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マクロな毛、ミクロな毛

日本の研究グループが人工的にマウスの毛を培養することに成功した、というニュースが流れています。

科学雑誌Sciense Advancesへの投稿論文はこちらで見る事が出来ます。

ようは、
マウスの毛が生える器官を胎児の皮膚から培養して生やすことに成功して、脱毛症に貢献出来る、
という話です。

毛についての基礎用語を。

毛に関する細胞として、毛包(もうほう)と呼ばれる毛穴の奥の毛根を包んでいる皮膚組織があります。もう1つは、皮膚の下の真皮などになる間葉系細胞というものです。今回はそれらとたんぱく質を合成して人工的に作製したものです。

毛を生やす方法は従来から大きく3つあります。

1.間葉系細胞を皮膚に注入して毛包を活性化
2.毛包のもとになる組織(毛包原基と呼ばれます)の移植
3.体外で作った毛包の移植→これが今回のタイプで世界初

この人工的な作製の過程で白髪になるプロセスの研究も進むそうで、記事内では髪に関する新規事業を作って民間とのコラボも進めるようです。
いずれは脱毛だけでなく、白髪にも悩まなくてよくなる時代がくるかもしれませんね。

人間の髪の毛は、大体太さ0.08mmで十分小さいですが、これすらマクロといえるミクロな毛も我々の体内には存在します。

それは各細胞に生えている毛で、なんと太さ0.00025mmと髪の毛のさらに300分の1です。

分かりやすい例をあげると、人間の精子の形状を取り上げます。

見た目は「おたまじゃくし」ですが、遺伝に必要な情報は頭に相当する箇所に詰まっています。ではこの尾っぽに相当するのは何かというとこれがまさにミクロの毛です。「鞭毛(べんもう)」と呼びます。

どんな役割かというと、精子が卵子に到達できるように、卵子からの目印をキャッチしてナビゲートしてくれます。実は鞭毛内部はモーターに相当するたんぱく質が存在し、それが精子を正しい方向に動かしているわけです。

さらに、無事巡り合って受精したあとに、今度は卵子が子宮に移動する必要があり、その際も今度は「繊毛(せんもう)」という同じような機能を持ったたんぱく質がベルトコンビアのように適切な場所へ案内します。

しかも、繊毛は卵子を送るだけでなく他の器官にも存在しています。

脳内にも存在し、まだ完全に解明されてはいませんが老廃物を除去するお掃除機能を担っているのではないかと言われています。つまり、認知症アルツハイマーにも影響を与えているかもしれないわけです。

さらに、人体の不思議にも関わっています。

素朴な質問ですが、なぜ「心臓は右でも中央でもなく左にあるのでしょうか?」

なんとそれが、繊毛の動きによって決められていることが分かっています。

繊毛の回転運動が右から左で、それに応じて左側に心臓など臓器が形成されたわけです。
なぜそもそも繊毛が右から左へ回転したのかまでは分かっていませんが、いずれにせよ繊毛が新しい生命と臓器を形成するという重要な役割を担っていることは明らかです。

マクロの毛も面白いことになってますが、ミクロの毛は我々の生命の助産婦であり育ての母といってもよいかなと思います。

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