オカザキセイ

一年間の片づけプロジェクトが完了。一時の爽快感の後、全方向でやる気を喪失。起き上がれな…

オカザキセイ

一年間の片づけプロジェクトが完了。一時の爽快感の後、全方向でやる気を喪失。起き上がれない数週間の結果「嫌なこと」ができない身体となりました。好きと感じた音楽を手掛かりに、聴きたいもの、観たいものを手繰り寄せ、楽しかったこと、泣けるほど嬉しかったことを再発掘しています。

マガジン

  • ほんの感想です。

    おもしろいと感じた日本近代文学の作品を、多少くどめに紹介しています。 魅力をお伝えしたいのに、言葉が足らずが、つらい、「ほんの感想」です。

  • 物語の一片

    小説の中から、元気が出る場面や、優しい気持ちが嬉しい場面、五感を刺激される場面など、素敵な物語の一片を、600字内でご紹介しております。

最近の記事

セイリーとセイトーン(1)

 整理整頓という言葉があります。辞書で調べると、  ・整理は不要なもの無駄なものを処分すること  ・整頓は乱れたものを片付けて整った状態にすること とあります。この言葉を心から理解したと思うのに十五年かかりました。お金も千万円単位で使ったと思います。曖昧な自分の欲望をはっきりさせ「好き/好きでない」のセンサーを機能させるために費やした時間と費用です。     2008年の暮れから、衣類、履物、袋物、敷物、家電、生活雑貨などなどの「出す→入れる→違和感を覚える」というサイクルを

    • 広津柳浪、樋口一葉、そして大貫妙子の日

       sakuさんから、広津柳浪の短編「雨」についての感想に「スキ」を頂き、嬉しくて「雨」の振り返りとともに一時を過ごしました。  「雨」は「妻を大切に思う男が貧しさによる困窮で選択を誤り、愛する人と共に、慣れ暮らした世界を追われる物語」。様々な物語が溢れる現代では、珍しくはないストーリーかもしれません  しかし、そこに描かれている世界は百年以上前(発表年は1902年(明治35年))のもの。当時の人々の貧しさは頭で想像するしかないのですが、「雨」の中で人々が募らせる不機嫌や不安

      • その塔に注がれた人々の熱と思いを伝えたい。

        再読の部屋 No.10 幸田露伴作「五重塔」 発表1891年(明治24) 幸田露伴の「五重塔」について記したのは、2021年2月23日。読後に感じた清々しさを、次のように書きました。 これを読み直したとき、感じたはずの「清々しさ」の輪郭がぼやけていて伝わってこない。なぜ? 最初に読んだ時、本作には「異なる価値観を提示し、これを対立させ、最後に、調和させる」という流れを感じました。しかし、初読で筋を追うことに苦労したこともあり、感じとれた内容は薄い。よって、再読では、もう

        • 母娘が未来に挑んだ物語「虞美人草」

          再読の部屋  No.10 夏目漱石作「虞美人草」 明治四十年(1907年)発表 夏目漱石「虞美人草」について投稿するのは3回目。 「美貌で虚栄心の強い女主人公が、思いもよらない失恋に憤怒し自死する」という物語は、随分前から興味津々でした。しかし、初読では、予想を超えた登場人物の多さに、その相関関係を追うのが精いっぱいでした。 その後再読した2021年7月1日の投稿「真面目な人間になります。どうか許してください。」では、次のことを書きました。 ①「虞美人草」のテーマは、甲

        セイリーとセイトーン(1)

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        記事

          弟の内で生き続ける安寿。 - 姉さん、任務完了 from 厨子王-

          再読の部屋。 No.9 森鷗外作「山椒大夫」大正4年(1915年)発表 森鷗外の「山椒大夫」について投稿したのは、2021年5月9日。そのとき、鷗外の「山椒大夫」は、姉安寿の冷徹な戦略の下、弟厨子王が、「父の行方を知り、佐渡の母を助ける」というミッションを遂行した物語と記しました。 読み返してみると、事を成し遂げようとする安寿の凄さを改めて感じます。幼い弟を確実に脱出させるため、緻密な企てをする頭脳の持ち主。計画上必要とあれば自分の命を投げ出し、計画遂行する冷徹さが際立っ

          弟の内で生き続ける安寿。 - 姉さん、任務完了 from 厨子王-

          激しく動き始めた彼の世界!それは私の世界 その2

          再読の部屋No8. 夏目漱石作「それから」 明治42年(1909年)発表 夏目漱石「それから」の主人公長井代助は、友人の妻を奪ったことから父から絶縁され、それまでの高等遊民生活から、いきなり現実に突き落とされます。それは、属していたコミュニティからはじき出され、自らの力で食べていかねばならない世界です。 彼の世界は、激しく動き出したのです。そして、ラストの場面、いきなり現実世界を突き付けられた代助は、大きな驚きで、思考停止しているように思われます。 そう感じるのは、とん

          激しく動き始めた彼の世界!それは私の世界 その2

          読み返したい作品があります。

          半年ほど放浪していました。 現実世界でバタバタしていたら、とても本を読む気になれなかった。 バタバタがパタパタ位になり、心の放浪も終わったかな、とようやく感じ始めたこの頃、夏目漱石の「それから」を再読したくなりました。 ラストの、主人公が赤いペイントが叩きつけられるような、そんな心象の迫力に驚かされました。鏡で我が身を見返したような経験でした。 当初はセルフ・ヒーリングを目的に取り組んだ日本近代文学でしたが、今は、いくつかの作家について無性に読み返したい。 最初に読ん

          読み返したい作品があります。

          激しく動き始めた彼の世界!それは私の世界 その1

          再読の部屋No8. 夏目漱石作「それから」 明治42年(1909年)発表 2021年5月21日の投稿で夏目漱石作「それから」について投稿しました。タイトルは「心のままに進むか、理性に従うか、その決断にゾッとした。」 その内容は、次のようなものでした。 この投稿では、主人公の「恋による衝動の怖さ」を紹介したかったのです。ところが、最近、「それから」を読み返したところ、興味を覚えた個所が変わっていることに気づきました。 物語のラスト、父から絶縁された主人公が職探しのために

          激しく動き始めた彼の世界!それは私の世界 その1

          綺麗な物語を読みたい。そんなときは「魚玄機」を読みます。

          創作のヒント No.3 森鷗外作「魚玄機」大正4年(1915年)発表 心身の調子によるものか、何かに集中することが難しくなるときがあります。心の中が荒れた海面のようになり、「あわわわわ!」という波動が止まらないのです。そんなとき、「綺麗な物語を読んで落ち着きたい」という思いでいっぱいになります。 最近、そんな心持ちになったときのことです。「ところで、綺麗な物語とは、どのような物語なのか?」と自問していたら、森鷗外の「魚玄機(ぎょげんき)」が思い出されてきたのです。 ―・

          綺麗な物語を読みたい。そんなときは「魚玄機」を読みます。

          真面目な人間になります。どうか許してください。

          再読の部屋  No.7 夏目漱石作「虞美人草」 明治四十年(1907年)発表 最近、いくつかの手続きで電話番号やメールアドレスを誤って入力/記入するという、とんでもないケアレスミスをしてしまいました。頂けるはずの連絡が全くなかったため手続き元で確認したところ、ミスが判明しました。あまりに集中力を欠いた、情けないミスに、「すべて、私の責任です」と落ち込んでいたら、夏目漱石「虞美人草」の小野清三の、 真面目な人間になります。どうか許してください。 という言葉が思い出されまし

          真面目な人間になります。どうか許してください。

          謎は謎のままが美しい。でも、解かずにはいられない。

          ほんの感想です。 No.54 谷崎潤一郎作「秘密」 明治44年(1911年) 発表 ある早起きした日のこと。テレビを点けると、突然、金色に縁どられた白い仮面の女性の顔がアップで現れました。さる国から皇子との結婚のため宮廷を訪れた公主が、皇帝を始めとする男たちを、仮面による謎オーラで怯ませた場面でした。 それは、公主の瞳の輝きや口元の美しさを目にした人々が、「仮面の下の顔は、どれほど美しいのだろう」と否が応でも期待で胸を膨らませてしまう場面でした。 ところが、番組のエンデ

          謎は謎のままが美しい。でも、解かずにはいられない。

          彼の中の「好き」と「嫌い」のせめぎ合いは、あまりにピュア。

          ほんの感想です。 No.53 里見弴作「銀二郎の片腕」大正6年(1917年)発表 あなたは、「大好きな人に、自分の大嫌いなものを見てしまい、感情が好きと嫌いの間で激しく揺れた」という経験はありませんか?里見弴の「銀二郎の片腕」は、その激しい感情の揺れの末に、「えッ、そんな・・・」というショッキングな結末へと向かった男の物語でした。 ―こういう話を聞いたー と始まるこの作品。 描かれたのは、北海道のある牧場で、銀二郎という牧夫が引き起こした事件の経緯でした。読んでいると

          彼の中の「好き」と「嫌い」のせめぎ合いは、あまりにピュア。

          100作品の読書感想を書いて考えたこと

          2021年2月14日から、日本文学の読書感想等を投稿しています。実は、翌3月の半ばに、「100本連続投稿」を決心し、本日、おかげさまで、目標達成となりました。これも、色々な方々に読んで頂き、それによって力を頂いたおかげです。どうもありがとうございました。 取り上げた作品も100を超えたことから、今日は、この投稿活動を振り返り、まとめてみました。 投稿を始めた経緯随分と昔、小説を読んでいた頃は、「あなたは、私を楽しませることできる?」みたいな、受身でありながら非常に高飛車な

          100作品の読書感想を書いて考えたこと

          お鮨を食べて、私を慰めたい。

          ほんの感想です。 No.52 岡本かの子作「鮨」 昭和14年(1939年) 刊行 岡本かの子の「鮨」は、鮨屋の娘が、偶然、常連客の男から、鮨にまつわる身の上を聞くという物語です。「表面だけは世事に通じ、軽快で、そして孤独的なものを持っている」という娘と、「親兄姉を亡くし、妻とも死別し、一所不定の生活を送っている」初老の男。 二人がそれぞれに放つ孤独感は、ボーっとしたもので、当初、強く感じたわけではありません。しかし、読み返してみると、彼らの寂しさが共鳴し、「この二人だけで

          お鮨を食べて、私を慰めたい。

          ある母と子のそれぞれの旅立ち

          ほんの感想です。 No.51 林芙美子作「水仙」 昭和24年(1949年)発表 林芙美子の「水仙」は、敵同士のような母と子の子離れ、母離れが描かれています。昭和24年発表と知り、驚いてしまうほど、描かれた母子の様は現代的でした。 夫が失踪した後、女手一つで息子を育ててきた主人公。その半生は、色々な男を綱渡りして暮らしを立てる、危ういものでした。そんな母を、息子は「子不孝だ」と言います。そして、自身のだらしなさ、ダメさを認めた上で、「そんな風にママが育てたんだから仕方がない

          ある母と子のそれぞれの旅立ち

          「林檎の樹」と「夏の葬列」

          ほんの感想です。 No.50 山川方夫作「夏の葬列」 昭和37年(1962年)発表 「国木田独歩がゴールズワージーの影響を受けた」という記憶があり、ゴールズワージーの「林檎の樹」を読んでみました。しかし、どうもおかしい。 「林檎の樹」は、イギリスのある小さな町を舞台に、若い男女の初々しく始まった恋が熱を帯びる様を描いています。しかし、それだけで終わらない、「絶対に後半を見逃すな!」という内容だったのです。 実は、ゴールズワージーは、私の記憶違いだったのです。調べてみると

          「林檎の樹」と「夏の葬列」