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あの頃の私と娘の スタンド・バイ・ミー

「この映画観たいな」
娘が棚から持ってきたDVDには
四人の男の子の顔が並んでいる。
「Stand by Me」
その子達の顔を見ると急に
遠い昔に感じた切ない想いが胸に蘇ってきた。

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ベン・E・キングのスタンド・バイ・ミー
この曲を聴くと娘が幼い頃
「ダーウィン、ダーウィン♪」
とご機嫌で歌っていた事を思い出す。
「ダーリン、ダーリンだよ」
笑いながら娘と何度も歌っていたことを
思い出すとキュンとしてしまう。

夫と私は家にシアタールームを作ってしまうくらい
映画を観ることが大好きだ。
映画を観ることと、本を読むことが趣味の夫婦なので
必然的に娘も映画を観ることが大好きになった。
その部屋で小さな頃から娘も映画をたくさん観ている。

でもスタンド・バイ・ミーは観ていなかった。
いつか一緒に観たいと思いつつ、まだ早いかな? と思い
なかなか一緒に観る機会がなかった。

そういえば私が初めてスタンド・バイ・ミーを観たのも
中学生の時だった。
映画好きな友人2人と週末は映画を観よう会!をしていた。
キャリーだったり、AKIRAだったり、モーリスだったり。
いろんな映画を観ては3人で
「キャーキャー」盛り上がっていた。
その会でスタンド・バイ・ミーを初めて観て一気に好きになってしまった!と同時に、なぜか心にモヤモヤとした気持ちがわき起こった。
「私は男子じゃないし、こんな友達はきっとできない」
そう思い悔しくも感じた。
その後も一人で何度もスタンド・バイ・ミーを観ては
グッと胸に迫るシーンに涙を流していた。こっそりと。

ただそばにいて欲しい

スタンド・バイ・ミーの曲みたいに思ってはみたものの
私のそばには誰もいない、と寂しくなった。

友人達は
「リバー格好いいよね!」
と言い、
世間でもリバーフェニックスがとても人気で、
でも
「私はそうでもないよ」
興味のないふりをしていた。
リバーの演技に泣いていることや
なんだか悲しげな面影が
私の心を締め付けていることを友人に知られたくなかった。
その後大人になるにつれて
スタンド・バイ・ミーとは距離ができてしまい観ることはなくなった。

そして
リバーが若くして
急死したときに
やっぱり彼は私にとって悲しみの象徴なんだ……と思い
一人で涙を流した。

あれから何年経ったのだろう。

はじめてスタンド・バイ・ミーを観た
あの頃の自分と同じ歳の娘。
この映画を観て娘はどう思うのだろうか?

少しドキドキしながら
夫と私と娘で映画を観た。

映画を鑑賞し驚いたことがある。
私が中学生の時、観て感じた
寂しさや悲しさが、心にじわじわとわき起こらなかったのだ。

今、この物語から感じたのは
家族や両親の影響、育った環境で
この子はダメな子だと決めつける世の中。
本人がどんなに頑張って変わりたくても、周りは認めてくれない理不尽さ。

大人の目線で観ている自分がいた。

初めて観たあの頃は
私にはこんな風に話せる友達はできないな。
辛いことも嫌な事も我慢するしかないし。
いいな。心から話せる友達が欲しいな。
そばにいて欲しいな。
頭も心も、身体中そんな気持ちでいっぱいになっていた。

今の私が観て思うことは
この子供達に大丈夫だよ。と言ってあげたい。
その気持ちが一番だった。
よく観察してみると4人がみんなとても仲良しという訳でもなくて
(クリスとゴーディはとても仲良し)
子供の頃には見えていなかった細かなことに気がついた。
それでもやっぱり泣けてしまうシーンは歳を重ねても色あせないままで
思わず泣いてしまい、そっと娘を見ると
私と同じシーンで涙を流していてなんだか嬉しくなった。

「どうだった?」
「すっごくよかった! 一番好きな映画になりそう。あぁ~! リバーいいね!」
娘は素直にリバーを好きになってちょっと羨ましいなぁと思った。
私は素直にリバーを好きになれなかったから。
これからは娘と一緒にリバーが出演している映画をたくさん観よう。
雨が上がったように心が清々しい気持ちになり
楽しみが増え嬉しい想いが笑顔としてあらわれた。

「私もこんな友達が欲しいなぁ」
私が中学生の頃に思った同じ事を口にした娘。
「もういるじゃん。幼なじみの子達が。それからね、まだ始まったばかり。この先いろんな出逢いをするから! 楽しみだね」
「そうか……。そうだね! 教えてもらえてよかった! ありがとう」
笑顔の娘が可愛くて
ぎゅうっと抱きしめた。

思い返すと私にも
笑ったり泣いたり怒ったり
つらいことを聞いてくれる友達と出会うことができていたのだ。
しみじみと出逢ってくれた友達のことを愛しく思った。

数年前、
中学の同窓会で週末映画を観よう会の友人に十五年以上?ぶりに会った。
その子が
「今日の私の髪型、中学時代の小寿々さんのみたいでしょ?あの頃、小寿々さんって本当に凄いなぁって思ってた」
そう言って私の学生時代のことを話し出した。
へぇーって、そんなことあったかな? と、まるで他人事のように感じたけれど
「ありがとうね」
と言って笑った。
あの頃とにかく家庭内でしんどくて
学校ではそんな辛さを吐き出すこともできず、
ただ生きていくことに必死でいたことや、
学級委員や部長になり人前に立つことばかりで、
目の前のことをこなすだけでいっぱいいっぱいだったこと、
そしていつも寂しかった事を思い出した。

でも大人になって思う。
もしかしたら
あの頃、つらさや苦しさを吐き出しても
「そっかぁ、頑張ってるんだね」
なんて認めてくれる友達が出来たのかも知れない、と。
同窓会に参加して
意外と自分の事を見ている同級生が沢山いたことに驚いた。

「俺のこと覚えてる?」
何人かの男子に聞かれて
「わかんない」
って言う私だったけれど、(かなり人数が多い学校だったので)
しっかりと私はあの学校のあの場所に存在していたのだな。
そう思ったら
ふわっと心の中があたたかくなった。

タイムマシンがあったら
中学の頃の私に
「面白い友達と出会うし、最高な夫と出逢って家族が増え、娘と一緒にスタンド・バイ・ミー観る日が来るよ。その時はなかなか幸福な気持ちで日々を過ごしているからね。がんばれ」
と言ってあげたい。

スタンド・バイ・ミーを観ることで
あの頃の私に会えたような気持ちになった。

娘も中学生になり学級委員に選ばれ、
私と似てるな! と思いながら
もし同級生だったら仲良くなったかな? とお得意の妄想をした。
それはとても楽しい妄想で
中学生の私と娘が
スタンド・バイ・ミーを一緒に観て泣いたり、熱く話し合ったりしていた。


「スタンド・バイ・ミーも憧れたけど、
私はねITのルーザーズ・クラブも好きなんだ。
最初から負けているからもう何も怖くないって言うのがね。逆に強いよね」
と言い笑う娘を尊敬した。

しなやかで強く面白い、いつもいつも私に笑顔と幸せを分けてくれる娘。

「スティーブン・キングも友達というものに憧れていたのかもしれないね。スタンド・バイ・ミーも、ITもドリームキャッチャーも友達の話しだもんね」
「きっと誰もが思うことじゃないかな。そんな物語を作れるって凄いね!」
二人で話すと娘の方が私より心が真っ直ぐで素敵だなぁと笑顔になる。

後日
スティーブン・キングの小説
スタンド・バイ・ミーを本棚から取り出し読み進めると
映画より辛辣に表現されていて
現実をバーンと突きつけられ寂しい気持ちになった。
(でもスティーブン・キングの小説は大好き!映画も大好き!)
映画には映画の良さがあって
原作と映画と二度も楽しめる! と私は思う。


そういえば
夫の家に初めて遊びに行ったとき
スタンド・バイ・ミーのLDが飾ってあって
わー! スタンド・バイ・ミー好きなんだ! 嬉しいなと思ったんだった。

「父ちゃんもスタンド・バイ・ミー好き?」
「好きだよ。あんな友達ができたらいいなぁって思った」
思うことはみんな一緒なんだな。
「子供の頃には出逢っていないけれど、
最高の友達で、恋人で、妻でも、母でも、なんでもありな私がいるから
今はいいじゃん!」
私の言葉に
「私もいるし! ロビンもいるよ! 最高の家族でチームだと思うよ」
と娘が付け足して言った。
その言葉を聞いて
「うん。そうだね!」
夫が笑うのでみんなで笑った。

その後みんなでスタンド・バイ・ミーを大熱唱した(20回は歌った!!)
何度聴いても胸が熱くなってしまう曲。
映画もこの曲も
私は大好きだ。

私にはベストなタイミングで
あの頃も
この歳になっても
スタンド・バイ・ミーを観れたことに幸せを感じた。

もしかしたら、
いつの日か
娘にも子供ができて、
年頃になって一緒に
スタンド・バイ・ミーを観るかもしれない。
想像するとまた幸せな気持ちになった。

主人公のゴーディが最後に
自分の子供達と一緒に過ごすシーンで
笑顔になるその気持ちが
今になってようやく理解ができたように思う。

子供だったあの頃も
大人になった今も
慌ただしく時間が過ぎ
しんどいこともあるけれど
毎日を大切に過ごしていくことがその先へ繋がる大切なことと感じた。

名作は
いつの時代に観ても心を潤し満たしてくれる。

そしてありきたりの言葉になってしまうけれど
映画の中で
眩しいくらい命の輝きを感じさせている
リバーは色あせないまま
この先もいろんな人を感動させ続けるのだろうな、
格好いいな。
と素直に思えたことが嬉しかった。

家族と観たことで
新たな発見があったスタンド・バイ・ミー。
「中学の頃観た時は寂しくなっちゃったんだよね」
と言った私に
「母ちゃん、私がずっとそばにいるよ!」
「オレもずっとそばにいる! っていうか離れないし!」
娘と夫の言葉に
嬉しくて、照れくさくて笑いながら涙が出てしまった。

大切な家族と一緒に観ることができて
よかったな。
いつかきっとこの日を懐かしく思う。
また一つ宝物のような思い出が増えあたたかい気持ちになった。

STAND BY ME
When the night has come
夜になって
And the land is dark
あたりは真っ暗闇で
And the moon is the only light we'll see
月明かりだけが僕達を照らす唯一の明かりになっても
No I won't be afraid, no I won't be afraid
べつに怖くなんてないよ
Just as long as you stand, stand by me so
きみがそばにいてくれたらね
darlin', darlin',
stand by me, oh stand by me
Oh Stand, stand by me stand by me
ねえ、ダーリン 僕のそばにいて

If the sky that we look upon
もし、見上げた空が
Should tumble and fall
崩れ落ちてきたとしても
Or the mountains should crumble to the sea
大地が崩れて海の底に沈んでしまっても
I won't cry, I won't cry, no I won't shed a tear
僕は泣かないよ 涙なんて流さない
Just as long as you stand, stand by me
きみがそばにいてくれるのなら
darlin', darlin', stand by me, oh stand by me
Oh Stand now, stand by me, stand by me
だから、ダーリン 僕のそばにいて
僕のそばにいてほしいんだ
darlin', darlin',
stand by me, oh stand by me
Oh Stand now, stand by me stand by me
ねえ、ダーリン 僕のそばにいて
僕のそばにいてほしいんだ
Whenever you're in trouble won't you stand by me, oh stand by me
君に何か困ったことが起こったら
ただ僕のそばにいればいい
Oh stand by me, oh stand by me, stand by me...
ねえ、ダーリン
僕のそばにいて
君にそばにいてほしいんだ

スタンドバイミー歌詞引用
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今は病の為
思うように動けない毎日ですが
どんなときも
そばにいてくれる
あたたかい家族や
優しい言葉をかけてくださる方々と出逢うことができ
心から有り難く感謝しております。
本当にありがとうございます。
どんな時でも
ただそばにいてくれるだけで
生きてこう、生きていける。そう思っています。
私も誰かの
あたたかい存在でいられるよう
日々精進していきたいです。


最後まで読んでいただき
ありがとうございました。
心から感謝の気持ちを込めて。

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