西原 広大

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西原 広大

フリーライター西原です。全文公開、投げ銭スタイルでお願いしているので気に入った方はよろしくお願いします。 お仕事ご依頼ありましたらメールください。kooooodai1213@gmail.com ツイッターもどうぞ。

最近の記事

禁断の愛

ああ、愛してるよ。私は君を愛している。君がどれだけ私のことを嫌ったとしても愛している。 私は君を愛する他に生きる術がない。君を愛せないことで、私は私の心臓を止めてしまえる。私は君をそれほどまでに愛している。 君がどれだけ私を傷つけようとも愛している。どれだけ私の服従を拒んでも愛している。時折君が荒れ狂って、それによって私の一部が損なわれたとしても愛している。 私は君を所有することが出来なくても愛している。勝手に君を所有した気持ちになって愛している。その身勝手に見向きもし

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    • 欲望と分娩

      Aは光っている。様々なものを跳ね返し、ただ一点だけを貫くために尖っている。それは純度を高め、ただ一つの目的を達成するための機能と化している。 Bは曇っている。思考が散漫に動き、一点に集中することが出来ていない。しかしBはAを受け入れる態勢を整える。それはBの自浄作用でもあるし、あるいは自己憐憫でもある。 Aは濁っていく。朽ちていく最中で意識は明瞭にも関わらず濁っていく。機能は目的を達成することで存在の純度を濁らせていく。しかしそのことにAは気がついていない。気がついていた

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      • 誰かの弾丸

        弾丸。銃。必要なものは全て揃っている。これは知らない誰かがくれたものだ。その誰かは、僕が知っている中の誰でもなくて、男か女かも分からなかった。 というより男でも女でもなかったと言った方が正しいのだろう。人間としての臭いがなかった。 僕の知っている誰でもなくて、つまり全く知らない誰かであって、男でも女でもない誰か。人間かどうかすら分からない、誰であるのかどうかさえ分からない誰かに弾丸と銃を手渡された。 その誰かは僕の目の前に現れるとそれらを差し出した。 「いいか?弾は一

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        • ペインとゲイン

          鈍い金属の音で目が覚める。しかし眠っていたわけではなかった。ただ意識がぼうっとどこかを彷徨って、それが音によって自分に戻ってきたと言った方が正しいような気がした。 そもそも眠る余裕なんてないと心の中で苦笑したのは、実際に笑う余裕もなかったからだ。それではなぜ意識が彷徨っていたのかというと、現実に意識を留め続けるだけの余裕がなかったからだ。 問題の大きさに、そのどうしようもなさに絶望してしまえるのは、ある意味ではまだ余裕があると今、思った。 絶望出来るだけの余白が心に残さ

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          選択と選択

          選択、というのは非常に厄介でそれでいて興味深いものだと思う。一つの選択によって人生が大きく変わることもあるし、全く変わらないこともある。 人生が変わる選択とは一体何か。進学する高校や大学。就職先や住む場所。もっと言えば進学するのかしないのか。就職するのかしないのか。ここに住むのか住まないのか。 選ぶことを選ぶのか。選ばないことを選ぶのか。選ぶことを選ばないで、選ばないことを選んで、選ぶことを選ばないのか。 選択をどこまで分解するかによってその選択の意味は変わってくる。

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          腐敗

          思いのほか腐敗が進んでいたので一瞬驚いたが、すぐにそれもそうかと思った。というかその腐敗は目に見えるものではなくて、あくまで自分自身の捉え方によるもので、私自身が腐敗が進んだと感じたからに他ならなかった。 つまり私自身がその腐敗を進めているのであって、その腐敗は私の内側から来ているものであり、その腐敗の進行も私自身、であるなら私のそのものが腐敗のそのものであり、私が腐敗の進行を感じたものの腐敗とは一体何だったのだろうか。 恐らくそれは私を私と切り離して考えているからであっ

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          破壊点

          一度目にそれを見たときに予感を感じ、二度目にはそれは確信に変わった。三度目はそれが期待に変わり、僕はこれまでで何も期待したことがなかったのにと思い少しおかしくなった。 しかしおかしくなったからといってすぐに笑ってしまえるほど僕は単純な人間ではなかったし、単純な人間であることを何よりも嫌っていた。 単純ではなく複雑だと思うことで自分を特別だと思い込もうとしていた。そして人より複雑であり、特別というのは自分を守るためには必要不可欠な感情だった。 試しに笑おうとする。最後の最

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          夏の想い出

          日本の夏は耐えられない。と日本の夏しか知らないのに思った。多分南国暮らしの外国人が、日本の夏は耐えられないとテレビで言っていたのを覚えていたからだろう。 しかし湊太に言わせればそれは「甘え」であるらしかった。 「あいつらは南国で毎日遊んで暮らしてるから根性ないねん」 彼らにしてみれば南国暮らしと言っても母国であり、バカンスではなくそれなりに仕事をして大変なのにと思ったが、テレビの中の、しかも記憶の中の曖昧な外国人だったので、かばってやる義理はないかとも思った。 それな

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          青より赤い

          その人は眼鏡をかけていて、いつもTシャツではなくて、きちん襟のついたシャツを着ていた。そのくせデニムを履いていて、実際はちゃんとしたいのかどうか分からなかった。 「息がつまる」 それがその人の口癖だった。身なりには最低限を気を遣ってはいたものの、特段おしゃれを意識する風でもなかったので、シャツにデニムを合わせるスタイルは彼なりのちょっとした反発だったのかもしれない。 ちゃんとしなくちゃいけないパリッとした感じと土まみれにしても大丈夫なよれよれのだらしない感じは一見ちぐは

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          残るもの残らないもの

          地球は球形で世界の果てはない。遥か昔はそんな考えは異端だった。でも今はそう考えないほうが異端。 船で航海に出れば世界の果てで奈落に突き落とされると信じていた。地球を中心に世界は回っていて、宇宙の中心には地球があって、他の惑星が地球の周りを回っていた。 本当は太陽を中心に世界は回っていて、今ではそれが常識になった。それでも世界の中心は常に地球で、結局世界がどうであろうと関係がなかった。 * 空は青い。海は青い。でもそのことを誰も意識しなかった。当たり前だから。意識しなく

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          ノスタルジーはやってくる

          久しぶりに近所を散歩していたら、昔通っていた幼稚園が更地になっていた。園庭を覗いてみると何本か木が残されているだけで砂場すら取り払われていた。 成人して4年が経とうとしているが、不思議なもので幼稚園のどこに何があったのかはほとんど正確に覚えていた。 あそこにすべり台と登り棒の遊具があって、砂場の近くにはうんていがあって。目の前には教室があって、その裏の、敷地内ぎりぎりのところにはスクーター置き場があって。 幼稚園がまだあったときには入り口からは見えなかった全体図がすぐに

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