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「林檎の樹」と「夏の葬列」

ほんの感想です。 No.50 山川方夫作「夏の葬列」 昭和37年(1962年)発表

「国木田独歩がゴールズワージーの影響を受けた」という記憶があり、ゴールズワージーの「林檎の樹」を読んでみました。しかし、どうもおかしい。

「林檎の樹」は、イギリスのある小さな町を舞台に、若い男女の初々しく始まった恋が熱を帯びる様を描いています。しかし、それだけで終わらない、「絶対に後半を見逃すな!」という内容だったのです。

実は、ゴールズワージーは、私の記憶違いだったのです。調べてみると国木田独歩が影響を受けていたのはイギリスの詩人ワーズワースだったのです。そんな経緯で「林檎の樹」を読んだのですが、意外にも、山川方夫の「夏の葬列」という作品を思い出させてくれました。

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「林檎の樹」から「夏の葬列」を思い出したのは、いずれの作品にも「主人公の心の中で、陽画が陰画に転換する」場面があり、その瞬間の驚きに、「似ている」と感じたからです。

「林檎の樹」は、初老の男性が妻とある町へドライブしたところ、忘れ切っていた若き日のことを思い出す、という物語です。それは、男性が、学生時代の徒歩旅行中、宿を求めた家の美しい娘に恋したことから始まりました。

一方、「夏の葬列」の主人公の男性は、戦時中、学童疎開した町での出来事に罪悪感を持ちながら大人になりました。あるとき、出張帰りにその町を再訪した主人公は、葬列と遭遇します。ある物を見た彼は、歓喜します。しかし、・・・・・。という物語です。

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それにしても、両作品とも傷ましい内容です・・・・・・・・。

両主人公とも、過去に、過ちを犯しています。そして彼らが知らない間に、その過ちが、次の出来事をもたらしていた。

小説とは言え、内容がしんどいと読み続けることは難しいものです。しかし、「陽画から陰画への転換」により、主人公の心のドラマティックな変化が伝わり、両作品にぐいぐいと引き寄せられました。

よろしかったら、ゴールズワージー「林檎の樹」、山川方夫「夏の葬列」をお楽しみください。

ここまで、読んでくださり、どうもありがとうございました。


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