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【体験談&費用のリアル】〜在宅介護とマネー問題

※介護保険制度を含めて制度やルールは数週間〜数ヶ月単位で目まぐるしく変化していっています。
必ず政府管轄の公式情報を参照してください。

在宅介護に関する記事を見ていると、やはり頻繁に見かけるのがマネー問題。

筆者も随分といろいろ検索したりし、苦労してきました。

こんにちはこうたろうです。
要介護5と要介護3の祖父母の介護を6年、祖母を看取って現在は祖父だけ、在宅介護歴7年目に突入しました。

本日はそんな筆者の経験と、データを参照しながら在宅介護のマネー問題を考えます。

10年で一人1000万円かかる?!

さて、とあるデータでは、在宅介護は月平均で約8.3万円必要。
10年換算で1人約1000万円必要であるとする説もあります。

収入のない高齢者世帯では、平均貯蓄額は577万円。
うちの55.2%が貯蓄ゼロの状態であるというデータがあるわけです。
出典:文春オンライン

費用のリアル

当然各種介護サービスを使うには介護保険という制度があり、介護認定を受けて、認定度合いによって受けられるサービスの点数と資産に応じた負担額が決まってきます。

介護保険は通常40歳になるとみな加入することになっているはずですが、スタートしたのは2000年から。

つまり、スタートした年に払い始めた人が今やっと還暦を超えたあたりでまだ高齢者介護としての介護保険を利用していないケースの方がマジョリティーであると推察でき、介護保険制度自体がまだバージョン1.0であるといえます。

この点数や負担割合なんかの計算はケアマネさんがやってくれるのですが、普通に生きてきて私たち一般人がすぐに理解できるような制度ではないため、最初は混乱します。
上がってくるエクセルなんかも点数表記であり、負担割合を考慮して計算する必要があります。

何年も続けていると訪問看護師の緊急加算が◯点だから、今月の限度額は大丈夫だなとか、オーバーするから何点分削らなきゃとか、考えられるようになり、また受けるサービスによって消化される点数が違うため訪問看護事業所の加算だけど、あえてレンタル介護用品に付けるなんて小技も一般的に使われています。

こういった各種サービスに関しては限度額が設けられており、いくらかかるのかしっかり把握できます。

問題はそれ以外の保険適用外のもの。

  • とろみ剤

  • オムツ

  • 衣類

  • その他日用品

  • 防水シートなどの特殊素材

  • お薬ゼリー

パッと思いつくだけでもこんな感じ。

食事も介護度合いによってはゼリー食だったりと、今週はご飯冷凍してもうカレーでいいや・・・

なんてことは許されず、介護だけのための食事作りというのが必要になり、必然的にコストがかさんできます。

またspo2のサポートが必要な場合は医療機材の導入などもあり、これらの医療機材は電気代が想像を軽く超えてくるかと思います。

参考まで(計測したわけではなくあくまでの肌感です)に2020年時点で、3.5Lと2.0Lの二台を1ヶ月24時間稼働させて月1.2〜1.5万円くらい。
当然これに暖房代などの空調費用、日常の電気代がかかってきます。

このように見ると、介護サービス自体がざっくり4万程度を見積もって、文春オンラインさんのデータ一人月約8.3万円というのはなかなかリアルな数字かなと筆者の肌感で感じます。

もちろん状況や介護度合いにもよりますが、ここに医療費、医療機関までの交通費(介護タクシー等)を考慮すれば余裕を見るなら一人約10万〜12万は見ておきたいのが現実。

初期のアルツハイマー型認知症介護の場合も別のコストがかかってきます。
体は元気なので想定される事故を防ぐために例えばトイレまでの道案内板を作ったり、介護度合いによっていろいろな工夫が必要になります。

長くマラソンを続ける方法

介護は終わりの見えないマラソンです。

長く続けるためには、介護保険等の公的支援サービスで利用できる範囲とできない範囲をまずはしっかり把握する。

在宅介護などでは例えば訪問看護事業所が特別指示という医療保険も使えるパターンもあります。

この場合は例えば介護保険での負担割合が高い方でも医療保険で対応できることもあります。

加えて例えば身体障害がある状態で介護を続ける場合だと、障がい者手帳の申請も調べてみてください。

ドクターの診断書が必要にはなりますが、介護タクシーのチケットをはじめ様々な支援を受けることができます。

こういうところは、役所の人が各世帯を調べて該当する人の家にきて申請しませんか?

などの営業はしてくれません。

先にいっておきますが、筆者は役所が大好きです。
大好きなんですが、ここからは実際に起こった体験をシェアしていきます。

【体験談】役所での出来事

繰り返しますが、筆者は性格上結構役所が好き。

必要な種類を揃えてルール通りに動けばルール通りのレスポンスが返ってきます。
だから制度を調べて使える制度に対しては書類を揃えて手続きをするというのがめんどくさいどころか楽しい。

ですが、面倒に感じる方の方が多いのではないでしょうか。
月々わずかに〇〇円節約できるためだけに書類揃えて役所に通うのは面倒に感じるかもしれません。
しかし、がんばって手続きをしておくことで長期マラソンを乗り切る助けとなるでしょう。

と、ここで、役所の人がどれだけ制度の紹介や解説に非協力的かというのがよくわかるエピソードがありますので、ある役所での手続きの際、障がい者手帳の交付で一通りの説明を受けたときの様子をシェアしていきます。

役所の人『また他にも様々な免除や減額制度がありますのでこちらのパンフレットに目を通しておいてください』

筆者『はい、ありがとうございます、例えば今ちらっと目に入ったこちらの〇〇という制度はこちらの窓口で申請可能なんですよね?』

役所の人『そうですね、できます。必要書類を揃えてお持ちください』

筆者『はい、その書類はこちらでもらえるのではないのですか?』

役所の人『そうですね、ただ一度、一階の総合案内に聞いてみてもらえますか?』

筆者『たまたま目に入ったファイルケースに目をやり、『あそこに書いてあるファイルケースの書類がこの書類じゃないですか?』

と質問すると、なんと、その後完全な無言で指摘したファイルケースから書類を取り出し、役所の人がすばやく2分くらいで全ての項目を埋めてくれ、ハンコありますか?と言われたのでハンコだけ押して申請が完了してしまいました。

様子を見るに、すべて無言で手際よくさっさとこなしていたところを見ると、『くそ、、、バレたか・・・面倒だなさっさと終わらそう』と思っての対応であった可能性が高いと思います。

【体験談】年金事務所

☆未支給年金に関しては年金事務所の案内をしっかり読んでください。

年金受給者が死亡すると年金事務所に手続きをして、未支給分の年金を申請して、相続人が受け取れます。(2021年時点)

そして未支給年金と共に未請求年金(名前が曖昧)というものがあり、過去に実は受け取れるはずのものが受け取っていなかった年金というのを死後発見されることがあります。(5年以内の申請が必要ですが例外ありで筆者のケースは例外が適用)

年金事務所『手帳を拝見するに過去の受け取れていない年金が2年間分あるかもしれません。お亡くなりのお母様の〇〇(住所)〇〇(企業名)に関するお勤めの記録などお持ちですか?』

筆者『いや、古いことなので、わずか2年間の記録であればちょっとわからないですね、何も聞いてないですし。』

年金事務所『そうですか。じゃあまた何かわかったら言ってください。』

筆者『いえ、当家ではもう本人が亡くなっていますし、年金事務所の記録には残っていないのですか?年金事務所でわからないことが当家で今後判明することはないと思うのですが。』

年金事務所『はい、では過去の記録の情報開示を申請されますか?』

もう唖然・・・
しない選択肢があるのか?と思いながら、

『はい。よろしくお願いします。』

どうやらその情報開示とやらが市長さんのハンコも必要なかなりややこしい手続きだったらしく、こんなやりとりにより、未請求年金が数十万円規模で死後戻ってきたことがあります。

つまり役所は基本的にこちらから言わないと動いてくれないのは当たり前で、しかもできるだけ動かなくていいような誘導の仕方をしてきます。

ここに文句をいうのはやめましょう。
彼ら彼女らはルールの範囲でしか動きませんし、逆にこちらがルール通りにお願いをすれば必ずルール通りに動いてくれます。

ポイントは介護や介護マネーに関連するルールをあぶり出してすべて把握しておくこと。

※介護保険制度を含めて制度やルールは数週間〜数ヶ月単位で目まぐるしく変化していっています。
必ず政府管轄の公式情報を参照してください。

介護離職問題

加えて発生してくるのが介護離職問題。

筆者の周りでも介護離職の問題を抱えた50代前後の方を何人か見てきました。

仕事をしながら認知症などの介護をする場合、どうしても外部のサービス利用は欠かせなくなります。

すると、介護保険の適用範囲を超えて自費が頻繁に発生したり、デイサービス中に熱が出たから帰らなきゃいけないなんかの連絡がきたりするともう仕事どころではなくなりますし、半分自分でやった方が出費も抑えられていいんじゃないか?
などの思考回路が働き、離職してしまうというわけですね。

ところが離職してしまうと、復職が難しくなるのは当然のこと、育児休暇のような制度は当然ありませんので、もう立ち行かなくなってしまうという具合なんです。

99円は1円足りないと100円にならない

一円でも節約し、質素に豊かな在宅介護を送れるようにしっかりと介護とマネー、医療とマネーは逃げずに向き合いましょう。

状況に応じて生活保護の制度も上手に利用してください。

過去にWOWOWで放送されていた 連続ドラマW パレートの誤算 ~ケースワーカー殺人事件 の中もでセリフとしてありました。

消防車や救急車を呼ぶのは国民の当たり前の権利。

生活保護だって緊急時に一時的に助けてもらうというごくごく当たり前の権利であり、公的支援です。

世間のイメージに惑わされるのはやめましょう。
介護保険や医療保険、障害年金やもっと言えば犯罪被害者等給付金などのような単なる制度の一つです。

どうにも介護費用がショートしそうなら自力でなんとかしようとせずに公的支援に必ず助けを求めるようにしましょう。

家が火事になってバケツを使って自力で消化しようとは思わないはずです。
同じこと。

まとめ

これからやってくる高齢化の波をうまく乗り切るコツが各種制度を正しく理解し、把握すること、そうすることで介護業界の悲しい事件は少しでも少なくなっていくはずです。

一人1000万必要だからと絶望するのではなく、日本国民として当然の権利や当たり前に使える制度をしっかり把握して、調べてうまく介護マラソンを完走していきましょう。

プロフィール
服部 洸太郎
音大を卒業後ピアニストとして活動。
自身のピアノトリオで活動後北欧スウェーデンにてシンガーアーティストLindha Kallerdahlと声帯とピアノによる即興哲学を研究。
その後ドイツへ渡りケルンにてAchim Tangと共に作品制作。
帰国後、金田式電流伝送DC録音の名手:五島昭彦氏のスタジオ「タイムマシンレコード」にアシスタントとして弟子入りし、録音エンジニアとしての活動開始。
独立後、音楽レーベル「芸術工房Pinocoa(現在はKotaro Studioに統合)」を立ち上げ、タンゴやクラシックなどのアコースティック音楽作品を多数プロデュース。
その後、秋山庄太郎氏後継の写真スタジオ「村上アーカイブス」でサウンドデザイナー兼音響担当として映像制作チームに参加。
村上宏治氏の元で本格的に写真、映像技術を学ぶ。
祖父母の在宅介護をきっかけにプログラムの世界に興味を持ち、介護で使えるプログラムをM5Stackを使って自作。
株式会社 ジオセンスの代表取締役社長:小林一英氏よりプログラムを学ぶ。
現在はKotaro Studioにてアルゼンチンタンゴをはじめとした民族音楽に関する文化の研究、ピアノ音響、さらに432hz周波数を使った癒しのサウンドを研究中。
スタジオでは「誰かのためにただここに在る」をコンセプトに、誰がいつ訪れても安心感が得られる場所、サイトを模索中。