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サイエンスブレークスルー準優勝作品を眺める1

毎年サイエンス誌はブレークスルー賞として、年間の科学的な取り組みを表彰します。つい先日に、その2023年度の賞が発表されました。

実は賞に選ばれなくても準優勝作品がいくつかあり、今回はそれらの前半部を紹介します。(元ネタはこちら

1.地球の炭素ポンプは減速している

南極海から北流する流れの速さで大気中のCO2回収が進みます。南極海の調査でその効果が近年減少していることが判明。
原因はまだ調査中ですが、現時点での仮説は、南極の氷床が溶けて南極から流出する淡水の増加。それによって周囲の海水がより新鮮になり、沈みにくくなっていきポンプ効果に影響をあたえています。

関連する論文を載せておきます。


2.天然水素の探索がホット

1987年にある場所で天然の水素が発見され、それ以降世界中で水素の探索が活発になっています。
地球には1兆トンの水素が存在する可能性があり(下記報告書)、数千年にわたって燃料や肥料の原料として増大する水素の需要を満たすのに十分な量です。ビルゲイツ財団や政府の補助金によって進められている、再生可能電力で「グリーン水素」を製造するよりも、天然水素の抽出がはるかに安価であれば、エネルギー革命につながります。


3.AI気象予報士が登場

以前にも軽くふれましたが、デジタルコンピュータが初めて数値予測をしたのは「気象予測」です。
今ではテックジャイアントが深層学習でより精緻な予測を実現しています。過去の紹介記事を引用しておきます。

従来(記事内では欧州の気象予報モデル)と大きく異なるのは、ある数学で書かれた方程式を近似するのではなく、元データからそのパターンを見出すビッグデータ方式です。
ただ、その大きな違いがあるがために、たとえ今テストで優秀な成績をあげても、すぐに切り替わるかどうかはまだ時間がかかる、ということです。
ただ、今後データが増えるにつれて精度の信頼性が増すため、世代代わりするのは時間の問題かなと思います。


4.マラリアへの新たな希望

ワクチンでマラリアを撃退する取り組みが今年大きく前進しました。
モスキリックスと呼ばれる世界初のマラリアワクチンは、サハラ以南のアフリカだけで年間約47万人が死亡している幼児の死亡率が大幅に低下したことが調査の結果分かりました。
現在、世界保健機関 (WHO) による R21/MatrixM と呼ばれる2 番目のワクチンの準備が整っています。
デザインは Mosquirix と似ていますが、より安価に大量に生産できます。
これで、年間何万人もの子供の死亡を防ぐことができる可能性があります。

1以外は明るいニュースでなによりです。次回は、残りの候補テーマを紹介します。

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