開発系SEの実力を客観的に示す資格には何があるのか~①資格のまとめ~

システムエンジニアにとって、一定の実力を持っていることを証明できる資格はあるのでしょうか。あるとすれは、それは何なのでしょうか。ところで、一口にシステムエンジニアといっても、様々な分野があります。大きく分けるとこんな感じでしょうか。(分け方はあくまで一例です)

①開発系エンジニア
②インフラ系エンジニア
③セキュリティ系エンジニア
④運用・保守エンジニア
⑥社内システムエンジニア
⑥その他のエンジニア

私は開発系エンジニアなので、他のエンジニアの分野のことはよく分かりません。なので開発系エンジニアでの一定の実力を持っていることを証明できる資格について、考えてみます。
開発系エンジニアは更に担当分野や実力に応じて、細分化されています。以下は細分化の例です。
①上級SE
②SE、テストSE
③プログラマー、テスター
④コーダー

上級SEは、ユーザからの要求を元にRFPを作る、ロバストネス図やユースケース、UI設計書を作る、等をするようです。PMやPLが兼務する場合もあるでしょうが、基本的にはPMやPLとは違った属性になります。

SEは、上級SEのアウトプットを元に、細分化した設計を行います。例えばロバストネス図を元にクラス構成を考えたりします。

テストSEは、UI設計書やRFPを元に、テスト設計を行います。IEEEに沿ってテスト設計を行うと、テスト計画、テスト設計、テストケース設計、テスト手順設計、と行うことになりますが、日本でこれだけ細分化されたテスト設計を行っているプロジェクトは、滅多に無いでしょう。(私は見たことがないです)

プログラマーとコーダーは、SEのアウトプットした設計書を元に、プログラムを書き起こします。例えばJAVAであれば、とりあえずJAVAの文法は知ってますレベルの人の場合はコーダー、可読性やメンテナンス性の良いバグの発生しにくいプログラムを書けるレベルの人のことをプログラマーといいます。

開発エンジニアが転職活動、あるいは派遣就業の際に、相手に「自分はこれだけの実力があります」を伝えることの出来る資格には、一体何かあるのでしょうか。

資格には大きく分けて、国家資格と民間資格とがあります。国家資格だから良いとは限らないですし、民間資格だから説得力に欠けるわけでは限りません。大事なのは、
・その資格が世間に認知されているか
・その資格で何をアピール出来るのか
・その資格の保持が相手に求められているか
ということではないでしょうか。

そこで今回は、開発エンジニア向けの資格にはどのようなものがあるのかを見ていきます。

1、国家資格

1-1、情報処理技術者

IPA独立行政法人が主催する国家資格です。レベルや分野に応じて様々な試験が、年1回または2回行われます。情報処理技術者資格のメリットは、国家資格であること、受験料が比較的安価であること、一度資格を取得したら期限なしに永続的に有効であること、です。逆にデメリットは、資格を保持していることと、現在もその資格と同等の知識レベルを保持していることとは、必ずしもイコールではないことです。(人間は忘れる生き物です。)

1-1-1、ITパスポート

開発系エンジニアにとっては、この資格を持っていることは何のアピールにもなりません。確かにこの資格を持ってないよりは持っているに越したことはないのですが、だからといってこの資格を持っていたとしても「あ、そう」で終わります。

1-1-2、基本情報技術者

プログラマーまたはSE向けの資格です。
20代の開発系エンジニアが持っていれば、一定のアピールポイントにはなります。しかし30代以降の開発系エンジニアでは、この資格を保有していても何のアピールにもなりません。但しこの資格を保有していなくても、さほどのデメリットはないでしょう。
この資格は、IT関係の基本的な知識を持っていることを証明するものであって、設計や開発の実力を証明するものではありません。現場で欲されている人材が、基本的な知識を持った人材であるのか、実務がこなせる人材であるのかによって、この資格は何のアピールにもならない可能性があります。

1-1-3、応用情報技術者

SE向けの資格です。
20代~30代の開発系エンジニアが持っていれば、一定のアピールポイントになります。
この資格は、IT関係の応用的な知識を持っていることを証明するものであって、設計や開発の実務レベルを証明するものではありません。現場で欲されている人材が、基本的な知識を持った人材であるのか、実務がこなせる人材であるのかによって、この資格は何のアピールにもならない可能性があります。

1-1-4、ITストラテジスト
1-1-5、システムアーキテクト
1-1-6、プロジェクトマネージャー

上級SEまたはSE向けの資格です。
一定のアピールポイントになると同時に、一定のデメリットにもなりえます。資格対策では理論と理想論を学ぶことになるでしょうが、現場では理論が無かったり、本に書いてあるような理想とはかけ離れていたりします。現場を立て直すのであれば良いのですが、現場に合わせて動いてもらいたい場合は、このような資格はかえって邪魔になります。
また、この資格は、その分野の専門的な知識を持っていることを証明するものであって、設計や開発の実務レベルを証明するものではありません。現場で欲されている人材が、基本的な知識を持った人材であるのか、実務がこなせる人材であるのかによって、この資格は何のアピールにもならない可能性があります。

プロジェクトマネージャーに至っては、そもそも、どこの馬の骨だか分からない人に、いきなりプロジェクトマネージャーを務めさせる会社は、まずありません。その会社には他にもプロジェクトマネージャーを務めたい人、あるいは務めさせたい人がいるはずです。彼らを差し置いて、新たに入った人間にプロジェクトマネージャーを任せるのか、非常に厳しいものがあります。しかし例えば、その会社で新規分野のプロジェクトを立ち上げる場合や、中小企業で常に人材不足である場合、等であれば、すぐにプロジェクトマネージャーの椅子が回ってくる可能性はあります。そうでない場合は、プロジェクトマネージャーというポジションの椅子取りゲームに勝たなければなりません。しかもその前に、椅子取りゲームに参加させてもらわなければなりません。

2、民間資格

2-1、プログラム系資格

プログラム系資格は、全てコーダーまたはプログラマー向け資格です。ただしSEであっても、保持していることは一定のアピールになります。
いずれの資格も、一定量のプログラムの知識を持っていることの証明にはなりますが、貴方が使えるプログラマーであるかを証明するものではありません

2-1-1、JAVA

2-1-1-1、Oracle Certified Java Programmer

JAVAの生みの親、Oracleの主催する、世界標準の認定資格です。この資格を保持していることで、JAVAに関する一定レベルの知識を持っていることを、国際的に証明できます。ただしこの資格で証明できるJAVAは、スタンドアロン系のJAVAで、Web系のJAVAではないことに、注意が必要です。
この資格には唯一のデメリットがあります。それは受験料が高いことです。

2-1-1-2、JAVAプログラミング能力認定

サーティファイ情報処理能力認定委員会が主催・認定しています。正直な話、相対的に知名度が低い資格であるため、保持していても何のアピールにもならない可能性があります。この資格取得に向けて努力するくらいならば、OCJP取得に向けて努力したほうが良いと思います。
正直、誰向けの資格だか分かりません。「とりあえず資格を作ってみました!」系の乱発された資格と考えても大丈夫だと思います。

2-1-1-3、実践JAVA技術者

上記と同じく、サーティファイ情報処理能力認定委員会が主催・認定しています。正直な話、相対的に知名度が低い資格であるため、保持していても何のアピールにもならない可能性があります。この資格取得に向けて努力するくらいならば、OCJP取得に向けて努力したほうが良いと思います。
正直、誰向けの資格だか分かりません。「とりあえず資格を作ってみました!」系の乱発された資格と考えても大丈夫だと思います。

2-1-2、C言語

2-1-2-1、C言語プログラミング能力認定

サーティファイ情報処理能力認定委員会が主催・認定しています。相対的に知名度が低い資格でありますが、同時にC言語では唯一の資格でもあります。資格マニアの方であれば分かってもらえるかもね、くらいに思っていたほうが良いです。


その他、プログラム系では、言語ごとに様々な認定試験があります。いずれも、それぞれのプログラム知識を持っていることを示すものであって、その知識を元に有益なプログラムを書けるかを示す資格ではありません。
2-1-3、Ruby
2-1-3-1、Ruby技術者認定試験
2-1-4、PHP
2-1-4-1、PHP技術者認定試験
2-1-5、Python
2-1-5-1、Python 3 エンジニア認定基礎試験
2-1-5-2、Python 3 エンジニア認定データ分析試験
2-1-6、JavaScript
2-1-6-1、CIW JavaScript スペシャリスト
2-1-6-2、HTML5プロフェッショナル認定試験
2-1-7、PL/SQL
2-1-7-1、ORACLE MASTER Silver Oracle PL/SQL Developer

2-2、OS/ミドルウェア系資格

全体的に、開発系エンジニアよりもインフラ系エンジニア向けの資格です。いずれも、一定の知識を持っていることの証明にはなりますが、その知識を有益に活かせることを証明するものではありません。

2-2-1、Linux

2-2-1-1、LPIC

Linuxに関する世界標準資格です。開発系エンジニアでも、LinuxサーバにTeraTermでログインしてコマンドを叩いたり、あるいはシェルプログラムを書いたりする場面があるでしょう。そのような場面では役に立ちそうです。ただし、シェルと言ってもbash、ksh、csh等色々あり、それぞれで文法が異なります。なので「シェルが出来ます!」とアピールしてみたものの、自分はbashのつもりだったけども実際はkshだったりすると、結構残念なことになります。
この資格のデメリットは、資格取得後5年以内に同レベル以上の資格を取得し直さないと、アクティブ状態を維持できないことと、受験料が少々高額なことです。

2-2-1-2、LinuC

Linuxに関する日本独自の資格です。LPICと同様に、格取得後5年以内に同レベル以上の資格を取得し直さないと、アクティブ状態を維持できません。また受験料がLPICと同額です。インフラ系エンジニアであればLPICとLinuCの両方を保持しているとアピールになるのかもしれませんが、開発系エンジニアだとどちらか片方を保持していれば十分でしょう。どちらかで悩む場合、私は世界標準資格で且つLinuCより歴史のあるLPICを薦めます。

2-2-2、Oracle

2-2-2-1、ORACLE MASTER

Oracle社の製品、Oracleデータベースに関する知識があることを示す国際資格です。Bronze、Silver、Gold、 Platinumとランクがあります。開発系エンジニアであれば、SQLを読み書きすることはあっても、サーバにOracleをインストールしたり、チューニングをする場面は全く無いか、少ないと思います。そういう意味では、SQL知識を問われるBronzeを持っていれば、少なくともSQLの基本知識は持っていることを示せると思います。

2-2-3、オープンソースデータベース

2-2-3-1、OSS-DB

オープンソースデータベースに関する知識があることを示す資格です。具体的には「PostgreSQL」を基準のRDBMSとしているようです。こちらもOracle Masterと同じく、開発系エンジニアであれば、サーバにPostgreSQLをインストールしたり、あるいはチューニングする場面は、全く無いか少ないと言えます。OSS-DBとOracle Masterで迷った場合は、個人的にはOracle Masterを薦めます。

2-3、その他の資格

こんな資格があるよ、という程度に載せておきます。

2-3-1、UML
2-3-1-1、UMLモデリング技能試験
2-3-1-2、OMG認定UML技術者資格試験プログラム
2-3-2、XML
2-3-2-1、XMLマスター
2-3-3、テスト設計
2-3-3-1、JSTQB
2-3-3-2、IT検証技術者認定試験
2-3-3-3、ソフトウェア品質技術者資格

開発系エンジニア向けには、以上のような資格があります。いずれも、一定の知識を持っていることを示すものであって、一定の実力を持っていることを示すものではありません。次回は、開発系エンジニアにとって、一定の実力を持っていることを示す資格は何かを、考察していきます。

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