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ゴーストバスターズと私のアフターライフ

見上げると
目の前いっぱいに宇宙が広がっていた。


「うるさくしちゃいかんぞ」

私はまだ小さくて
文字も読めなかったと思う。
もちろん英語なんてちんぷんかんぷんだ。

そんな小さな私を連れて父は自分の好きな映画を観るために大きな建物へ連れて行ってくれた。

それが私の映画館デビューした日になった。


家にいると暴れたり騒いだり
母と喧嘩したり
まぁいろいろ
ドキドキばかりな父だったけど

「映画観に行くぞ!」

私と映画を観に行く時はご機嫌だった。

昔の映画館は予約もなく
好きなときに好きに入れて
父はいつも映画のラストぐらいのタイミングに映画館に入っていく。

オチがわかっちゃうじゃん!と言うと
いい席で見たいからいいんだよ!と
ちょっとなにそれ?と思うことをいつも言って私を苦笑いさせた。



父と一緒に観た映画で
一番記憶に残っているのは
「ゴーストバスターズ」だ。


おばけ映画?とドキドキわくわくして
映画館に入った。

オープニングから心をバビューンとつかまれ
笑ったり驚いたりの連続で
しまいにはドッキューンと
恋に落ちてしまった。

ビル・マーレイに。

まだ小学生だった私はずいぶん年上の海外の
俳優さんにトキメキっぱなしになり
画面を真剣に見つめた。

あっという間に映画は終わり興奮冷めないままの帰り道

「面白かったなぁ!!あの緑のやつもすごかったよなー!!」

父はいつもより笑顔で
子供のようにはしゃぎご機嫌で
私も嬉しくなり

「うん!すごい面白かった!」

はじめて買ってもらったパンフレットを抱きしめながら答えた。



あれから何十年が経ち
私もすっかり大人になり1児の母になった。

「ゴーストバスターズ /アフターライフ」が
公開されるらしいよ。と娘から教えてもらう。

娘が「大好きな俳優のフィンが出るんだよ~!」と言うのでこれは観に行きたい!
ただ、私の病状とか大丈夫なんだろか……と
不安になった。

でもどうしても映画館で観たい!と家族に伝えると「サポートするから大丈夫」力強い言葉が返ってきた。

映画を観に行く前に、と
初代のゴーストバスターズをみんなで笑いながら家で観たりもした。


まさかゴーストバスターズの続きを娘と
観ることができるとは!すごいなぁ!
病気になって以来映画館に行っていないので
何年かぶりの映画館に私の胸はドキドキしていた。



いろいろとうまくいかない
シングルマザーのキャリーは
父が亡くなり残した家を遺産としてもらうことになる。息子のトレヴァーと、
人つきあいがうまくない娘のフィービーと
父のいた田舎町に引っ越す。
家はボロ家でキャリーはあきれる。
生前の父と関係がよくなかったキャリー。
娘のフィービーは家の中で不思議な現象を見たり、いろんな物を見つけ
実は祖父がゴーストバスターズの一員だったことを知り……。

おおまかなストーリーはこんな感じ。



子供の頃観た時と同じく
オープニングからドキドキわくわくした。
あの時とは違うコメディ要素は少な目で
それでも先が気になりグイグイ引き込まれた。
私もゴーストと戦いたい!とか
ECTO-1に乗りたいとか
幼い頃思ったことがよみがえる。


アフターライフとは
あの世での人生、とか、
人生の後半って意味がある。



私も初代ゴーストバスターズを観てから
いろんなことがあった
その後の人生。


生きていると
考えもしなかった出来事に遭遇する。


ひどくて
つらくて
しんどいことがたくさんあって
山あり谷ありだった。


映画の中の
ゴーストバスターズメンバーにも
いろんなことがあったんだ、と思わせる
 アフターライフの映画。



映画の内容は書かないけれど
ラストに近づき泣いてしまった。
娘も泣いていた。
前の席の人も少し離れた横の人も
泣いていた。


父と娘
おじいちゃんと孫
家族の関係について
いろんな想いが胸にこみあげてきた。


アフターライフの映画の
ジェイソン・ライトマン監督は
初代ゴーストバスターズを作った
アイヴァン・ライトマン監督の息子で
子供の頃ゴーストバスターズの映画の現場を見ていたそうだ。

きっとこの二人の親子の間にも
言葉にはあわらせないことが沢山あったと思う。

初代のメンバーととっても仲がよかったとも後日知り、納得する。
大切に作られた映画なんだなって観ていて
自然に心があたたかくなったからだ。


観賞後
娘と二人でお手洗いに行き

「なんだかじぃじに会いたくなる映画だったね」

と娘に伝えると
わーっと泣き出したので
抱きあって一緒に泣いた。



娘は父が亡くなった時

「もうじぃじに会えないんだ……」

そう言って
一度だけ私の前で大泣きをしたことがある。
それ以来この日まで
娘は父のことで涙を流したことはない。


ゴーストバスターズのあの曲を聞くと
今も楽しくなり
元気がでて踊り出したくなる。

でもまさかエンドロールで流れた
ゴーストバスターズの曲を聞き涙するとは思っていなかったなぁ。


主人公フィービーを演じた
マッケナ・グレイスが可愛くて!
久しぶりに素敵な女優さんに出逢えたね!と娘と盛り上がったのも楽しかった。


「今のビル・マーレイじぃじにしか見えん!」

娘が言う。
私にとってビル・マーレイは
今も大好きな俳優さんだ。
彼のことを調べたら
父と同じ歳でびっくりした!
まだまだ長生きしてほしい。


そして
初代ゴーストバスターズの監督も
先月旅立たれた。
イゴン役のハロルド・ライミスは数年前に亡くなっている。
今頃二人で映画について話し合っているのでは?そんな風に思う。

今観ても変わらずにワクワクドキドキと楽しくなる映画を作ってれてありがとう!
めいっぱい感謝の気持ちを伝えたくなった。


大切な人との
別れは必ずやってくる。

でも一緒に過ごした日々は消えることはない。



私はこの映画を父と一緒に観たかった。


「まさかあの時観た映画がこんな風に続くなんてね!すごいね!映画っていいよね」


そんな風に話し合いたかった。

映画を観た後
父と話す時間が大好きだった。


父との確執。
借金作ったり家族より他人が大事だったり
暴れたり騒いだり、家にいて気が休むことはなかった。

最後は
さっさと自分でいなくなっちゃって。
生きていたら一緒に観ることができたのに。

すごくよい映画だったよ。

笑ったり泣いたり
私の大好きなビル・マーレイも出てきたよ。

お父さんのおかげで
私は映画を観ることが大好きになったし
家族みんなも映画大好きだよ。
娘はかなり昔の映画をたくさん観てるよ。

ゴーストバスターズアフターライフを観て
娘も私も
お父さんに会いたくなって泣いていたよ。
まだまだ一緒にいろんな映画を観たかったよ。

私だって小さな頃
お父さんが大好きでヒーローのように
思っていた時があったんだから。


映画を観て
いろんな想いが
あたたかく優しくほぐれていった。


 「映画はこうでなくっちゃね!やっぱり映画はいいな~!」

目を腫らした娘が嬉しそうに言った。


娘が大人になり
ゴーストバスターズの映画を観て、
懐かしんだり私や父の事を映画と共に思い出してくれたら嬉しいな。
笑って泣いたことを忘れないでいて欲しい。

まだまだアフターライフを
楽しむぞ!自然と元気がでる映画だった。


映画館の外に出ると星空が広がっていて
私と娘がニコニコしている姿を夫が嬉しそうに見守っていた。


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