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進化していく同級生たち〜中2ver.

よく私の事を知らない人から『もしかして元ヤン?』と聞かれる事がある。もちろん答えはNo.だ。
そもそもヤンキーって何よ?

昔勤務していた中学の直属の上司である“秋山teacher″は言う。ヤンキーヤンキーってお前何の略か知ってるか?ヤンキーってのはな、ヤングキングの事なんだよ!!…な、なるほど、了解しました。

私の中でのヤンキーは、“髪の毛を金髪かそれに近い色に染め、片手にタバコ、改造した単車に乗ったり、″彫り物″をカラダのいたるところに“自分たち仲間内で″針や墨汁を使って勝手に掘ったり、シンナーを吸ってみたり、やたらオラついて学校での素行が良くないと言われたりしてるい中学生くらいの子、のイメージだ。

私は自分の体格の良さ(身長が171.5cmある)のせいか、やたら“ヤンキーが多い中学″に配属された。(見た目採用というのも本当にあるのです…)私の履歴書を見ると、教育委員会でも校長面接でも必ずと言っていいほど『素晴らしい経歴ですね!エリート校ばかりじゃないですか、いや、実に素晴らしい!』と大皮肉を言われる。ここで言うエリート校とは、いわゆる“ヤンキーが多い有名な中学″または“指導困難校″のことを指している。

とある“エリート校″に配属された際、まず先に校長面接があった。単車で行くと、中学校から300mしか離れていない場所に黒塗りの大きな建物があり、周囲には色んな角度から取り付けられた防犯カメラが作動している。白いシャカシャカジャージを着た若い衆が出入りしている。なるほど、そういう事ね…理解した。

校内にお邪魔すると、シフォンケーキをそのまま頭に乗っけたような髪型の、ちょび髭を生やした男子生徒らしき人物が『見ねぇ顔だな』と“挨拶″をしてきた。(シフォンケーキ君とは卒業後しょっちゅう電話がかかってくる仲になった)
校長室に入ると、校長先生がドスの効いたいわゆる“親分″みたいな風格の人で、校長室でタバコをプカプカ吸っていた。校長室なのに大きな金魚の水槽まである。(その頃はまだ校内に喫煙所が数カ所ある時代であった)

コーヒーではなく煎茶を運んで来た教員(グッジョブ)が、事務の先生でも女性職員でもなく教務主任だった事にも驚いた。その教務主任は髪をキッチリセットした長髪で香水の匂いがプンプンする、当時高橋克典さん主演の特命係長“只野仁″そっくりの色男先生であった。
ボスである“どこからどう見ても親分“にしか見えない校長先生は非常に優しく、『お前もタバコ吸うか?』といきなり聞いてきた。『はい、普段は吸いますが今は大丈夫です』と答えると『校内に何ヶ所か喫煙所を設けているが、吸いたくなったはワシのところにきて、ココでいくらでも吸え!』と言われた。
(あの…ココ校長室なんですけど…もう何も言うまい)
私の履歴書と顔を見て面接終了、一発合格らしい。
『よし、我が校のファミリーを紹介しよう!』と親分校長に紹介されたメンバーはゴルゴ13ソックリの教頭先生、只野等ソックリの教務主任、背が187cmある“用務員の先生″はなんと目が覚めるような全身ブルーのジャージにスキンヘッドであった!(先ほどの黒塗りの事務所から、生徒の事で呼び出された保護者かと思った)

職員室に入りあたりを見渡すと、私と同じくらい背丈のある女性職員がゴロゴロいる、全員体育教師かと思った。保健室の養護教諭は腰に何個も鍵のついた金属製のチェーンをジャラジャラとつけた、いわゆる“精神病院の閉鎖病棟にいるベテランナース″みたいな人で、『ウチ(中学)にはドーベルマンがいっぱいいるからねぇ、ココ(腰)に鍵つけておかないと、すぐ鍵取って保健室勝手に使うんだわ』と言う。
親分校長とゴルゴ13教頭の担当教科は勿論体育で、柔道の黒帯だった。教務主任の只野仁先生は理科、スキンヘッドの用務員の先生はどこからどう見ても、先ほどの黒塗りの事務所を出入りしていた構成員にしか見えない。オマケに車はBMXをベタベタにシャコタン風にしている。

何じゃこの学校は!!
小柄な教職員が数えるほどしかいない。やっぱり見た目採用だわ…このメンツは…。

噂で“あの中学はヤクザ養成中学だ″と聞いていたが、管理職自体がもう既に“構成員″にしか見えない。警察のマル暴担当の刑事さんがそれっぽく見える、その教職員バージョンだ。
私は何故か一発で気に入られ、お仲間に入れてもらう事になるのだが、親分校長からひと言だけ『事務所の前で交通事故だけは起こさないよう別ルートを通って通勤しろ』と言われた。
校長面接を終え、とんでもない学校に配属されたもんだ…と思いながら、玄関にある来客用の下駄箱を見ると、私の履いてきたダイアナのパンプスがもうなくなっていた。

しまった!やられた!と思い、職員室に猛ダッシュで戻り、私のパンプスがどこにもありません!と言うと、只野仁教務主任らが慌てて『すみません、初日から…』と言いながら数人で手分けして校内を探し回った。
私のダイアナのパンプスは、3年生の教室の教壇の上に片足分だけ“飾られて″いた。もう片足は、窓際にご丁寧に飾られていた。
『い、いやぁ…若い先生が来られたから珍しかったんでしょう、すみませんね、ははははは…(皆苦笑い)…これに懲りずに来て下さい』と只野仁教務主任はじめとする数人の先生に深々と頭を下げられてお見送りまでしていただいた。やれやれだ…。
その後、晴れて正式採用され、その親分校長のファミリーの一員となり勤務する事になった。

私の“素晴らしい経歴″とやらは、そういった中学校で培われたのかもしれない。

話が随分と脱線してしまった。(反省)

中2の夏休み明け、部活で前に座っていた“アルトの優ちゃん″を指さして、“ソプラノの夕ちゃん“が私にそっとささやいてくる。『優ちゃんの髪の色、茶色くなってるのレナ気づいた?ヘアマニキュアで染めんだって』よく見ると、太陽光線の下で何となくオレンジ味がかって見えた。

また別の日、アルトの優ちゃんに高校生の彼氏ができたと聞いた。えーっ?淳一の事が好きなんじゃなかったっけ?しかも高校生?何なに?と驚いた。

ソプラノの夕ちゃんは、元々の美形も手伝って何だか最近妙に色っぽい。同級生の瑛太と杉田が夕ちゃんを追いかけまわしていた。

転校生のアケミとは、クラスで一緒につるむようになり、アケミはバレー部に入った。
すると、あれだけ嫌がらせをしていたバレー部の正子や葉子ちゃん、バスケ部の陽子まで私に何も言わなくなった。彼女たちはアケミの機嫌をいつも伺っている様子だった。

私はアケミと家を行き来する仲になった。アケミは学校では“活発で明るい女子″を演じていたが、毎朝前髪だけは必ずムースで綺麗にセットして学校に来ていた。が、一旦彼女の家に帰ると、セブンスターをくわえてプカプカ吸い出す。学校では決して見せないアケミの一面だ。

私は彼女をただの一度も“怖い″と感じた事はなかった。しいていえば、何だコイツ?くらいだ。何でヤンキーでもない私とこの人は居るんだろう?アケミに何のメリットもないだろうに変なヤツだ…。そんな彼女とは今でも仲が続いている。

当の私は顔にできたニキビが気になって仕方ない。母は当時リバイタルという資生堂の中でも高級ラインの化粧品を愛用していた。隣町のデパートにしか売っていなかった。いつも数万円単位で化粧品を購入していた母は、私に何も買わないのは悪いと思ったのだろう。
『ニキビ潰しちゃダメよ、これくらいなら買ってあげる』と、同じ資生堂から発売されていたアベンヌの化粧水や、ニキビに効くという洗顔フォーム、ルースパウダーを買ってもらった。

一向にニキビは治らないが、中2の私は髪を染めたりタバコに興味を持つというより、
『なんで将来使いもしない数学の関数をやらなきゃならないのか、一生かけても行くことのないであろうアフリカの地域の名前を覚えなくてはならないのか』とか『ミッちゃんは実は同じバスケ部の正代ちゃんと付き合ってるって“情報源″から聞いたぞ。なるほど、そういえばあの2人は中1の1学期に学級委員長だったな。正代ちゃんは性格がめちゃくちゃいい、ミッちゃんも中々女を見る目があるな…』どこか人ごとのように毎日同じ事ばかり考えては空想にふけっていた。

同級生は誰と誰が付き合っている、誰と誰がヤッた、二股かけてるらしい、もっこりーず軍団のボス猿の森くんより、野球部の三木くんの方がアソコがデカいらしい、それよりもなんとミッちゃんのアソコが1番デカいらしい!『ミッちゃんとヤる女子は痛いだろーねー』と最近仲良くなったバスケ部でミッちゃんと帰る方向が同じ弘田くんがニヤニヤしながら私に言う。
ヘェ〜、ならミッちゃんと正代ちゃんってもうヤッてんのかなぁ?正代ちゃんって成績も性格もいい真面目な部類の子なのに…いや、ミッちゃんはそんな軽々と女に手を出すような男じゃない!(勝手な妄想)
と私の妄想は膨らむばかりで、自身の胸が中々大きくならない事にコンプレックスに感じていた。

考えてみれば、大体中2の夏休みに“何か″が起こり、2学期最初の日、こいつ何か雰囲気変わって一皮むけたカンジがするなぁ…パターンと、高2の夏休みバージョンの2タイプに分かれていた。

私は進化を遂げる同級生を横目に、ひとり空想にふけっていた。

俗に言う中二病とやら、なのかもしれない。


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