見出し画像

ヒトの最新脳地図が発表されました

我々の脳は、一番身近で一番遠い存在、といってもいいくらい謎に包まれています。
近年の解析技術の進歩でその謎を一歩一歩解明していこうとしており、その1里塚かもしれない偉業が今月発表されています。

ようは、
人体の脳細胞地図最新盤ができ、今後の神経疾患治療に貢献するかもしれない、
という話です。

元々これは「ブレインイニシアチブ」と呼ばれ、2017年から米国機関(NIH)主導で進められていました。

5つの研究機関がかかわっており、すでに20本以上の論文が今月発表されています。雰囲気だけでも感じるために、その一部をこちらからタイトルだけ和訳して並べてみます。

「成人の脳全体にわたる細胞型のトランスクリプトームの多様性」
「比較トランスクリプトミクスによりヒト特有の皮質の特徴が明らかに」
「ヒトとマウスの新皮質におけるレイヤー1介在ニューロンレパートリーの形態電気的およびトランスクリプトームの相違」

単にヒトだけでなく、近い存在の生物との比較も行っており、もしかしたら人類特有の遺伝子特定が進むかもしれません。

過去にも、その仮説は唱えられています。
例えば2020年に、ある遺伝子が脳を巨大化させる因子ではないか?という記事をScience誌でみかけました。
「ARHGAP11B」と呼ばれますが、このワードで検索する限り、其の後の進展は目にしません。

今回はあくまで地図の提供であり、この20本以上の論文それぞれが何か革命的な発見があるかもしれないので、また覗いてみようと思います。

今回の地図対象で興味深かったのが、ニューロン以外も含めている点です。

脳と聞くと神経の集まりで、それをニューロンと呼ぶことは知られています。ただ、実はそれ以外にも同数かそれ以上(出所により幅あり)の細胞が存在します。

「グリア細胞」と分類され、過去の投稿でもふれたので基本的な内容はそこにゆだねておきます。

もう1つ欠かせないのは、ゲノム解析の解像度です。

これも単にDNA配列だけでなく、そこからの変遷(特にRNAがかかわる系統やDNAを修飾する解析)までも含めているような表現もあります。

こちらも過去投稿に詳細は委ねますが、すでに「遺伝」という概念は、DNAという単一物質のたった4種類の塩基配列だけでなく、それらがどのように相互作用するのかという、より広い範囲での動的なシステムとしてみる必要がありそうです。

今回の新たな地図がどんな神経科学、場合によっては周辺領域の開拓につながるのか、また調べてみたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?