見出し画像

川に流されて生き延びた話<体験談>②

滝に飲まれる直前。
僕は遠くに見える母親に向かって「助けてー!」と何度も叫びました。
無情にも川の音にかき消され僕はひとり流されていきました。

母はその時、ほかの母親たちと一つの団子になって井戸端会議の真っ最中でした。
その中の誰も僕の声に気づく気配はなく、近くにほかの子供たちもいませんん。
間もなく目の前だった滝に吸い込まれてしまいました。

僕はパニックになりながらも浮き上がり、振り返ると落差は1メートルほどの小さな滝?でした。
幸いすぐに浮き上がり事なきを得ましたが、体力を消耗し呼吸が乱れた状態だったので非常に危なかったと思います。

そして流れのまま僕は流され、残った体力を使い水面に突き出した岩だけは身をよじってかろうじて避けていました。
たまによけきれず岩に当たってしまうと、想像していた以上の衝撃と痛みに驚きます。
なんとか足がつかないかと探っていると、たまに足がつくところもあったのですが、その程度では流れに逆らえずどんどんと流されていきます。

足をつけて止まろうと立つような姿勢で流されていると、水中に隠れている岩が足に直撃してきます。
そのたびに激痛に見舞われてしまい、たまらず足をつく場所を探すのをあきらめて足を上げて流れることを選択せざるを得ませんでした。

足を川下に向けて進むと岩を蹴ってよけれるかと思いきや、水面ぎりぎりの岩は背中やおしりをかすめるように当たってきます。
それはそれでとんでもない痛みが走ります。
水面が渦を巻いていたり、白波を立てているところには水中または水面近くに岩があることに気づきました。

足を川下に向けていると、水面の異常に気付くのが遅れがちでちょくちょく岩に当たってしまうので、顔を川下に向けて水面の異常をいち早く見つけて、見つけると足を川下に向けるよう体を入れ替え、その岩を左右によけるという行動に切り替えました。

こうしてしばらく川に身を任せ流されていると、徐々に呼吸が回復してきました。
そんな矢先再び川幅が狭くなり、流れが加速しているところに迫ろうとしていることに気づきました。
やはりその先の様子は見えません。
落差がどれくらいなのか見当は付きませんが、滝を想像してしまいパニックになりました。

僕は幾分呼吸が回復していたため、必死に流れに逆らって泳ぎました。
この時考えたことは、「多分もうだめだ、1秒でも長く生きよう」でした。そして体力の限界を迎え、流れのまま滝に飲まれました。

しかし、またもや幸運ですぐに浮かび上がることができました。
そしてひと呼吸したところで突然。
水に叩きつけられ、気が付けば水の中でした。
何が起こったのか?と思っていると、また浮かび上がることができました。
そしてひと呼吸。
次の瞬間水に叩きつけられ。

僕はお風呂で遊ぶおもちゃのように浮かんでは滝に吸い込まれを繰り返していました。

直前に体力を使い果たしたしまった僕はなすすべもなく、浮かび上がるたびにひと呼吸することが精一杯でした。
何度も繰り返している中、浮かび上がりひと呼吸…と
息を吐いたそのタイミングで滝に飲まれてしまいました。

この時は本当にやばくて、息を吸うことができず酸素不足でパニックになってしまったのですが、何とか生きて浮き上がることができました。
いつもいつも必ず浮き上がれて呼吸ができる保証がないことに気づかされ、想像以上に危険な状態だと知り、ようやくスイッチが入りました。

ここで僕は冷静になり、どうにかして生き延びようと考え、ある行動をしました。
この行動のおかげでピンチを切り抜けることができたと言っても過言ではないでしょう。

つづく

ここから先は

0字

この記事が参加している募集

自己紹介

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!