見出し画像

うちの卵かけごはん

もう7-8年の間、コロナの期間をのぞいて、秋になると必ず訪ねる場所がある。
トスカーナの山あいにある小さな村。


そこで行われる白トリュフ祭りが目的だ。

村を見下ろす丘のてっぺんにあるトリュフハンターの像。
パートナーは豚ではなく犬。

滞在するのは土日の一晩だけ。
でも、その間に、トリュフづくしのごはんを食べる。

朝の風景

教会のチャリティ食堂でたべるランチには、手作りのパンのうえにクリームチーズとトリュフが乗ったブルスケッタに、トリュフのパスタ、そしてトリュフ乗せ目玉焼き。

夕飯は村一番のレストランを事前に予約しておいて、牛肉のカルパッチョのトリュフ乗せ、またまたトリュフのパスタなんかを堪能する。

その合間には、村中ありとあらゆる場所にでている屋台をみてまわる。
トリュフ入りのチーズ、トリュフ入りのサラミ、トリュフ入りのオリーブオイル。なにもかもトリュフ尽くし。

お祭り一番のメインは、村のトリュフのトレーダーたちがブースをだしているテントだ。
足を踏み入れただけで、もうテントの中に広がるトリュフの匂いに圧倒される。

「今年は、気温が高かったから、どうも大きさがいまひとつなんだよ」
という年もあれば、
「春先にいっぱい雨が降っただろ、そのおかげで今年はとっても質がいいんだよ」
という年もあった。

そして、ガラスのケーキ台の中に飾られたトリュフの中から、手が届く小さなものをいくつか選んで、丁寧にティッシュに包み、ガラス瓶にいれてロンドンに持ち帰る。

大事に、大事に持って帰る

だって。

イタリアのその村で出される、素晴らしいトリュフをつかったイタリア料理よりも、なによりも。
私にとって、一番おいしい白トリュフ料理は

トリュフ乗せ卵かけごはん、だから。

多古米のコシヒカリを炊いて。
赤いライオンマークのついたイギリス政府公認の生食OKの卵を用意して。

そしてシャッシャッシャっと白トリュフを乗せ、醤油を回しかける。

いただきます!

卵かけごはんを恋しがる気持ちだけは、どうしたって日本人としか共有できない。

だから、同じようにロンドンでがんばっている日本人の友達に声をかけ、
みんなで湯気ごしにほくほくと茶碗にご飯をよそい、
おしゃべりながら、
一年に一回、トリュフ乗せ卵かけごはんをかきこむ。

ああ、イギリスの卵が生食OKになって嬉しいなあ。
(2017年までイギリスでは公式には生食はできず、フランスから輸入されたお高い生食OKの卵を自然食品店で買うか、1分加熱した温泉卵状のものを食べるしかなかった)

ああ、ヨーロッパでがんばってるおかげで、フレッシュな白トリュフに気軽に手が届くとは嬉しいなあ。

そして、なによりも、卵かけごはんの茶碗を手にする瞬間とは、ああ、日本人でよかったなあと思うときなのである。


いただいたサポートは、ロンドンの保護猫活動に寄付させていただきます。ときどき我が家の猫にマグロを食べさせます。