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伐りたての材木のような湿った匂いがした。

 恋愛体質というか、片思い体質が抜けきらないまま、離婚も経験して現在に至るわけだけれど、最近笑顔がとてもすてきな人に出会って、パステル色鉛筆みたいな心持ちでいる。
 いいひとがいるっていうのは、わたしにとっては精神安定剤みたいなもので、もしもクリスマスを彼と一緒に過ごせたら、初恋みたいにうれしいだろうなと、ほんとうにひさしぶりの恋心にほんのりしている。クリスマスだから会いたいんじゃなくって、クリスマスを口実に会えたらいいよね。

 村山由香さんの作品は、高校生の頃に「おいしいコーヒーの入れ方」シリーズをぜんぶ読んだ思い出。しょーりくん懐かしい。年上のお姉さんに恋して、両思いになって、それから最後どうなったんだっけ。

 かなわなかった、心底嫌悪した、それでも最後には澄んだ後悔があるような。家族それぞれの、実らずも一筋の光差す恋模様を描ききった直木賞受賞作。
 地球から見たら六等星くらいの星々かもしれないけれど、瞬いている星々には熱があって、そのときどきで強くなったり弱くなったり、感情はうつろいでいく。

『星々の舟』村山由香
★★★★☆


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