起こし、公開した。ただ、そこには大きな誤りがあった。修正したものを再公開する。なお、誤っていた点についても大きな発見があるので追記する。

「きく」を整理する

傾聴という言葉がある。語義から考えると”(心や耳を)傾けてきく”ことを指す。

ただ、具体的に(心や耳を)傾けて聞くとは何か?問われるとわからないことが多い。

傾は元は頃、匕(さじ)と頁(あたま)。頭をさじのように斜めにする、つまり、相手の方に注意を向けることなのだそうだ。

そもそも「きく」に充てられる漢字は多く、聞く・聴く・訊くに分けられる。聞くと聴くは、傾聴することであり、訊くは質問することである。

なお、かつては聞くと聴くをhearとlistenに対応させて理解していたが、言語が違うので一対一対応させるのは軽率だった。

日本語の「聞く」は他動詞で能動的行為だ。hearではない。自動詞の「聞こえる」がhearと対応する。日本語の他動詞に受動の意味はなかった。

ありのままに「聞く」

「聞く」はありのままに聞くことである。自分の解釈や理解などは入らない。単純に事実のみを受け止める。

これは非常に重要なことで、まずは正確に、というと語弊があるので「明確に」いうと、”相手が話したままに”聞き取ることができる必要がある。正確さを重視する「聞く」は、耳があって、聞き取ることができるかという「聴力」の話である。字面の通りに理解してメモをするといった活動はこの聞くにあたる。

これはできて当然のように見えて、つい「聴いて」しまう。話している内容を自分のフィルタを通さずに捉えるのは想像以上に難しい。

仮説を持って「聴く」

次に「聴く」とは何か。聴くは、相手が話したままに聞き取ることのみならず、相手が何を言いたいのかを汲み取ることである。

相手の真意、つまり、感情の載った言葉を理解する。これには、仮説を考えて、自分のすべきことを判断が必要である。

例えば、相手はこう言っているのだが、おそらくこうしたことを言いたいのだろうなとか、こんな気持なのではないかということを考え、そして自分の言葉で能動的に理解することである。

ここには無意識のバイアスが入るので、注意が必要である。

ちなみに、聞くと聴くは、相手が人間でなかったとしても成立する。

仮説を質問で検証する「訊く」

そして、最後に「訊く-質問する-」ことだ。

「訊く」は「質問する」ことである。「自分から」質問するのがポイントだ。誰かの行為なく、内発的なものに答える形で訊く。

(余談)ヒアリングとリスニング

打ち合わせでお話を伺うことを「ヒアリング」という。一方、外資系コンサル出身者が「リスニング」と言っているのを聞いたことがある。

これはスタンスの違いに他ならず、まず受け止めようという姿勢で接する(hear)のをヒアリングといい、そして、自分で能動的にきくという意思が入っているのがリスニングというわけだ。

両者に良し悪しはないが、どちらの活動に重点をおいているかの差がここにでている。

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