こうのかよ

・レックリングハウゼン(多発性神経線維腫症Ⅰ型) ・緩和ケア認定看護師 ずっと病気を隠…

こうのかよ

・レックリングハウゼン(多発性神経線維腫症Ⅰ型) ・緩和ケア認定看護師 ずっと病気を隠して生きてきた。人に知られるのが怖かった。 でもこれからは、病と共に生きられる私になりたくてnoteはじめました。

最近の記事

こころのかくれんぼ 13     【入院徒然日記 ~なぐさめの朝~】

#創作大賞2024 喉のうるおいに心安らいで、ふっと眠りにつく。 だが、1時間もしないうちに仰向けの同一姿勢がつらくなってくる。 点滴を気遣いながら両腕に力をいれて、そっと腰を浮かすたびに尿道カテーテルの違和感と傷の痛みの刺激で目が覚める。 深く長く眠れた感覚がするのに、実際にはほんの30分しか過ぎていない。「早送りで朝にならないかな」と、子供のように非現実的な事を考えてしまうほどに、病棟の夜は長いものだ。 看護師さんが押しているカート。 廊下に響くナースコール。 遠くか

    • こころのかくれんぼ 12     【入院徒然日記 ~渇きの夜~】

      静かな環境と鎮痛薬のおかげで、眠っていたようだ。 目が覚めた時には身体が温まり、震えも治まっていた。 腹部の焼けつくような痛みも少し落ち着いている。 呼吸をすると胸やお腹が連動してひきつれて痛むけれど、十分我慢できる。本当にありがたい。 が、今度は身体が熱を帯びている事に気付く。術後の体温の上昇。 これもまた自然な体の反応だ。よし、生きてるぞ、わたし。 痛いなあ、と言う言葉の中でふっと意識が途絶えて、痛いなぁと言う言葉と共にふっと目が覚める。 それでも「術後急性疼痛は24時間

      • こころのかくれんぼ 11     【入院徒然日記 ~術後HCU~】

        「こうのさん こうのさん わかりますか」 頭の上の方で、名前を呼ばれている気配がする。 私・・・?と、目をあけようとするが、うまく開かない。 自分の瞼の形で縁取られた紡錘形の視界の中に、何人かの人が見下ろしている様子がぼんやりと見える。 手術、終わったのか。 返事を返したいけど、声がうまく出ない。 少しだけ首を縦に振って答えた。 睡眠からの目覚めとは違う、強烈な違和感に少し混乱する。 意識が強制的にシャットダウンされて、また強制的に引き戻された…と言えば伝わるだろうか。1秒

        • こころのかくれんぼ 10     【入院徒然日記~手術当日~】

          手術当日の早朝。目覚めは良い。 廊下に出て大きな窓から外を眺めると、晴れた空が広がっている。 まだ低い位置の太陽の光が生命の暖かさのように感じて、静かに目を閉じて全身で受け取ってみる。 廊下のスピーカーからはエルガーの「愛の挨拶」が聞こえてきて、なんとなくその場でお辞儀をしてみた。 こちらの病院は、朝から消灯時間まで院内にクラシックのBGMが流れているのだが、注意深く聞いていると各時間帯によって曲調やテンポが違う。 朝は軽くて少しゆったりめ。昼は軽快なピアノ曲が中心。そして

        こころのかくれんぼ 13     【入院徒然日記 ~なぐさめの朝~】

          こころのかくれんぼ 9      【入院徒然日記~初日その②~】

          カーテンで四方を区切られているので、廊下側は昼でも薄暗い。 昨夜の睡眠不足を補うべく横になってみると、天井の照明が直接目に届いてとても眩しい。しばらくすると目がチカチカと痛くなってくる。 あぁ、そういえば入院患者さんに「眩しい」と言われて、バスタオルをつるして光を遮って差し上げた事があったなぁと思い出す。 仕方なく、ハンドタオルをアイマスク替わりにして目を閉じる。 うん、いい感じ。 どの施設にも共通するのだろうけれど、照明位置などもう少しベッド周辺の環境を見なおしても良いの

          こころのかくれんぼ 9      【入院徒然日記~初日その②~】

          こころのかくれんぼ 8      【入院徒然日記~初日その①~】

          増えてきた腫瘍を可能な限り摘出するために、昨年は手術と回復に時間を使うことを決めていた。背中側とお腹側。二度の全身麻酔を受ける事になるため、体力的にも傷の回復にもある程度時間と余裕が欲しかったのだ。 発汗や紫外線による傷への影響を考慮して、寒い時期に行うことにした。 1度目の手術の際には、自分の事をこうして発信するとは想像もしていなかったので、日々の詳細は記録に残してこなかった。 2度目の手術の際には、写真を含めて記事にしようと決めてメモを残してきたので、それらを少しまとめな

          こころのかくれんぼ 8      【入院徒然日記~初日その①~】

          こころのかくれんぼ 7      【目で見える姿のその先に】

          先日「やっとできたこと」として、外観に障害やコンプレックスを持ちながら生きている方たちのエピソードに触れることができた…と綴った。 手に取った本のひとつ「顔とトラウマ」の中で、顔にあざを持つフリーライターの石井さんがこのように述べていた。 何が美しくて、何が醜いのか。 それは定義があるようで無いようでもあり、やっぱりあるような気もする。 実際にそれぞれが持つ価値観や常識を超えた、いわゆる「普通ではない」姿形をもつ人に出会った時というのは、瞬間的に本能的に驚いたり、慄いたり

          こころのかくれんぼ 7      【目で見える姿のその先に】

          こころのかくれんぼ 6      【いま やっとできたこと】

          noteを始めて、ひと月が経とうとしている。 自分の事を書くと決めてから、ひとつの変化があった。 これまで避け続けてきた「皮膚や外観」そして「当事者達の感情」に触れる作品や書物を、やっと手に取れるようになったのだ。 本当に、やっとだ。 これは自分にとって大きな進歩だった。 ハンセン病療養所の方々の詩集 見た目問題に関わる方たちの語り 障害や差別をテーマとした映画 身体表面に疾患をもつ人のトラウマ etc・・・ 外観に病気を持ち、生き難さを抱える方たちの語りに深く触れるこ

          こころのかくれんぼ 6      【いま やっとできたこと】

          こころのかくれんぼ 5      【いいなの気持ち】

          初めて大学病院という場所に患者として訪れたのは18歳の時。 それ以降、全身に広がった腫瘍の摘出手術を受けるために、30代・40代と 何度かお世話になってきた。 私は病院に行けば「患者」と呼ばれる立場だけれど、普段はその方々と接する「看護師」として仕事をしている。専門は緩和ケア。 私は患者でもあり、看護師でもある。 ここ数年自分が働いていて、そして通院していて感じてきたのは「がん」に関する情報や支援の多さだ。 2人に1人ががんになると言われるこの時代。これは、ある意味自然な

          こころのかくれんぼ 5      【いいなの気持ち】

          こころのかくれんぼ 4       【18歳の決意】

          子供を持つことについて この世には、様々な病気や障害と呼ばれるものがある。 その特性が出生前診断で見つかった時、96%の人が堕胎を選択するという。 私は高校3年生の春休みに大学病院に入院し、精密検査の結果レックリングハウゼンの診断を受けた。 30年前は今ほど簡単に情報にアクセスすることも出来ず、病気に関する知識は診断してくれた当時の主治医に尋ねるか、図書館に通って調べるしかなかった。出来る限りの事は、調べてみた。 知るのが怖い。でも知らなくては。 自分の身体にこれから何

          こころのかくれんぼ 4       【18歳の決意】

          こころのかくれんぼ 3        【症状の特性 続き】

          レックリングハウゼン(神経線維腫症Ⅰ型)の症状特性 その2 このそばかすのような斑点も、小学校のプールの授業で見られるのが嫌で 必要以上に隠しながら着替えていた想い出があります。 私の時代は、てるてる坊主みたいなタオルに包まれて(分かりますか?)教室で着替えていたのです。同級生に「かよちゃん、それ何?」と言われた時の全身が硬直するような緊張感は、今でも残ってます。答えられなくて。 きっと私のからだが硬いのは、人に対面する様々な場面で「どう見られてるのかな」と緊張し続けていた

          こころのかくれんぼ 3        【症状の特性 続き】

          こころのかくれんぼ 2      【症状の特性】

          さて。何から書いていこう 「わたし、note始めてみようと思う」 周囲の人達に伝えたその反応は、驚くほどに全てが肯定的だった。 誰一人として「え、やめなよ」と言う人はいなかった。 本当にありがたい。 自分の内面も外面も、外に向けて伝える事が怖くないと言ったら嘘になる。 だけど、例え不特定多数の人々にどのような目で見られたとしても、どのような受け止め方をされたとしても、静かに見守ってくれている大切な人達がいると思えるだけで、前を向いて立つことが出来る力になる。 沢山の大好

          こころのかくれんぼ 2      【症状の特性】

          こころのかくれんぼ 1

          さいしょのいっぽ 自分が持って生まれた病の事を、誰かに伝えるのが怖かった。 伝えなくちゃ伝わらないって、分かっているのに。 レックリングハウゼン。 この病名を口にする事すら、出来なかった。 誰かに知って欲しい、分かって欲しい、受け入れて欲しい。 そう願っている自分が、誰よりも自分を受け入れられていなかった。 欲しい欲しいばかりだったような・・・そんな気がする。 自分から踏み出そうともしないで、外から優しく手を差し伸べられて 「ここは安全。誰もあなたを傷つけない。だから、

          こころのかくれんぼ 1