楢﨑古都

🌿やがて女になっていく、過渡期の少女たちのこと。🌿2024年は香川行きたい……(文学フ…

楢﨑古都

🌿やがて女になっていく、過渡期の少女たちのこと。🌿2024年は香川行きたい……(文学フリマ)🌿 https://linktr.ee/Koto_Narazaki

マガジン

  • 書き殴りたいときのため

    主は殿厨です。

  • 読んだり読まなかったり。

    波がこないと読まないけれど、波がやってくると1日5冊とか読みます。 読書備忘録と日々のあれこれ。

  • 小説「最果ての季節」

    ❏掲載誌:『役にたたないものは愛するしかない』 (https://koto-nrzk.booth.pm/items/5197550) ❏楢﨑古都(https://linktr.ee/Koto_Narazaki)

  • 気になる。

  • 小説「えむしたのこと」

    ・文学フリマ東京37 (星屑と人魚2023秋冬号/https://bunfree.net/event/tokyo37/)  └ 「つむじ風と人魚」(マガジンは加筆修正前の原作です)   (https://c.bunfree.net/p/tokyo37/32572)  └ BOOTH販売中   (https://koto-nrzk.booth.pm/)  └ Kindle でも販売予定です(すべて完売後) ✼••┈┈••✼••┈┈••✼ ❏ Special Thanks..(Twitter/TwitCasting)  ・M(@Mhg_ootnn / @c:m0219i )  ・明日(@ashita_nel / @c:Ashita_0507 ) ※内容はすべてフィクションです ※登場人物にあたるご本人様方の了承を得ています ※ご本人様方の私生活とは一切関係ありません

最近の記事

彼でも彼女でもない、ゆきむら。という衝動

『 お前ら待たせたな。   これが俺のマニフェスト2024︎︎︎ 』  ✝︎ 2024年04月30日 LINE CUBE SHIBUYA ✝︎ ♱ セットリスト ♱ ENVY 孤独の宗教 KING 威風堂々 DOGMA テロル ハウトゥー世界征服 Chamomile 再会 涙腺回路 新曲 ――――――――――――――――――――――――――――― 彼でも彼女でもない、ゆきむら。という衝動 壁に向かって生卵を投げつけ、地震が起きれば『自然災害大

    • 土にもらったものを土に返すだけ。

      フェリシモの復刊リクエストがかなって届いた詩集。 とてもよかった。 わたしたちは森から来て、森へ還っていく。 ――――――――――――――――――― 『人はかつて樹だった』 ★★★★★  長田弘/著 ―――――――――――――――――――

      • 人生に意味を持たせること、いつまでも続くしあわせなんてない。

        脳はわたしたちを生き延びさせたい。 さくっと読めちゃう◎ 幸せという感情は消えるもの、おとぎ話のハッピーエンドにも続きはある。 狩猟・採取民族として生き延びてきた人間の脳は、未だ当時の危機管理能力のもと活動している。すなわち、「生き延びるため」最良の選択をしつづけている。不安を感じるのも、引きこもりたくなるのも、根源的にはこの身を守る手段。 ――――――――――――――――――― 『メンタル脳』 ★★★★☆  アンデシュ・ハンセン/著  マッツ・ヴェンブラード/著

        • 臨床心理教本。

          描写よりも心理学の教科書的な説明文がやや多め。 ものがたりも、臨床心理の手法を軸に進んでいく。 正義とは何かではなく、深層心理を突いた推理小説。 淡い恋心のようなものでカモフラージュされつづけた曖昧さによって、 主人公の抱える掴みどころのなさへと、読者まで引きずり込まれていく。 この読後感の気まずさすら、著者による心理作戦なのか。 そうだとしたら、思いっきりしてやられた。 ――――――――――――――――――― 『僕たちの正義』平沼正樹  ★★★☆☆ ―――――――――

        彼でも彼女でもない、ゆきむら。という衝動

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        • 書き殴りたいときのため
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        • 読んだり読まなかったり。
          12本
        • 小説「最果ての季節」
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        • 気になる。
          1本
        • 小説「えむしたのこと」
          33本
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        記事

          019「最果ての季節」一輪の白いガーベラの花のエピソード

           一輪の白いガーベラの花のエピソード。  ちらほらと館内から人がロビーへ出てきていた。映画は終わってしまったようだった。ガーベラの花の逸話を見逃してしまった。そこにはきっと、二人の美しい思い出が描かれていたに違いない。わたしが柁夫を追いかけて立ち上がったとき、映画の中の男は、手にした一輪の花を物言わぬ最愛のひとのもとへ手向けようとしているところだった。

          019「最果ての季節」一輪の白いガーベラの花のエピソード

          詩が役に立つ場面がこの世界にはある

          なんて読みやすい散文なのだろうというのが第一印象。 福間健二さんが約一〇年のあいだに書いたり、講演で語った内容が収められている。 現代詩・映画・文学の三部構成にはなっているが、それらは縦糸と横糸のようにつねに交錯している。それらの境界は曖昧だと、本人もあとがきで書いていた。 ――詩は、役に立たないものの代表のように言われることがある。しかし、詩は役に立つ、と私は言いたい。詩が役に立つ場面がこの世界にはある、と言ってもいい。(P,100) ――書くというのは書きなおしていく

          詩が役に立つ場面がこの世界にはある

          018「最果ての季節」結局、また自分ばっかりそうやって泣くのね

           四時がわたしを都子さんの養子に入れたのは、この数日後のことだった。考えてみれば、それまでのほとんどの時間を、わたしは四時と過ごしていた気がする。四時は、わたしが彼女の果てを見てしまったことに気がついていたのだろうか。  わたしは、四時のあまりの美しさに息をのみ、このひとを失いたくないと思ったのだ。  それは、お祭りの晩のせつなさとはまた違っていた。わたしには、四時を引きとめることなどできない。四時のなかの何かが、わたしにはそう訴えたのだった。

          018「最果ての季節」結局、また自分ばっかりそうやって泣くのね

          これが戦争をめぐる唯一の記憶であってくれればいいのに、と思います。

          爆撃でガラスが砕けるのを防ぐために窓にテープを貼ると、星みたいになります。わたしも、家の窓にテープを貼りました。 太陽が出て、朝目覚めると、まさしく星のようにゆったりと這いずりながら、壁に影が映るんです。 「夜と霧」に並ぶ1冊として、後世に残すべき翻訳本だった。 ウクライナの日常に、突如として訪れた戦争という非日常、 それが人々の日常として受け入れられていってしまっている実情が、 まるで詩を読むように指先からじわりと沁み込んでくる。 なんて美しいんだろう、と思いながらペ

          これが戦争をめぐる唯一の記憶であってくれればいいのに、と思います。

          017「最果ての季節」わたしは四時の最果てを見てしまっていた。

           ひとはね、名前のないものを怖がる生き物なのよ。山が最初からそこにあったんじゃないの。ひとがそれを山だと決めたその瞬間から、山は山としてそこに存在するようになったのよ。ひとにとって、名前のないものは実体のないものなの。それが恐怖を生むのね。怖いから、怖さを消すためにみんな名前をつけるのよ。理由をつけて、怖くない、怖くないって自分に言い聞かせてるのね。

          017「最果ての季節」わたしは四時の最果てを見てしまっていた。

          016「最果ての季節」わたしはますます、四時にそっくりになったでしょう

          す ふいに、柁夫の頭がわたしの左肩にもたれかかった。持っていた缶コーヒーが手の中で波打つ。わたしは、からだを動かすことができなくなってしまう。  この重みを、待っていたのではなかったか。  妙な期待が湧いてくるのを、わたしはあわてて打ち消した。隣にいるのは、映画の中の男ではない。わたしも、男の妻なんかではない。わたしたちには同じ血が流れている。それでも、柁夫の告白に少なからずも安堵しているのは事実だった。

          016「最果ての季節」わたしはますます、四時にそっくりになったでしょう

          015「最果ての季節」あなたを許してあげるわ。

           草原にひかれた一本のハイウェイ。  ひた走るバンの窓からは、乾いた風が男の白髪をなびかせていた。果てへとつづく道のりは、男の人生の長さだった。過去は、終わりに近づいた男に再びアクセルを踏ませ、景色は変わらずどこまでも広がっていた。

          015「最果ての季節」あなたを許してあげるわ。

          014「最果ての季節」ここにある光をみんな集めてみたくない?

          「紗奈子は、四季さんになりたがっていただろ」  それは、考えてもみないことだった。 「おまえは、なにかというと俺を追いかけまわしていたけど、実際、その先にはいつも四季さんの姿を見ていたんだ」  わたしたちが話しているのを、気にする客はいなかった。すぐそばには誰もいなかったし、反対側ではすでに舟をこぎはじめている影があるだけだった。

          014「最果ての季節」ここにある光をみんな集めてみたくない?

          013「最果ての季節」台詞数の少ない、褪せた映像のロードムービーが始まっていた。

          「どうして、そんなに情けないのよ」  映画はとっくに終わっていた。  交替を済ませ、見当たらない柁夫の姿を探してわたしは館内へ入っていった。薄暗い隅の座席に、彼はなお深く腰をおろしていた。すでに泣きはらした目は、こすったのだろうまぶたとそろって赤く充血し、腫れあがっていた。

          013「最果ての季節」台詞数の少ない、褪せた映像のロードムービーが始まっていた。

          012「最果ての季節」そのうちわたしにも四時の見ている世界が見えるようになるのではないか。

           焼けた素肌は目尻に一筋の皺を刻み込み、細見だったからだは引き締まった胸板と肩とを目の前に構えていた。首から提げた二眼レフカメラは、当時まるでとってつけたような付属品に過ぎなかったのに、いまでは確かに位置を得るようになっていた。

          012「最果ての季節」そのうちわたしにも四時の見ている世界が見えるようになるのではないか。

          011「最果ての季節」特に乱れてもいない半券の束を整理し直した。

           わたしは、路地裏のあまり流行らない映画館で半券売りのアルバイトをしていた。薄暗い明りのもとで、うつむき加減に文庫本を読み、気が向けばデッサンをしたり、次の絵の構想を下描きしたり、自由なところが気に入っていた。  上映中にはほとんどやることのないこの仕事は、時給が安いものの、ただ座っていてくれればいいよ、と人づきあいの苦手なわたしに大学の教授があてがってくれたものだった。

          011「最果ての季節」特に乱れてもいない半券の束を整理し直した。

          010「最果ての季節」それは決して、滑稽なおままごとではなかった。

           四時と柁夫のいなくなった母屋は、時間が経つとともに平然さを取り戻していった。彼らのいない生活にわたしたたちは平穏を見出し、少なからず満足もしていた。  柁夫の行方が知れないことは心配でないはずがなかったけれど、四時の名前が聞こえているうちは、きっと彼も大丈夫だろうという確証のない自信があった。

          010「最果ての季節」それは決して、滑稽なおままごとではなかった。